愛知県総合教育センター研究紀要 第97集

  授業改善に関する研究(最終報告)

−確かな授業力を目指して−

さらに詳しくご覧になりたい方は詳細

1 はじめに

 現学習指導要領では,「自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力」や,「学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度」の育成などが挙げられている。改訂中の新学習指導要領においても,これまでと同様に「生きる力」や「確かな学力」の育成や定着が求められている。こうした状況下,教師がPDCAサイクルによる授業改善の考え方を積極的に導入するためには,子供たちにとって「分かる・楽しい授業」を成立させるために,どのような観点から授業や子供をとらえ,学習を組み立て,実践・分析し,いかに改善を図るかという実践例の提示が重要である。

2 研究の目的

 教師が確かな授業力を身に付けるためには,子供の見取りを基にした授業構想力と授業そのものを客観的に分析する力が不可欠な要素であると考える。「分かる・楽しい授業」の具現化を目指す授業実践では,「かかわり合い」と「主体的な学習」をキーワードにし,授業展開と子供の変容の分析から授業改善の在り方を探り,授業の質的向上を目指した実践的な研究に取り組む。授業場面では,教師のどのような考え方や営みが,かかわりやかかわり合いを強めたり,深めたりすることに有効に働き,子供の主体的な学習を成立させる要件となるかを明らかにする。

3 研究の方法と内容

小学校2教科,中学校2教科で,子供が主体的に追究するとともにかかわり合える授業を構想・実践する。その後に単元構想や手だて,授業記録等の分析を行い,授業改善に生かすという授業のPDCAサイクルの在り方を示す。
 本年度の研究の中心的な内容は,次の三点である。

@ 教科におけるかかわり合いの基本的な考えを明らかにした後,その出現が想定できる単元を構想し,必要な条件を整理する。
A 授業実践における構想や手だて等の分析を通して,子供の主体的な学習が保障される授業展開の在り方を明らかにする。
B かかわり合いのある「分かる・楽しい授業」構成の在り方を明らかにするとともに,授業改善に向けた一連のPDCAサイクルの在り方を提示する。

4 実践事例
【実践1】 豊かな体験を基にかかわり合う中で,自然の規則性を追究する授業
−小4理科「もののかさと力」の実践を通して−
【実践2】 思いをはぐくみ,表現力を高める授業づくり
−小5図画工作科「顔・かお・カオ」の実践を通して−
【実践3】 かかわり合いを通して思考を深める社会科の授業
−中3社会科「日本の平和主義について考える」の実践を通して−
【実践4】 かかわり合いの中で自分の考えを深めることのできる生徒の育成
−中2数学科「図形の調べ方」 中3数学科「平方根」の実践を通して−

5 研究のまとめと今後の課題
 
 実践では,子供の見取りを基に教材を吟味選定し,子供たちが積極的にかかわり合える授業構想を各教科で練り,様々な工夫や手だてを講じながら研究に取り組んだ。子供が主体的に追究し,かかわり合うためには,問題や課題を解明したいという必要性や目的意識が生まれ,自分の考えがもてるような方策を練り,ずれや対立に着目したかかわり合いを一連の展開として構想することが大切である。しかし,かかわり合える学習集団の育成には,互いの存在や能力を肯定的に認め合える学級経営が不可欠である。また,話合い活動の基礎・基本として,「話す・聞く」,「考えをもつ・書く」ことの習慣化が必要である。今後の課題としては,今日求められている授業や目指す子供像,かかわり合うことで伸びる力等の明確化と,本時や次時に生かせる教師の授業評価力や改善力の育成が挙げられる。