愛知県総合教育センター研究紀要 第97集

  キャリア教育推進に関する調査研究(最終報告)

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1 はじめに

 近年の産業・経済状況の構造的な変化や,雇用の多様化・流動化等を背景として,児童生徒の進路をめぐる環境は大きく変化しつつある。また,児童生徒の勤労観・職業観の希薄化,社会人としての基礎的な資質をめぐる課題等が社会的な問題となっている。
  こうした状況の下で,児童生徒が「生きる力」を身に付け,社会の激しい変化に流されることなく,それぞれが直面するかもしれない様々な課題に,柔軟にたくましく対応しながら,社会的に自立可能な資質を育むキャリア教育が求められている。その必要性は理解されながらも,現場での対応は様々であり,積極的に取り組んでいる学校とそうでない学校には大きな差があり,積極的に取り組んでいる学校でも特定の教員等の熱意と努力によるところが大きいのが現状である。


2 研究の目的と方法

 児童生徒の勤労観・職業観の希薄化といった精神的,社会的自立の遅れや就業意識の低下の原因等を探り,各学校段階における児童生徒の発達段階に応じ,学校教育活動全体から生徒の「生きる力」の育成をとらえ直す。また,本研究の成果を積極的に発信することにより,「キャリア教育」についての教員の意識改革と資質の向上を図るとともに,各学校における取組のより効果的な推進を目指す。
 センター所員による理論的研究を進めるとともに,県下の小学校3校,中学校3校,県立学校3校からの研究協力委員と協議会をもつ。

3 研究の内容

(1) 学校間の連携
 「連携のよさは分かるが,何をどうすればよいのか分からない」等の原因で,学校間の連携が取れていない現状の解決を目指し,学校間連携の具体的な手段と実践について研究した。
(2) 校内研修
 キャリア教育に関する教員の意識を向上させるために,校内研修で活用できる方法を研究した。
(3) 各校種での実践事例
 各学校でのキャリア教育推進のための参考として,小・中・高等学校での創意工夫に基づいた実践を取り上げ,その成果と課題を明らかにする研究に取り組んだ。
(4) 高校普通科でのキャリア教育
 キャリア教育の意義・必要性を認識しているが,その取組が不十分である高等学校普通科で,生徒が将来における社会参加を視野に入れ,大学進学の意義を理解し,目的をもって様々な活動に取り組むことができるよう,キャリア教育を一層推進・充実させるための方策を提案した。

4 現状の再考と今後の課題

 キャリア教育に関する様々な資料が作成,開発され,各学校のキャリア教育指導計画や実践例がホームページへ公開されて進んでいる。学校において,キャリア教育への実践意欲があれば,これらの資料を活用したその学校独自の取組を,十分に展開することが可能な状況である。
 しかしながら,キャリア教育という言葉自体は,まだ十分現場の教員には腑に落ちていないようである。キャリア教育の重要性は,学校が感じている他の喫緊の教育課題と比較すると,相対的に低い位置にあるととらえれている。
 したがって,解決すべき課題等を明らかにして,キャリア教育推進のためのカリキュラムや指導方法の開発,評価方法等の工夫改善について再検討することが必要であろう。