愛知県総合教育センター研究紀要 第96集
  「食育」に視点を据えた児童生徒の指導の在り方に関する研究(中間報告)
−心と体をはぐくみ,食文化を伝える食育を目指して−

1 はじめに

 近年,食生活の乱れやそこに起因する健康を脅かす問題が深刻化し,従来食事を通して培われてきた心の育成や文化の伝承が忘れられつつある。また,食の安全性も揺らいでいる。本研究では,食は豊かな人間性をはぐくみ,豊かな社会づくりにつながるという理念を基にし,小・中・高等学校で効果的に食育を進めるために,食を扱う主な教科である家庭科を軸にした児童生徒の指導の在り方を提案していく。

2 食の指導の充実に関する施策等の流れ

  学校における食育の充実は,国政の重要課題の一つである。平成17年に「食育基本法」が成立し,同年,栄養教諭制度が発足した。平成18年には,「食育推進基本計画」が策定され,学校における食育を組織的・計画的に推進することが示された。

3 研究目的

  小学校の生活科,総合的な学習の時間及び家庭科,中・高等学校の家庭科を軸にした児童生徒の食に関する指導の在り方を提案するとともに,研究協力委員の各校の児童生徒の食にかかわる実態をアンケートにより把握し,分析を行う。研究構想及び実態に基づき各校で実践を行い,食に関心をもち,自己の食生活を見つめ直し,よりよい食生活を自ら追求しようとする児童生徒の育成を目指す。


4 研究方法

 研究協力委員(小学校教諭1人,中・高等学校家庭科教諭3人)により,各学校の児童生徒の実態を把握し,学習計画を立て,実践を行うとともに,理論,手だての有効性を検証し考察する。

5 研究内容

(1) 研究に当たって
学校教育における食に関する学習内容
小・中・高の家庭科の学習指導要領における食に関する学習内容
(2) 研究構想
目指す児童生徒像
食に関心をもち,よりよい食生活を自ら追求する児童生徒
目指す児童生徒像に迫るための育てたい3つの側面
「心」「体」「食文化」の各側面から児童生徒の育成
目指す児童生徒像に迫るための3つの工夫すべき点
(ア) 教育活動の有機的関連,家庭や社会との連携及び家庭科を中心とした系統的な学習計画
(イ) 家庭科における食の内容の基礎・基本の定着
(ウ) 児童生徒の興味・関心をひく魅力ある題材の開発
研究構想図
(3) 対象の実態把握及び考察
・朝食について
・夕食について
・食文化について
・食事作りについて
(4) 実践概要
【田原市立野田小学校】【岩倉市立南部中学校】
【県立国府高等学校】【県立豊橋南高等学校 生活デザイン科】

6 成果と今後の課題 

 教育活動の有機的関連や家庭,社会との連携を図ることで,児童生徒の学習活動に対する意欲の向上や日常での実践化など,成果をあげつつある。今後は,家庭科の食に関する学習における基礎・基本を体系化して具体的に示すとともに,題材の中に明確に位置付ける。また,家庭との連携や家庭への啓発にも一層重点をおく。