愛知県総合教育センター研究紀要 第97集

 実験・観察融合型デジタル教材活用共同研究

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1 はじめに

 児童生徒は,身の回りの体験や経験を土台に,想像力や推理力を駆使し,自然の事物・現象をモデル化したり,イメージ化を図ったりしながら科学的な知識や概念を獲得していく。しかし,近年の生活体験の不足により,想像力や推理力が低下し,このモデル化やイメージ化がうまくいっていないという問題がある。そこで,デジタル教材を授業に用いることにより,児童生徒の想像力や推理力が補われ,モデル化やイメージ化が円滑に進められるのではないかと考えた。具体的には,独立行政法人科学技術振興機構(以下「JST」という)が開発した「理科ねっとわーく」のデジタル教材などを活用した学習指導を実施し,その効果的,効率的な活用の在り方を研究したので報告する。

2 研究の目的

 理科における児童生徒の興味・関心や知的探究心等を育成するために,デジタル教材と,観察・実験等の体験的活動とを融合した効果的かつ効率的な学習指導の在り方を明らかにする。
 また,小・中・高等学校の各校種における児童生徒の実態や学習内容に適したデジタル教材の在り方について研究し,「理科ねっとわーく」が配信するデジタル教材の完成度を高めるための基礎的資料を提供する。


3 研究の方法

(1) 研究組織

教育研究調査事業「教科指導の充実に関する研究(理科C)」において,校種ごとに部会を設け,小・中・高等学校(研究協力委員小学校部会6名,中学校部会6名,高等学校部会5名)の相互の連携を図りながら研究を推進する。また,愛知教育大学と綿密に連携して会の運営及び研究推進に当たる。

(2) 研究方法
 研究協力委員の所属校でデジタル教材を活用した実証授業を行った。実証授業には,センター所員,大学教授等数名が立ち会い,デジタル教材活用の在り方の分析・検証等を授業者と共に行った。また,実証授業ではビデオ撮影や事前・事後アンケート等を行い,研究会における検討資料とした。

4 研究の内容
 事前・事後アンケートの結果や実践時の児童生徒の反応及びレポートなどを基に授業を総合的に分析し,デジタル教材活用の適切さの診断及びその効果を評価した。本編には,その全授業の学習指導案を掲載している。

(1) 児童生徒の評価
 事後アンケートの「デジタル教材を使うことによって,興味や関心は高まりましたか」,「デジタル教材を使うことによって,授業の内容が分かるようになったか」,「今後もデジタル教材を用いた授業を行ってほしいですか」の各問いに対して,約9割の児童・生徒が肯定的な回答をした。これらのことから,理科授業におけるデジタル教材の活用は,児童生徒の興味・関心を高め,理解を深めることができたと考えられる。
(2) 研究協力委員の評価
 教員の評価として,児童生徒の興味・関心を高め,思考を深化させることができたという回答がほとんどであった。また,デジタル教材の導入により授業を効率的に進めることができたという回答もあった。

5 研究のまとめと今後の課題   

研究結果から,児童生徒がデジタル教材に対して,大きな期待をもっていることが分かった。それは,実証授業においてデジタル教材の動画等を食い入るように見つめる児童生徒の様子からも分かる。ICT機器の整備が一定程度進んだ現在,デジタル教材を効果的かつ効率的に活用することは,理科教育を充実させるための急務であるとともに,デジタル教材活用の普及に力を注ぐ必要がある。
 なお,本研究は,JSTの支援を受け実施した。