愛知県総合教育センター研究紀要 第96集

 特別支援教育相談のネットワーク構築に関する研究

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1 はじめに

 障害のある子供の教育をめぐる諸情勢の変化を踏まえ,文部科学省は,特別支援教育の推進を図る諸施策や法令の整備等を進めてきた。本研究では,これらを受けて,平成16年度から特別支援教育を推進するために重要な役割を担う特別支援教育相談のネットワーク構築,関係諸機関との連携推進について検討を進めてきた。その結果,養護学校の教育相談体制の整備・充実や教育・医療機関等との連携が進展し,特に小・中学校との連携において,その成果が顕著であった。そこで,本年度は,これら横の連携の成果を基に,特別な教育的支援を必要とする子供の継続的支援の重要性を踏まえた研究課題を設定することにした。

2 研究の目的

 小学校と幼稚園・保育所及び中学校と小学校との連携を推進し,特別な教育的支援を必要とする子供の円滑な就学を図るための特別支援教育相談や移行期における教育的支援(以下,「移行支援」という)の具体的内容・方法を明確にする。

3 研究の方法

 研究協力校(小学校2校,中学校1校)と所員とによる共同研究を行う。

4 研究の内容
 
 研究協力校と連携を進める幼稚園・保育所等を決め,相互の現状,ニーズを踏まえて,移行支援に関する連携計画を立案した。そして,連携計画に基づいて,以下のような実践を行った。

(1) 幼稚園・小学校連絡会等の実施
 発達障害等のある子供について,情報交換や支援方法の検討を行った。また,情報交換の効率化を図るために,「連絡シート」等の様式を検討した。
(2) 発達障害に関する研修会の実施

 養護学校職員や医師等を講師として,発達障害児の特性の理解や対応について,講義,事例検討会,指導計画作成等を主な内容とした研修会を実施した。

(3) 相互の学校等の授業参観,事例検討会の実施
 相互の学校等で,発達障害等がある子供を中心にその授業の様子を参観し,それを基に事例検討を行った。
(4) 就学時健康診断後の教育相談や情報交換等の実施
 就学時健康診断後に保護者との教育相談や担当職員等による就学に関する情報交換を行い,受入体制や支援の方向性について検討した。

5 研究のまとめと今後の課題 

(1) 成果
 研究の成果は,以下のとおりである。
@ 幼稚園・小学校等との間の就学前における発達障害児等に関する情報共有と移行支援の充実
A 小・中学校と養護学校との連携による幼稚園等に対する支援の充実
B 縦の連携を進める上での留意事項の明確化
(2) 課題
 今後の課題は,以下のとおりである。
@ 連携する幼稚園等の一層の拡大
A 連携推進を一層効率化するための内容・方法の検討
B 保護者との連携推進及び個人情報の管理に対する一層の留意
C 就学児を受け入れる側の小・中学校における特別支援教育体制の一層の充実
D 幼稚園・保育所における特別支援教育推進のための小・中学校及び養護学校からの支援の充実