愛知県総合教育センター研究紀要 第96集

  授業改善に関する研究(中間報告)

−子供理解と授業づくりを通して−

さらに詳しくご覧になりたい方は詳細

1 はじめに

現行の学習指導要領では,「自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力」や,「学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度」の育成などが挙げられている。最近では,教員の授業力や指導力の向上を目指した研修会や取組が積極的に行われたり,PDCAサイクルによる授業改善の考え方が強調されたりしている。こうした状況下,教師は,子供たちにとって「分かる・楽しい授業」を成立させるために,どのような観点から授業や子供をとらえ,学習を組み立て,実践・分析し,どのように改善を図るかという実践例の提示が重要である。

2 研究の目的

 教師の授業力を向上させるためには,子供を見取る力と授業そのものを客観的に分析する力が不可欠な要素と考える。「分かる・楽しい授業」の具現化を目指す授業実践では,「かかわり合い」と「主体的な学習」をキーワードにし,授業展開と子供の変容の分析から授業改善の在り方を探り,授業の質的向上を目指した実践的な研究に取り組む。授業場面では,教師のどのような考え方や営みが,かかわりやかかわり合いを強めたり,深めたりすることに有効に働き,子供の主体的な学習を成立させる要件となるかを明らかにする

3 研究の方法と内容

小学校3教科,中学校2教科で,子供が主体的にかかわり合える授業を構想・実践する。その後に単元構想や手だて,授業記録等の分析を行い,授業改善に生かす。本年度の研究の中心的な内容は,次の三点である。

@ 教科におけるかかわり合いの基本的な考えを明らかにした後,その出現が想定できる単元を構想し,必要な条件を整理する。
A 授業実践と分析を通して,子供の主体的な学習が保障される授業展開の在り方を明らかにする。
B かかわり合いのある「分かる・楽しい授業」構成の在り方を明らかにするとともに,今後の授業改善の視点を明確にする。

4 実践事例
【実践1】 伝え合う力を高める国語科学習の創造
−小6国語科「発見!わたしたちの地球」の実践を通して−
【実践2】 豊かな発想をかかわり合わせて真理を見付ける授業
−小4理科「もののかさと力」の実践を通して−
【実践3】 思いをはぐくみ,表現力を高める授業づくり
−小5図画工作科「顔・かお・カオ」「アート?アート!」の実践を通して−
【実践4】 かかわり合いを通して思考を深める社会科の授業
−中3社会科「安楽死は認めるべきか」の実践を通して−
【実践5】 自分の考えを他者に分かりやすく伝えることができる子供の育成
−中3数学科「平方根」の実践を通して−

5 研究のまとめと今後の課題
 
 実践では,子供の見取りを基に,子供たちが積極的にかかわり合える授業構想を各教科で練り,様々な工夫や手だてを講じながら研究に取り組んだ。しかし,前提となるかかわり合える集団の育成には,教師の共感的・受容的な態度や信頼関係のある学級経営が不可欠である。また,話合い活動の基礎・基本として,「話す・聞く」,「書く」ことの習慣化や国語力の育成を図る必要がある。さらに,教師は,計画的に子供を見取り,その見取りを生かしたかかわり合いでの支援の在り方や出方の工夫を研究していく必要がある。授業実践の結果,改善すべき点は多々あるが,「伝え合う力」や「コミュニケーション能力」向上の必要性からも,かかわり合いを中心に据えた授業改善を今後も進めていく必要がある。