愛知県総合教育センター研究紀要 第96集

 キャリア教育推進に関する調査研究(中間報告)

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1 はじめに

 児童生徒の勤労観,職業観の形成をめぐって様々な論議がなされる今日,フリーターやニートに象徴される若者の精神的,社会的自立の遅れや就業意識の低下の原因を探り,キャリア教育を通して児童生徒の勤労観,職業観の育成,ひいては児童生徒の「生きる力」の育成を図ることが学校教育に求められている。
 本研究は,平成17年度より,キャリア教育の在り方に関する研究に取り組み,キャリア教育について,導入の経緯と意義,先進的な取組事例の研究及び県内の小・中・高等学校の教員のキャリア教育に関する意識調査等に取り組んできた。


2 研究の目的

 キャリア教育の意義,児童生徒の実態に即したキャリア教育学習プログラムの具体例の開発及び授業実践を通して,キャリア教育の在り方について検証し,その研究成果を積極的に発信することにより,キャリア教育についての教員の意識改革と資質の向上を図るとともに,各学校における取組の振興・充実を図ることをねらいとしている。

3 研究の方法

(1) キャリア教育にかかわる諸答申や通知などの資料及び文献を参考にして小・中・高等学校におけるキャリア教育の在り方を研究する。
(2) 小・中・高等学校におけるキャリア教育の実施状況及びキャリア教育に対する教員の意識を把握し,小・中・高等学校の連携に視点を置いた学習プログラムを作成する。
(3) 作成した学習プログラムを基に,研究協力委員が所属する学校で授業実践を行い,指導と評価の在り方について検証する。

4 研究の内容

(1) キャリア教育の推進に向けて
「キャリア教育」の文言が,文部科学行政関連の審議会報告等で初めて登場した「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(平成11年12月中央教育審議会答申)以降の諸答申や通知におけるキャリア教育推進に関する提言を整理し,キャリア教育導入の経緯,「勤労観,職業観」の定義等についてまとめた。
(2) キャリア教育に関するアンケート
小・中・高等学校の教員のキャリア教育に対する意識と各学校における取組状況を調査し,今後の「キャリア教育推進に関する調査研究」の基礎的な資料を作成する目的でアンケートを実施した。
(3) 学習プログラム枠の開発
「児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について(調査研究報告書)」(平成14年11月国立教育政策研究所)において示された小・中・高等学校の各段階で育成すべき具体的な能力・態度に基づいて,既に各学校で実施している教育活動全体をキャリア教育の視点で見直し,「学習プログラム枠」の作成を試みた。
(4) キャリア教育実践事例
小・中・高等学校におけるキャリア教育実践事例をそれぞれ一例まとめた。

5 研究のまとめと今後の課題 

 職業観,勤労観は,特定の資質・能力を高めることによってではなく,一人一人の全人的な発達によって形成されるものである。同時に,職業観,勤労観の育成は全人的な発達を促す重要な取組である。このことをすべての教員が認識し,学校のすべての教育活動を通してキャリア教育が行われるようにすることが大切である。

6 おわりに

 次年度は,授業実践を通して,指導と評価の在り方について検証するとともに,「小・中・高の連携を図るための具体的な方策」,「高等学校普通科におけるキャリア教育の在り方」等についての研究を進めたいと考えている。