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↑実践報告7↑資料1〜4
  


【実践報告7】
将来の職業や生き方に対する見通しの獲得を目指した支援 −高等学校の家庭科授業でのグループ・アプローチを通して−
1 対象集団の状況  実践校は平成17年に創立30周年を迎えた普通科(1学年7クラスないし8クラス,計22クラス)高校 で,実践対象は第1学年7クラス280名(男子152名,女子128名)である。在校生のほとんどは進学を 希望しているが,入学時に将来に対する明確なビジョンをもつ者は少ない。部活動への参加意欲が高く, 成果も上がっている。友人との協調的な人間関係を重視している生徒が多い。中には集団の同調圧力を 意識しすぎ,違和感をもっている者もいる。  文部省が実施した「心の健康と生活習慣の関連実態調査」(高校2年対象)1)と比較すると,実践校の 2年生は自己効力感に関する項目のうち,「将来やってみたいことがある」については,肯定的な回答 が多く,「私は自分に価値がないか他人より劣っていると思う」については当てはまらないとする回答 が多かったが,一方,「『やれば出来る』と思う」については肯定的な回答が少なかった。不安傾向に 関する項目に関しては,「学校は楽しいと思う」について肯定的な回答が多く,他の項目は全国調査と の差が見られなかった(資料1)。  回答結果からすれば,実践校の生徒は,学校生活を楽しんでいるが,目標に関してあきらめやすく, やや自信をもてないところに特徴が認められる。他の側面では,全国調査と差は見られず,ごく一般的 な高校生の集団のもつ課題,すなわち目標意識が不明確であること,規範意識や道徳心や自律心の低下, 人との交流や様々な活動や経験を通じた体験の減少などの課題ももっている集団であると言うことがで きる。 2 支援のねらい  青年期は,人が社会の一員として健全で幸福な成長を遂げるために重要な節目となる時期ということ ができる。ハヴィガーストが青年期の発達課題として,職業選択や結婚と家庭生活の準備などを挙げて いる。しかし,高校入学早期には具体的な職業選択を含め,長期的な人生設計について考える機会は多 くない。特にコミュニケーション能力が低下している生徒や体験が不足している生徒の場合,長期的な 人生設計以前に,新たな学校環境への適応に課題がある場合が多い。  実践校の2年生は,将来に対する意欲が標準的な高校生を上回るようになる。しかし,その意欲は具 体的な進路意識を伴っていないと考えられた。この進路意識の希薄さは普通科での学習に対する意欲の 保持を困難にする一因ともなっている。しかし,これらの課題克服を考えた心の発達支援のための時間 確保は,どの高校でも容易ではなく,その手法も確立されているとは言い難い。  構成的グループエンカウンターを始めとしたグループ・アプローチは,高校生の心の発達支援にも有 効であることが知られ始めている。しかし,新たな時間の枠組みで生徒の実態にあった形態での実施が 困難である等の課題がある。そこで,既存教科の指導目標にあったグループ・アプローチを授業に導入 することが学習効率を高め,生徒の心の発達の支援にもなるのではないかと考えた。「家庭基礎」は,生 涯発達の視点で各ライフステージの特徴と課題について理解させ,青年期の課題を踏まえて,男女が協 力して家庭を築くことの意義と家族や家庭生活の在り方について考えさせることがねらいとして挙げら れている科目である。この科目のテーマの一つである「生活設計」は,一斉授業の形態で教授されるこ とが多いが,グループ・アプローチを導入することにより,体験的な学びが可能になり,生徒の人生に 生かされる可能性が高まると考えた。  本実践では,「家庭基礎」のうち,職業選択や結婚など人生設計にかかわる内容にグループ・アプロ ーチを導入することにより,集団への適応促進,コミュニケーション力の育成や,将来の職業や生き方 についてより実感を伴った見通しを与えることができると考えた。同時に,生徒の自らが抱える課題の 認識と課題への主体的関与を促し,発達課題達成に対して効果的な支援となるのではないかと考えた。 3 支援の方法  実践時期は平成18年4月から9月,「家庭基礎」(2単位)の授業の一部である「生活設計」を利用し, 表1に示した計画に基づき,計6回のグループ・アプローチを活用した実践をした。これらの取組を通 して,学校適応を促進させる効果も期待できると考えた。指導者は教科担任と教育相談担当者である。 【表1 「生活設計」の授業展開】  4 支援の効果の確認方法  実践の効果は,以下に述べるとおり,参加者の態度,振り返り用紙への記述のほか,心理尺度を用い て検証した。  (1) 振り返り用紙への記述や振り返りのときの生徒の発表内容など  振り返り用紙には,毎回の活動の最後に「話す」,「聞く」,「楽しさ」に関して4件法で回答を求めたほ か,自由記述欄も設けた。各活動における振り返り用紙への記述の分析や,生徒の参加態度や発表内容 より,支援の効果を確認した。また,9月までの「家庭基礎」では講義・調理実習・作品製作も行った。 他の形態の授業と比較して効果的な取組であったかどうかを確かめるため,質問紙により,半年間の授 業(22種類)の中で印象に残った授業を調査した。  (2) 心理尺度による効果測定  学校に適応している実感を「高等学校新入生用適応感尺度」で,コミュニケーションにかかわる意欲・ 態度を「人間関係尺度」で,自己に対する評価感情を「自尊感情尺度」で,進路選択にかかわる興味・関心 ・態度を「職業的進路成熟尺度」で測定し,得点変化を検討した。各尺度については次に述べるとおりで ある。   ア 高等学校新入生用適応感尺度(AEFS)(27項目)  高等学校新入生用適応感尺度は,高校1年生を対象とした学校生活への内的適応の程度を測定する尺 度である )。内的な適応の指標である適応感の低い者は,学校適応に関してリスクが高いと言われてい る。  この尺度を用いた事前アンケート(4月実施 AEFS4)は,質問項目を「仲間づくり」,「仲間との距離」, 「教師からの規則」,「教師への信頼」,「特別活動への態度」,「不安」,「未来」の7グループに分 け,回答の合計得点を算出したものである(得点が高い場合,肯定的な回答が多い)。  事後アンケート(9月実施 AEFS9)は,質問項目を「関係づくり」,「教師への信頼9」,「特別活 動への態度9」,「教師からの規則9」の4グループに分け,回答の合計得点を算出したものである (質問紙は資料2,得点の算出方法は資料6)。   イ 人間関係尺度(6項目) 3) 4)  人間関係づくりが促進されたかどうかの測定には,「人間関係尺度」を用いた。 「人間関係チェックリスト」は,6項目により人間関係尺度を測定するもので,この尺度は人間関係づ くりのために心が開かれているか閉じられているかを測るものとなっている。質問項目は,1:自己主 張,2:自己理解,3:受容性,4:他者理解,5:感受性,6:信頼性であり,評定は5件法である。 各項目が,有意に向上したと判断できれば,人間関係づくりが進んだと判断することができる5)(質問 項目は資料3)。本研究では,活動@直前の4月と活動D直後の6月の得点変化をみた。   ウ 自尊感情尺度(10項目)6)  自尊感情とは,他者と比較することによって感じる優越感や劣等感ではなく,自分自身で自己に対す る尊重や価値を評定する程度をいい,「自分について『これでよい』と感じる程度」とローゼンバーグ は言っている。自尊感情は様々な社会的・心理的適応との関連も深く,重要な内的側面の一つであると 言われている。本尺度はその感情的評価の測定尺度である(質問項目は資料4)。活動@直前の4月と 活動D直後の6月の得点変化をみた。   エ 職業的進路成熟尺度(OCM-4 15項目)7)  進路成熟態度尺度を構成する下位尺度である。進路成熟態度尺度は中学生・高校生を対象に信頼性・ 基準関連妥当性が確認されている。各項目への反応を検討することで,どの程度職業選択への準備が整 っているかについての測定に利用が可能であるとされる(質問項目は資料5)。活動@直前の4月と活 動D直後の6月の得点変化をみた。 5 実践  (1) 活動@ 「匠の里」 8)   ア ねらい  仲間づくりを進める。お互いに協力する体験をする。グループで活動しているときの自分の動きに目 を向けてみる。   イ 活動の内容
@ グループごとに机を囲んで着席する。ねらいと進め方を説明する
A 情報が書かれた「情報カード」を,生徒一人一人に配付する
B 開始を告げて時間を測る。「情報カード」に書かれている「情報」を口頭で話し合っていくこと
 で,ある課題を解決していく,課題解決実習を実施する
C グループが出した答えを順に発表し,次いで正解を発表する
D 振り返り用紙を配り,個人で記入する。振り返り用紙に個人が記入したことを分かち合いなが
 らこの課題達成の過程で起ったこと,そこから学んだことをグループで話し合う
  ウ 参加者の様子    (ア) 観察  活動の中で,振り返り用紙への記入は計画した目標に沿ったものを記入していた。課題解決はどのグ ループも真剣に取り組んでいた。課題解決に熱中する余り,各自の心の中に浮んだ思いが,振り返りの 時まで保てていないような様子が見られた。全体場面での振り返りは,発表できても,しっかり聞くこ とができない生徒も多かった。    (イ) 主な振り返り用紙への記述例
・「聞く・話す」姿勢に関する記述(23名):「しっかり相手のことを聞かないと進まない
 ことが分かった」
・ワークを進める態度に関する記述(127名):「皆が地図を完成させたいと思っているみたい
 でどんどん進んだ」「何人かが一気にしゃべると,言っていることが分からない」
・ワークの楽しさに関する記述(56名):「親しい間ではなくても,こうやって話し合えば,そ
 ういう仲良しとかが関係なくなってよかったと思う」
・ワークの難しさに関する記述(49名):「まだ会って間もないので,一つにまとまるのが難し
 い」
  エ 課題   活動@は,6回のグループ・アプローチの導入としての意味をもつ。初回であり,体験型の授業に慣 れていない者も多いことから,生徒にその面白さ,楽しさを体感させ,グループ・アプローチそのもの に慣れさせる必要があった。そこで,集団で推理することにより平易に解決できる課題を用意した。こ の実践によりこの後計画されている,より個人的な内容に踏み込んだ活動への抵抗感を軽減させ,グル ープ・アプローチ自体の安全性や楽しさを体験することができるようにした。  課題の意味を生徒が十分に理解し,その楽しさを理解した場合,通常の授業の中では他者の意見を聞 くことが難しいメンバーが,グループ・アプローチ終盤の振り返りのときに互いを尊重した意見交換が できたケースもあり,このような効果を得るためには,生徒の理解の程度を的確に判断し,しっかりと 課題に取り組ませる指導者の技術が欠かせない。  生徒に課題の意味を理解させることに失敗し生徒が戸惑う場面があった。すなわち,グループ・アプ ローチにおいては,その実践の中の「約束事」に無条件に従うことが必要であるが,生徒が,その約束 事になぜ従わなければならないのかと反発し,約束事を逸脱して全体の進行が乱された場合があった。 これらの齟齬(そご)を防ぐには,指導者が,グループ・アプローチが提示している課題の意味をよく理 解させるための話法,技術を習得する必要があることが判明した。  (2) 活動A 「世界がもし100人の村だったら」 9)   ア ねらい  「世界がもし100人の村だったら」の詩を題材にしたシミュレーションを通して世界の多様性を体験的に 学び,私たちが暮らす日本は世界のどこに位置するのかを考える。   イ 活動の内容
@ 導入・アイスブレーキング:ワークシート・カードを配付する。カードに書いてある言語のあ
 いさつをしながら,同じあいさつをしている人を探させ,グループに分かれる
A 世界の言語・性別・年齢構成の各シミュレーションを,生徒に配付したカードの内容に従って
 行い,答と理由をワークシートに記入する
B 識字
  バスヌホス(ネパール語)と書いた紙を全員に見せ,役割カードに従ってグループ分けし,識字
 率のシミュレーションを行う。非識字のグループに家族の役割を担わせ,非識字に関するロールプ
 レイを実施させる。他の生徒は劇を鑑賞する。文字が読めないことに関して,ワークシートに記入
 し,発表する。振り返り用紙を配り,個人で記入する。振り返り用紙に個人が記入したことを,分
 かち合いながらこの課題達成の過程で起ったこと,そこから学んだことをグループで話し合う
  ウ 参加者の様子    (ア) 観察  小さなシミュレーション課題により構成されている。教師側の提示の技術を問われた。何名かの生徒は, 「世界がもし100人の村だったら」を知っており,作品が示しているメッセージの重要性をグループ内で発 言していた。    (イ) 振り返り用紙への記述例
・世界の言語に関する記述(75名):「言葉の違いなどによって過ちなどが起こりやすいことや
 分からないことがあると分った」
・識字に関する記述(87名):「言葉が読めん人がおるのは知っていたけど,どんな不便がある
 かなんて考えたことなかった」
・シミュレーションに関する記述(79名):「やはり世界の貧困化が気になる。もっと,一人一
 人個人がグローバルに目を向け,何もできないと思わず小さなことでも行動したいと思う」
・楽しさに関する記述(8名):「皆すごく打ち解けていた」
  エ 課題   生徒はロールプレイを恥ずかしがってしまい,十分な取組が困難になることを懸念していた。そのた めロールプレイの演者に無理がないように簡単な台本を用意した。一方で演者には個々のせりふは与え られていても,どのような展開が用意されているかは知らせないなど,適度な緊張感を与える必要もあ った。その結果,観客役と一体となった取組ができた。ワークのねらいの提示,進行に関して指導者の 指示の明快さなど,指導者の介入が生徒のワークへの取組に影響を与えているように見えた。リハーサ ルの実施が大切である。また,指導者は互いの実践を見せ合うことなど,より効果的な提示方法を目指 す必要がある。  識字に対するロールプレイでは文字で書かれた正解を選択する役は教師が行った。必ずしも正解を選 択させる必要はないが,演者にマイナス体験をさせることに対しては教師が選択役を担うなど,一定の 配慮が必要である。  (3) 活動B 「交通事故にあいました」 10)   ア ねらい  日常生活における性役割に関する固定観念・思い込み,気付き,性役割と生物的な差の違いに気付く。   イ 活動の内容
@ グループに分かれて着席する
A 情報カードを配付する
B 開始を告げて時間を計る。「情報紙」に書かれている「情報」を意味の通る順番にカードの並べ替え
 をするよう指示する。登場人物の人間関係を考えさせる。口頭で話し合っていくことで,課題を解
 決する
C グループが出した答えを順に発表し,次いで正解を発表する
D 振り返り用紙を配り,個人で記入する。振り返り用紙に個人が記入したことを分かち合いながら
 この課題達成の過程で起ったこと,そこから学んだことをグループで話し合う
  ウ 参加者の様子    (ア) 観察  すべてのグループが熱心に取り組んでいた。グループによっては,指導者が提示した正解に納得しな い者もいた。プロセスよりも正解であるかどうかに意識が集中していたように見えた。    (イ) 振り返り用紙への記述例
・楽しさに関する記述(23名):「たくさんの意見があって楽しかった」「関係を考えれば考える
 ほど多くの意見があった」
・ジェンダーバイアスに関する記述(68名):「男・女と書いていないのにそれぞれのイメージ
 で勝手に決めてしまっているんだなあと感じた」
・意思決定に関する記述(45名):「自分の考えをしっかり言うことで皆に納得してもらえるこ
 とがうれしかった。それに他の人の考えも分かってこういう考え方もあるんだなあと思った」
  エ 課題  単純なワークだが,互いに理由を説明しながら質問とそれを聞き取るという形態を守らせると,1時 限では手一杯であった。課題解決に関しては真剣に取り組んでいたが,振り返りに十分な時間が取れな くなり,なぜそのような回答に至ったか分からなくなったり,性役割に対する固定観念に思い至らなか ったりした。時間を多くとれば正解に近づくグループは増えるはずだが,課題解決だけで満足してしま い,グループ活動に集中できなくなるといったマイナスも考えられる。時間配分のバランスの取り方が 難しい。生徒の状態に合わせた指導者の適切な介入が重要である。   (4) 活動C 「結婚するって本当ですか?」 11)   ア ねらい  人生・家族についてのテーマの中で,より個人的な,結婚観について考えさせる。どのような相手を 好ましいと考えているのか,それはいつから,だれの影響なのかなどについて思いをはせ,個々のもつ 結婚観について考える。   イ 活動の内容
@グループに分かれて着席する(活動はグループ内のペアで)
A「結婚するって本当ですか?」ワークシートの指示に従い,結婚する友人に対して結婚相手につい
 て質問する(グループで)
B 「結婚の熱気球」ワークシートの指示に従い,生徒自身が大切だと思う結婚相手の条件を書かせる
C指導者の指示に従って,結婚条件の絞り込みを行う
D最後に残った条件をグループ内で比べながら発表する
E振り返り用紙を配布し,「結婚するって本当ですか?」で他者に質問した項目との差異について考
 える。グループ内で発表する
  ウ 参加者の様子    (ア) 観察  照れてうまくいかないのではないかと心配されたが,ほとんどの生徒は熱心に取り組んでいた。特に 女子はなぜこのような相手が理想であるのか,グループ内の男子に丁寧に説明していた姿が印象的であ った。各自の保護者の姿が元になっていると気付きを語った生徒もいた。    (イ) 振り返り用紙への記述例
・結婚の意味に関する記述(28名)
 「一番多いのが,性格や職業が重視されていることに気付きました」
 「家庭をうまくいくようにするためなど,家庭を守っていくために必要なものをもっているこ
  とが重要だと思いました」
・理想像の共通性に関する記述(44名)
 「男子も女子も性格がよい人を重視しているんだなと思った」
 「どんな人がよいかを考えたことがよかった。自分も自分が理想の人に近付けるようにしたい
 と思った」
・初めて結婚について考えた体験に関する記述(16名)
 「どれが優先か順位を決めるのが難しかったです」
 「まだ遠い未来なのに,近い未来に感じたなんか恥ずかしかった」
・理想像を考える意味に関する記述(24名)
 「自分がどういう人になりたいかも考えたいと思います」
・楽しさに関する記述(20名)
 「新しいメンバーだったので,いろいろと話せてよかったです」
 「もっといろんなことを話せたらよいと思いました」
  エ 課題  生徒の課題への取組は,指導者の技術に左右される。特に,振り返り・分かち合いが十分できるのか は,指導者がそのワークをよく知っているかどうかによる。指導者はリハーサルを行い,実施するので あるが,どうしても始めのクラスよりも,回数を重ねたクラスの方が良い取組になった。効果的な内容 提示,効果的な介入には,対象者の理解力と指導者の余裕が必要であると実感した。  生徒の態度はおおむね良好で,毎回チャイムと同時に開始できるように移動するなど,意欲的であっ た。グループ・ワークを通した学びに対する期待が高まっていると理解した。体験的な学習では,活動 時点で学習効果を評価することも必要であるが,時間が経過することによって現れてくる現象にも目を 向ける必要がある。  (5) 活動D 「人生すごろく」 12)   ア ねらい  人生の疑似体験をし,人生にはトラブルもあることや,人はどんな価値観を大事にして生きているか を学ぶ。就職,結婚,出産,育児などのライフイベントを踏まえて,どう生きていきたいかを考える。   イ 活動の内容
@グループに分かれて着席する
A「進め方シート」を使い,すごろくによるロールプレーイングゲームの進め方を説明する。目的
 は早くあがることでなく,「人生の価値観を考えること」であると強調する。価値観については,
 「人生すごろく」プロフィールシートを参考にして考える。コマを進める中で,プロフィールシ
 ートにスコアを記入する。プロフィールシートに書かれている価値観の意味以外に気付いたこと
 があれば,メモを取るように指示しておく
Bゲーム終了後,プロフィールシートの得点を計算し,レーダーチャートを作成する
Cゲームの中で気付いたこと(迷ったり,他の人のコマを見て思ったことなど)をコメント欄に書
 く。班の中で互いの結果・気付いたことを交換する
  ウ 参加者の様子    (ア) 観察  人生には回り道や失敗など思いもしない出来事に翻弄(ほんろう)されることがあることに多くのグル ープが気付くことができた。また,価値観に関するプロフィールに関して,スタート時点の進路選択を 二通り試みた生徒がいた。人生終盤の姿も異なるものとなったが,プロフィールを描いたレーダーチャ ートはほとんど差のない形となり,試した本人も驚いていた。    (イ) 振り返り用紙への記述例
・価値観に関する記述(34名)
 「犠牲にしないといけないものがあったりするけれど,得るものもあるし,いろいろな経験を
 していくんだなと思いました」
・人生設計を考える機会に関する記述(33名)
 「この人生ゲームは,ゲームだったけど本当の人生を想像させるようなドキッとした実習でした」
・いろいろな経路をたどるに関する記述(34名)
 「人生には様々な問題が起こるけど,それを乗り越えることで成長するかもしれないと思った」
・人生で出会う困難に関する記述(62名)
 「自分がなかなか進めないと自分だけ置いてかれている感じがした」
・人生の選択場面に関する記述(42名)
 「同じことをやっているのにそれぞれ感じることが違うと思った。本当の人生はやり直しができ
 ないので大事にしたいと思った」
  エ 課題   「家庭基礎」で扱う内容に保険・貯蓄など消費者教育的な内容がある。この点に関して活動Dでは座学 で得られるほど知識は増えないが,想像しにくい人生の選択場面には個人の価値観が反映されることを 実感し,人生における停滞を疑似体験することになる。参加者に極端なマイナス体験のみをさせること は適当ではないので適切な教師の介入が必要となる。さらに,このワークでは停滞からの脱出や目標に 通じる進路が幾通りも用意されている。座学では実感しにくい人生のリスクを回避することに目を向け ることも期待できる。一方,途中から早くゴールに到達することがよいこと考えてしまう生徒が他のワ ークよりも多かった。ゲーム性の高いワークなので,ワークの本来の意図する目的を見失いやすいなど, 教師はワークの特質をよく理解し,より適切な介入を行なう必要があった。この活動の課題として,さ らに個人の価値観と人生の選択にテーマが絞れるようなワークに改善するなど,ワークのねらいをより 明確に提示し,生徒が体験できるような実践に改善をする必要があると考える。  (6) 活動E 「生活設計」 13)   ア ねらい  生活設計の立案を通して,自分の生き方や目標達成のための課題について考える。   イ 活動の内容
@ 夏季休業中の課題として提出を求めていた各自の生活設計をグループに分かれ,グループ内で
 発表を行う。グループのメンバーは,メモを取りながら発表を聞く
A 応援メッセージをカードに記名して書く。カードはグループメンバーの目に触れるようにグル
 ープ内を回しながら発表者に届ける。発表者は集まったカードを台紙にはり,メッセージを受け
 取った感想を自己記入欄に書く
  ウ 参加者の様子    (ア) 観察  どのクラスでもおおむね活発な発表が行われた。特に生徒の表情は楽しげで,印象的であった。プラ ン作成者へのコメントについても,真摯な書き込みにあふれていた。発表に際して,1学期の活動@で 作成した名札を自主的に利用した生徒も見受けられた。発表を聞く態度は発表者に対して友好的で,発 表者に対する賞賛の拍手がそこここで見受けられた。ほとんどの生徒は,個々に全く異なるプランをも つこと,身近なクラスメートとの違いを発見し,その新鮮さを率直に表現していた。    (イ) 振り返り用紙への記述
自己開示,他者との触れ合い,多様性を認めることに関して率直な記述が得られた。
・コメントの交換への感想(8名)
 「皆の励ましを聞けてよかった」
・グループのメンバーに対する賞賛(79名)
 「自分以上に将来について考えている人がいて驚いた」
・ メンバーの発表に触発を受けた(43名)
 「みんなの将来がよく分った。自分もしっかりした人生を歩んでいきたいです」
・疑似体験的な経験(32名)
 「皆の将来と自分の将来が違っているのでいろんな人の人生を味わえた。素晴しい実習ができ
 たと感心しています」
・グループ・アプローチの楽しさを表現する(25名)
 「人に自分の意見を言う楽しさとかが段々分かってきた気がする」
  エ 課題   夏季休業中の課題として作成させた「生活設計」であった。課題に対する理解度の差が作品の質の差と なって表れた。口頭のスキルが不十分なメンバーが集まったグループは,全員がほとんど話さず黙々と コメント用紙への書き込みを行っていた。沈黙は,自己開示に対する抵抗感から起こる現象とも考えら れる。指導者の有効な介入が求められる場面であったが,グループのメンバーの多数が話したくないと いう態度をあらわにしてしまうと,取組の流れを変えるのは困難である。進行方法を工夫した方がよか った。言葉による分かち合いが難しかった理由を考えさせるなど,そこで起きている現象に適した介入 が必要である。  書き込んだ相手にカードを渡す際に,互いの書き込みが目に触れるようにグループ内で回覧させた。 このことにより,書き込みがグループのメンバーの目を意識したものになり,画一的な書き込みに終わ る可能性も考えられた。しかし,照れや言葉による表現の幼さから,口頭による振り返りでは十分に自 分の気持ちをグループのメンバーに伝えられない生徒にも,メッセージカードの交換は有効であった。 どのカードも発表者の意図をくみ取ろうとする書き込みにあふれていた。グループ内を回覧させたこと は,この活動の安全性をより高めることになったと考えられる。振り返り用紙への記述には,メンバー との相互作用に関する気付きが見られ,他のメンバーの発表を聞くことが疑似体験的な経験となったこ とが分かる。改めてそこで体験したことを分かち合うことの重要性を実感した。  グループ・アプローチを導入した活動で最も重要な活動が「振り返り」「分かち合い」である。今回の活 動のように「振り返り」「分かち合い」を通して体験を言語化することで学びを確かし,更に疑似体験的な 経験となるなど,より広い学びが可能となった。時間的な問題で,「分かち合い」の時間が取れないと振 り返り用紙への記入のみにとどめ,省略してしまう場合があるが,より深い学び場面の提供のためには 「振り返り」「分かち合い」の形式を工夫し,短時間でも「分かち合い」を実施することは大切である。 6 結果と考察  (1) 結果   ア 振り返り用紙への記入(表2  生徒はグループワークを含んだ学びに対し意欲的に取り組んでいるように見えた。生徒の活動意欲の 高まりは,振り返り用紙への回答にも現れており,回を重ねるにつれ,「話す」・「聞く」に関して「でき た」と評価した生徒が増加した。  1回目の活動は,グループ・アプローチそのものを成立させるために,関係づくりとグループ・アプ ローチに慣れる活動と位置付けた。そこから男女の互いの尊重,結婚をはじめとして将来設計にかかわ るワークなど,よりパーソナルな側面に迫りつつ,高校生が抵抗なく参加できる形態を模索した。  始めの2回の活動では,生徒のグループ・アプローチそのものに対する理解不足からか,より早く課 題解決することがよいことと考えたのか,他人のカードをのぞかないといったルールを守れない生徒も 見られた。振り返りでも,用紙に記入しても自分の意見を話せない生徒もわずかだが見られた。  これらの生徒に対してグループ内でフォローできずに沈黙が続く場面も見られた。しかし,かなりの生 徒は,それぞれの活動の中で,熱中して参加していた。振り返り用紙への回答も,聞く・発言する態度に 関しても回を追うごとに好転した。実践の中で生徒は,グループのメンバーや,指導者の指示を注意深く 聞き・発言しないことには活動の中で与えられた課題は解決しないことに気付き,聞き・発言することに 積極的な姿勢をみせた。これらの体験の積み重ねによる学習効果が参加態度に現れてきたと考えられる。 【表2 振り返り用紙への記入】    イ 印象に残った授業(図1  9月末に本年度の授業に対する印象を質問紙により調査したところ,印象に残った授業として調理実 習や小物製作の次にグループ・アプローチを導入した授業を挙げていた。6回の実践のうち,5回目の 「人生すごろく」,初回の「匠の里」のが多くあがっている。  活動直後の振り返り用紙への記述では,「人生すごろく」は,表2にあるように,授業の楽しさとい う点においては,「世界がもし100人の村だったら」・「交通事故にあいました」(90%台)のように,ワー クの中で直接価値観を問わない形式をとったものより,楽しさのポイントが低かった。「人生すごろく」で は,人生で起こり得る危機的状況も体験するため,「参加したくなかった」と記述する生徒もいた。しか し,「印象に残った」授業としては上位である。「印象に残った」と感じる理由の記述を求めてみると,「み んなの考えが分かって面白かった」,「みんなと話し合うのが楽しかった」などクラスメートとかかわり 合いながら,学ぶことに楽しさを感じていた。また,「自分の人生設計を考えるのはとても楽しかった」, 「すごろくで人生を想像することができてよかった」など自分の人生設計を考えた体験を評価した回答が 得られた。これら実習が自己と向き合い,他者と共感的に触れ合う体験として成立したと言える。 【図1 印象に残った授業(4〜9月)】    ウ 心理尺度の得点変化    (ア) 高校新入生用適応感尺度(図2・図3  本実践ではグループ・アプローチを導入していない年度(前年)と比較を行った。図2は,4月の適 応感尺度の得点を表している。適応感にかかわる質問項目を「仲間作り」「仲間との距離」「教師から の規則」「教師への信頼」「特別活動への態度」「不安」「未来」の7グループに分け,回答の合計得 点を算出した(得点の高さは適応感の高さを意味する)。図3は9月の適応感尺度の得点を表したもの である。適応感にかかわる項目を9月は質問項目を「関係づくり」,「教師への信頼9」,「特別活動 への態度9」,「教師からの規則9」の4グループに分け,回答の合計得点を算出した。  間接的な比較とはなるが,4月は,合計得点に関して,前年24.4,実践年24.7と大きな変化は見られ なかった。「不安」に関して適応感は低く,「特別活動への態度」,「教師からの規則」は,得点が高 かった。他の項目は比較して差は見られなかった。9月はすべての項目に関して,得点が高くなった。  このように4月の入学時に適応感には年度間の差がなく,実践直後の9月の適応感が高かったことか ら,実践年で高校新入生の適応感が高まったことを確認できた。学校適応に関する内的指標である適応 感が高まることは,集団への帰属意識を高めることに対してよい効果があったと考えられる。コミュニ ケーションにかかわる項目を含んだ項目を見ると,4月「仲間づくり」の得点が前年と差が見られず,9 月「関係づくり」は前年より得点が高くなった。採用している項目が4月と9月では異なっているがコミ ュニケーションに関しても部分的ではあるがよい効果があったと考えられる。
【図2 高等学校新入生用適応感尺度(4月)】【図3 高等学校新入生用適応感尺度(9月)】
   (イ) 人間関係尺度,自尊感情尺度,職業的成熟尺度の得点変化(図4  本実践により,自尊感情尺度については得点が下がったが,全体としてみれば,人間関係尺度・職業 的進路成熟尺度は有意な得点変化が見られなかった。得点変化が見られなかったのはすべての生徒であ るかを確認する目的で,新たに実践対象をグループ分けして分析を試みた。学校環境に対して適応感の 低いグループは,学校適応に関して不登校や逸脱行為,学力不振など学校環境に対する不適応の状態に なる可能性が高い。そこで4月に答えた高校新入生用適応感尺度(得点が高いほど適応感が高い)の得 点を用いて,「高得点群」(平均+標準偏差)と「低得点群」(平均−標準偏差)に分け,得点の推移を比 較した。  その結果,「低得点群」については人間関係尺度・職業的進路成熟尺度の得点が上昇した。さらに,職 業的成熟尺度を構成する下位尺度についても比較した(図5)。職業的自律度は「高得点群」は得点が下 がり,「低得点群」は変化が見られなかった。職業的進路計画度については,「高得点群」は得点が下がっ たが,「低得点群」の得点が上がった。 【図4 人間関係尺度・自尊感情尺度・職業的進路成熟度】 【図5 職業的進路成熟尺度の下位尺度】  (2) 考察  本実践で目指したことは,生徒に自己を見つめ,クラスのメンバーと互いを尊重し合う密接な関係を もちながら生活することの大切さを自覚させるとともに,生徒が自己の将来について考える機会を提供 することであった。さらに,これらの実践により,生徒の集団への帰属意欲,コミュニケーション能力 を向上させ,職業選択など人生設計に生徒が関心をもつ契機を創出し,青年期の発達課題に対してより 主体的に取り組む高校生を育成することを目指した。  本実践の中で,生徒は回を重ねるごとに,課題解決に向けて,積極的,主体的に行動するようになり, グループ内での表現技術も向上して円滑に発表を行えるようになっていった。これらの結果から,本実 践を通して生徒に自己を見つめ,クラスのメンバーとかかわりをもつ活動や,結婚・職業選択をはじめ とした人生設計に関連する課題に対して主体的に取り組む意欲が向上したと評価できる。また,本実践 期間である半年間の授業の印象に関する調査において,印象に残った授業の上位にグループ・アプロー チを導入した授業が挙げられていたことから,生徒自身も,本実践により何らかの成果を得たと感じて いることが判明した。  生徒の人生設計に関連する課題に対する意欲が向上した理由として次のことが考えられる。本実践に おいて,生徒自身の自己評価では,「聞く」「話す」に関しての評価は,実践後半の方が,「よくできた」と 評価している。グループ・アプローチの活動は,与えられる課題を解決するためには指導者の説明をよ く聞き,グループで協力する必要がある。生徒がこのことに気付いたので「聞く」「話す」に関する生徒の 態度の変化を考えると,その意欲の変化をもたらすには,回数を重ねた計画的な実践が必要と言える。 本実践では,グループ・アプローチに不慣れな生徒も相当数いたことから,活動そのものに慣れさせる ところから始めた。とくに初回は,グループや学級内で振り返りに十分時間を取ったことも生徒の活動 への理解を促進したと考えられる。さらに,本実践においては,回を重ねるごとに,「性」役割,「結婚」, 「人生設計」などより個人的な内容に踏み込んでいく構成とした。本実践における6回の活動においては, 1回の活動ごとに解決すべき課題,個々の生徒が果たす役割や,解決の過程で守るべきルールなどが明 示されている。生徒は,このように構造化された枠組みの中で活動を行うことで,安心して自己開示や 共感的に理解し,理解される経験を安全に体験することができる。さらに,振り返りにより,生徒は, その活動で体験したことを言語化して自らの経験を客観視することができ,自己理解が深まる。また, グループ内の振り返りにより,しっかりと聞いてもらう体験は,グループ内の信頼関係を深める体験を 重ねることにもなる。質問紙による調査の結果からすれば,これらの体験を重ねることにより,「性」役 割や「結婚」など,特に男子生徒にとって話しにくいテーマでも,「今まで考えたことがなかった」と答え ながらも,大多数の生徒は,真剣に考え,グループのメンバーと「こう思う」ことを率直に語り合うこと ができたものと,本実践を評価することができる。高校生が,結婚,育児,老後など誰もが経験する人 生の課題に関して語る機会は少ない。生徒は,グループのメンバーに発表することにより,自己開示を 体験するばかりでなく,発表を聞くことやコメントを返す活動を行うことにより,観念的な理解ではな く,同じ年代を生きるクラスメートの言葉であるので,より実感を伴った疑似体験を得ることができた ようだ。これらの成果を踏まえれば,グループ・アプローチにおいては,個々の活動内の課題解決など に時間をとられ,振り返りを簡素化しがちであるが,適切な振り返り用紙などを用意し,十分な意見交 換ができるよう更に工夫する必要があると考える。本実践においては,段階的なプログラムを組むこと や,構造化された活動を通して,日常生活の中でも座学の授業の中でも実感をもってとらえにくい職業 選択や結婚と家庭生活の準備などの青年期の発達課題を,自らの課題としてとらえることが可能となっ たと考える。  次に,本実践が,集団への適応感,コミュニケーション能力を向上させ,職業選択など人生設計に対 する関心が高まったのかについて検討する。学校生活に関する適応感は,4月の入学時の調査では前年 と変わらなかったが,実践終了時の調査では合計,下位尺度すべてに関して得点が高かった。このこと から,生徒の学校生活に対する帰属意欲が向上したと言える。本実践では,計画的なグループ・アプロ ーチを体験させたことだけでなく,各活動ではグループを固定せずにウォーミングアップを兼ねてのシ ョートエクササイズなどにより毎回異なるメンバーで行った。このことが,生徒にとって,学級内にで きる小さなグループを超えたメンバーと個人的な内容について語り合う体験となると同時に,グループ 内に適度な緊張感をもたせ,より集中した活動になったようだ。また,本実践は,入学早期での実践と いうこともあり,生徒の人間関係に広がりをもたせることになり,学校生活に関する適応感を高めるこ とになったと考えられる。  学校生活に関する適応感が低いと学校適応に関してリスクが高くなると言われている。本実践後の調 査結果によれば,コミュニケーションに関する尺度と職業選択に関する尺度の得点は,実施学年全体で は変化が見られなかったが,この適応感の低い,ハイリスクグループではコミュニケーション,職業選 択の進路計画にかかわる意欲が向上した。一方,適応感の高いグループは,実践前後においてコミュニ ケーションも職業選択の進路計画にかかわる意欲・態度も高く,変化がなかった。各活動の中で体験し たことを言語化し,交換するのでコミュニケーション能力などのトレーニングになるが,その効果はす べての生徒に同じく現れるわけではない。適応感の高いグループは,その時点で必要と感じるコミュニ ケーションや進路選択にかかわる意欲・態度は高かったので,この実践程度(2週間に1回のペース) の介入では変化がなかったと考えられる。また,本実践後,生徒の自尊感情の低下が見られたが,これ は,必ずしも本実践による負の効果であるとは認められない。本実践は,入学早期の1年生に対して行 ったものである。新入生は,新しい環境に置かれ,高校生としての成功,挫折の体験をもたないため, 当初の自己像は,内的な理想自己と同一視しがちである。本実践を体験することにより,早期に自己の 現実的内面と向き合うこととなり,その結果自己評価が下がったと考えることができる。  なお,本実践は,2単位の授業で,学級単位で行う実践であった。実践の指導者と学級集団との関係 性は,ホームルーム担任と比較すると教科担任やビジターとして参加した教育相談担当者は薄くなる。 一部のグループで心理尺度による変化が見られなかった理由として,その関係性の影響も考えられる。  本実践は知識伝達よりも,青年期の発達課題である集団への帰属意欲の向上,コミュニケーション能 力の向上,職業選択など人生設計に対する関心の向上などを目指して行ったものである。今回効果測定 に心理尺度を用いたが,「生活設計」の題材にかかわる適当な指標が見付からず,部分的な検討にとどま った。より効果的な実践活動の評価にどのような指標が必要であるかの検討も必要である。また,本実 践では教科・教材の目標に合致したプログラムであったので,生徒が家庭科の時間に違和感なく活動で きたと考える。このようにグループ・アプローチが高校の教育現場で日常的に利用されるには,より教 科の題材にあったプログラムの開発と検証が必要であろうと考える。 <参考資料> 1)文部科学省『心の健康と生活習慣に関する指導』(文部科学省,2003) 2)太田恭子「高校新入生の学校環境への適応に関する研究」  『愛知県総合教育センター平成16 年度教育相談長期研修員研究報告書』(2005) 3)國分康孝『エンカウンターで学級が変わる 高等学校編』(図書文化,1999) 4)近藤充代「高等学校におけるピア・サポートに関する研究」  『愛知教育大学大学院教育学研究科修士論文』(2004)pp.23‐24,pp.63‐64 5)近藤充代・坂井誠「高等学校2校におけるピア・サポートに関する研究」  『ピア・サポート研究』No.4(2007)pp.47‐56  6)山本真理子・松井豊・山成由紀子「認知された自己の諸側面」  『教育心理学研究』No. 30(1982)pp. 64-68 7)坂柳恒夫・竹内登規夫「進路成熟態度尺度(CMAS)の信頼性および妥当性の検討」  『愛知教育大学研究報告(教育科学編) 』No.35(1986)pp.169-182 8)星野欣生『Creative School 生き生きとしたクラスを作るために』(プレスタイム,2003)pp.19-44 9)100人村教材(新版)編集委員会『新・ワークショップ版 世界がもし100人の村だったら』  (特定非営利活動法人 開発教育協会,2006)pp.7-19 10)グラハム・パイク他 阿久澤喜代子訳『地球市民をはぐくむ学習』(明石書店,1997)pp.77 11)ニューメディア人権機構 「ふらっと」 http://www.jinken.ne.jp/class/sheet/work4.html(2006) 12)西村宜幸『フツーの高校教師の学校教育相談Ver.3 学校教育相談の使い方・つくり方 −問題解決の  個人面接&こころのグループワークfor総合的な学習の時間,forロングホームルーム,for進路学習−』  (2000)pp.28-29 13)竹内智子「「家庭基礎」における授業展開の工夫〜ワークショップ型授業の導入〜」  『愛知県高等学校家庭科研究会 平成18年度研究紀要』No.43(愛知県家庭科教育振興会,2007)p.25-27
【資料1】
【資料1 自己効力感】
【資料1 不安傾向】
【資料1 行動】
【資料1 規範意識】


【資料2】
学校適応感アンケート
4月・9月のアンケートの結果をつなげるために現在の名簿番号を答えてください。(   )
性別を答えてください。         1)女   2)男


[【質問】
最近1ヶ月のうちの学校生活を振り返って、次のことがらはあなた自身どの程度当てはまりますか。
「非常によく当てはまる」から「全く当てはまらない」までのうちから、1つ選んで○印をつけてください。

非常によく当てはまる・・・5 少し当てはまる・・・4 どちらでもない・・・3 
あまり当てはまらない・・・2 全く当てはまらない・・・1

1 私はこの学校の先生の言うことが、納得できる           
2 私は目が合うなどのちょっとしたきっかけから親しくなることがある
3 私には先生が熱心に指導しているようにみえる
4 私は同じクラスの人の内声を掛ける人を意識して選んでいる
5 今までとは全く違う人間関係をつくれるので楽しみである
6 私はこの学校の先生に信頼感を感じる
7 私は新しい友達と将来のことや夢などについて話をする
8 私は友達の数はそれほど多くない
9 私は同じクラスの人に話し掛けられてもどういう言い方で答えればよいか迷うときが多い
10 私には通学が予想よりも大変に感じている
11 私は出された宿題は全部やっている
12 私は同じ係になった人と友達になりたいと思い話し掛けている
13 私は新たにとても親しい友達ができている
14 先生にいつも、自然にあいさつをすることができる
15 私の将来の夢のためにやらなければならないことがはっきりしている
16 私は先生に説明された頭髪や制服等の決まりを守っていける
17 この学校の先生のうち、顔と名前が分かる先生の数が増えている
18 私は黒板に書かれた内容をノートにきちんと写している
19 私は新しい友達と校内のできごとについてよく話をしている
20 私は周り人たちに話題を合わせていける
21 私には楽しみにしている学校行事がある
22 私は授業を聞いていても分らないことがよくある
23 私は友達に自分の成績のことを相談できる
24 私は友達といるよりも一人でいる方が気持ちが落ち着く
25 教室の近くの席の人が私に話し掛けてくれる
26 私には部活動の見学に一緒にいく友達がいる
*9月実施時は,質問26は項目を削除して実施する
27 私は無理をして相性の合わない人とは話さない
28 私は悪い成績を取れば進級できないことがあることを知っている
29 私の新しい友達と通学経路を話題にしている
30 私は新しい友達とテレビの番組についてよく話をする
31 私は新しい友達と自分が困ったことについて話をする
32 私は部活動やホームルームや行事を怠けないで真面目にやっている
33 私はこの学校の部活動に誘われれば参加したい
*既に部活動に参加している人は、「もしあなたが部活動に参加していないとして、入部を誘
 われたとすればどうしたいと思うか」と考えて答えてください。
34 私はこの学校を卒業したらどのような進路の可能性があるか知っている
35 私はこの学校でやっていけるか不安である
36 私は先生に説明された授業のマナーを守っている
37 私は部活動やホームルームや行事に楽しさを感じる
38 私は1時間の授業の内容が多くて集中できない
*「新しい友達」は、高校に入学してから知り合った友達のことと考えてください。
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 ご協力ありがとうございました。

【資料3】
質問T この数週間で、あなたの状態はどのあたりにあるか、該当する線上に○をつけてください。
そうである:1 ややそうである:2 どちらでもない:3 ややそうである:4 そうである:5
1 他人の目を見て会話をしている 
2 状況にあった話しや会話をしていた
3 自身のある態度であった  
4 人の話に関心をもって聞いていた
5 表情が豊かで明るかった  
6 心を開いてみんなと接していた 
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人の目を見られず伏目がちであった
不適切な話や行動があった
おどおどして不安げであった
人の話に関心がもてなかった
暗く硬い表情であった
人と距離を置いていた

【資料4】
質問U 次の特徴のおのおのについて、あなた自身にどの程度当てはまるかをお答えください。
各項目ごとに回答欄の該当する番号に、○印を一つずつ付けてください。他からどう見られているか
ではなく、あなたが、あなた自身をどのように思っているかをありのままにお答えください。

当てはまる:5 やや当てはまる:4 どちらともいえない:3
やや当てはまらない:2 当てはまらない:1 
1 少なくとも人並みには価値のある人間である            
2 いろいろなよい素質をもっている       
3 敗北者だと思うことがよくある*        
4 物事を人並みには、うまくやれる        
5 自分には、自慢できることがあまりない*    
6 自分に対して肯定的である           
7 だいたいにおいて、自分に満足している    
8 もっと自分自身を尊敬できるようになりたい*  
9 自分は全くだめな人間だと思うことがある*   
10 何かにつけて、自分は役に立たない人間だと思う*
* 印の項目は逆転項目なので,点数を逆転させて合計得点を算出する。
 配付時は*を削除しておく。
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5…4…3…2…1
5…4…3…2…1
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5…4…3…2…1
5…4…3…2…1
5…4…3…2…1
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5…4…3…2…1
5…4…3…2…1


【資料5】
質問V 職の選択について、次のような15項目の意見があります。それぞれについて、(ア)(イ)
(ウ)の三つのうち、最も自分の気持ちに当てはまるものの記号を一つ選び、○をつけてください。
すべての意見の組みについて答えてください。
1(ア)職業の選択や決定は,自分から進んでする
 (イ)職業の選択や決定は,できるだけ自分でするつもりである
 (ウ)職業の選択や決定は,誰か他の人(親や先生など)にしてもらいたい

2(ア)志望職業につけるかどうかは,そのときの運による
 (イ)志望職業につくためには,できるだけ計画を立てることが大切である
 (ウ)志望職業につくためには,計画を立て,準備することが大切である

3(ア)最近,将来の職業や就職のことが,とても気になっている
 (イ)最近,将来の職業や就職のことが,少し気になっている
 (ウ)最近,将来の職業や就職のことは,あまり気にならない

4(ア)将来の職業や就職先は,だれか他の人(親や先生など)に決めてもらいたい
 (イ)将来の職業や就職先は,できるだけ自分で考えて決めたい
 (ウ)将来の職業や就職先は,自分でよく考えて決める

5(ア)志望している職業は,よく考えたうえなのでこれから先も変わらない
 (イ)志望している職業も,その時になれば変わるだろう
 (ウ)志望している職業はない

6(ア)どんな種類の職業や産業があるのか,あまり関心がない
 (イ)どんな種類の職業や産業があるのか,少し関心がない
 (ウ)どんな種類の職業や産業があるのか,とても関心がある

7(ア)志望職業の内容や就職方法などは,自分で調べる
 (イ)志望職業の内容や就職方法などは,できるかぎり自分で調べる
 (ウ)志望職業の内容や就職方法などは,先生や親などに調べてもらいたい

8(ア)志望職業は,まだ決まっていない
 (イ)志望職業は,前から決まっているが、そのための努力はしていない
 (ウ)志望職業は,前から決まっており,現在もそれに向かって努力している

9(ア)何のために職業に就いて働くのか,真剣に考えたことがある
 (イ)何のために職業に就いて働くのか,少しは考えたことがある
 (ウ)何のために職業に就いて働くのか,あまり考えたことがない

10(ア)将来の職業は,自分一人の責任をもって決められない
 (イ)将来の職業は,できるかぎり自分で責任をもって決めたい
 (ウ)将来の職業は,自分で責任をもって決める

11(ア)自分が将来どんな職業に就くのか,見当がつかない
 (イ)自分が将来どんな職業に就くのか,少しは見当がつく
 (ウ)自分が将来どんな職業に就くのか,大体見当がつく

12(ア)どんな職業を選ぶかは,自分にとってたいした問題でない
 (イ)どんな職業を選ぶかは,自分にとって少しは問題である
 (ウ)どんな職業を選ぶかは,自分にとって重要な問題である

13(ア)職業に就いてからでも,ある程度は親や先生に迷惑をかけると思う
 (イ)職業に就いたら,できるだけ親や先生に迷惑をかけないつもりである
 (ウ)職業に就いたら,親や先生に決して迷惑をかけない

14(ア)志望職業に就くための道筋が,大体わかっている
 (イ)志望職業に就くための道筋が,少しはわかっている
 (ウ)志望職業は,いまのところない

15 (ア) 自分を生かせる職業について,とても知りたい
 (イ)自分を生かせる職業について,少しは知りたい
 (ウ)自分を生かせる職業について,知りたいとは思わない




























































お疲れ様でした。ご協力ありがとうございました。質問、意見、感想などありましたら、ご記入ください。






※ 生徒にはスコアを消して配付。
※ 1・4・7・10・13職業的進路自律度(OCM)高校生平均男子6.51,女子5.90)
  5・8・11・14職業的進路計画度(OCP 高校生平均男子4.45,女子4,75)
  3・6・9・12・15職業的進路関心度(OCC)  高校生平均男子6,.56,女子6.53)
  職業的進路成熟(高校生平均17.52,女子17.19)

【資料6】
高等学校新入生用適応感尺度(AEFS)について
 高等学校新入生用適応感尺度は高校新入生の学校環境に対する内的適応の程度を知るために開発した
尺度(以下4月実施時の尺度得点をAEFS4,9月実施時の尺度得点をAEFS9と表記する)である。入学
初期の高校生における妥当性が確認されている。
 各項目の得点は,「非常によく当てはまる」,「すこし当てはまる」,「どちらでもない」,「あま
り当てはまらない」,「まったく当てはまらない」に対して順に5点−1点を与える間隔尺度を割り当
てた,リッカート法による尺度である(資料1)。ただし,表中「d」を付した項目については,1を5
点,2を4点と,得点を逆転して換算し,質問項目はランダムに配置してある。高等学校新入生用適応
感尺度(AEFS4・AEFS9)は,適応感が高いほど高い得点をもつことになる。また,「不安」下位尺度
は不安が強いほど得点は低くなることになる。
1 高等学校新入生用適応感尺度(AEFS4)について資料7
高校生から採集された項目をカテゴライズし,予備調査を経た後に因子分析によって項目を選択してい
る。因子負荷量の多い順に命名した下位尺度は,「仲間づくり《6》」,「仲間との距離《5》」,「
教師からの規則《5》」,「教師への信頼《3》」,「特別活動への態度《3》」,「不安《3》」,
「未来《2》」であった(《 》内の数は各下位尺度を構成している項目数である)。AEFS4の得点は,
下位尺度得点を合計することで得られる。AEFS4の下位尺度得点は,下位尺度に採用した項目の得点を
それぞれ合計し,項目数で割った得点を下位尺度得点とする。したがってAEFS4の最高得点は35,最低
得点は7点となる。
 集団比較の水準で,内的基準(入学時満足感,移行条件,進路意識)においても,外的基準(学校間
差,1学期末考査の成績)においても妥当性が確認されている。
2 高等学校新入生用適応感尺度(AEFS9)について資料8
 教師の適応判定を指標として9月の適応感をより高い妥当性をもって測定するために質問項目を再構
成したものが9月の高等学校新入生用適応感尺度(以下AEFS9と表記する)である。因子分析により明
快な因子構造をもった4下位尺度を採用した。また,集団比較の次元で内的基準(始業式の登校意欲,
現在の主観的体調)においても外的基準(欠席,遅刻)においても弁別性が確認されている。
 因子負荷量の多い順に命名した下位尺度は,「関係づくり《7》」,「教師への信頼9《3》」,
「特別活動への態度《4》」,「教師からの規則9《4》」(《 》内の数は各下位尺度を構成してい
る項目数である)。AEFS9は,下位尺度得点を合計することで得られる。AEFS9の下位尺度得点は,38
項目の質問のうち,下位尺度に採用した項目の得点をそれぞれ合計し,項目数で割った得点とする。した
がってAEFS9の最高得点は20,最低得点は4点となる。


【資料7 AEFS4を構成する下位尺度項目の記述統計】
因子名N=842平均値標準偏差
仲間作り質問7私は新しい友だちと将来のことや夢などについて話をする。2.661.06
質問19私は新しい友だちと校内のできごとについてよく話をする。3.511.02
質問23私は友だちに自分の成績のことを相談できる。3.111.02
質問29私の新しい友だちと通学経路を話題にしている。2.861.09
質問30私は新しい友だちとテレビの番組についてよく話をする。2.971.06
質問31私は新しい友だちと自分が困ったことについて話をする。2.970.96
仲間との
距離
質問8d私は友だちの数はそれほど多くない。3.140.96
質問9d私は同じクラスの人に話しかけられてもどういう言い方で答え
ればよいか迷うときが多い。
3.381.15
質問20私はまわりの人たちに話題を合わせていける。3.550.90
質問24d私は友だちといるよりも一人でいるほうが気持ちが落ち着く。3.371.13
質問25教室の近くの席の人が私に話しかけてくる。4.000.92
教師から
の規則
質問11私は出された宿題は全部やっている。3.781.06
質問16私は先生に説明された頭髪や服装等の決まりを守っていける。3.781.06
質問17この学級の先生のうち、顔と名前がわかる先生の数がふえている。3.151.08
質問32私は部活動やホームルーム行事を怠けないで真面目にやっている。3.710.96
質問36私は先生に説明された授業のマナーを守っている。3.730.90
教師への
信頼
質問1私はこの学校の先生の言うことが、納得できる。3.490.82
質問3私には先生が熱心に指導しているようにみえる。3.520.88
質問6私はこの学校の先生に信頼感を感じる。3.200.86
特別活動
への態度
質問21私には楽しみにしている学校行事がある。3.251.16
質問33私はこの学校の部活動にさそわれれば参加したい。3.451.14
質問37私は部活動やホームルーム行事に楽しさを感じる。3.491.03
不安質問22d私は授業を聞いていても分からないことがよくある。2.661.02
質問35d私はこの学校でやっていけるか不安である。3.091.12
質問38d私は1時間の授業の内容が多くて集中できない。2.920.99
未来質問15私の将来の夢のためにやらなければならないことがはっきりしている。3.181.22
質問34私はこの学校を卒業したらどのような進路の可能性があるか知っている。3.381.05
その他質問2私は目が合うなどのちょっとしたきっかけから親しくなることがある。3.101.09
質問4d私は同じクラスの人のうち声をかける人を意識してえらんでいる。3.020.97
質問5今までとは全くちがう人間関係をつくれるので楽しみである。3.650.99
質問10d私には通学が予想よりも大変に感じている。2.771.31
質問12私は同じ係になった人と友だちになりたいと思い話しかけている。3.171.12
質問13私は新たにとても親しい友だちができている。3.761.08
質問14先生にいつも、自然にあいさつをすることができる。3.411.04
質問18私は黒板に書かれた内容をノートにきちんと写している。4.270.87
質問26私には部活動の見学にいっしょにいく友だちがいる。4.051.12
質問27d私は無理をして相性の合わない人とは話さない。2.761.08
質問28私は悪い成績を取れば進級できないことがあることを知っている。4.550.66
注:dを付した項目は逆転項目である。


【資料8 AEFS9を構成する下位尺度項目の記述統計】
因子名項目 N=1091平均標準偏差
関係作り質問13.私は新たにとても親しい友だちができている。3.850.95
質問31.私は新しい友だちと自分が困ったことについて話をする。3.400.97
質問2.私は目が合うなどのちょっとしたきっかけから親しくなることがある。2.881.01
質問8d.私は友だちの数はそれほど多くない。3.130.88
質問30.私は新しい友だちとテレビの番組についてよく話をする。3.450.99
質問20.私はまわりの人たちに話題を合わせていける。3.510.85
質問12.私は同じ係になった人と友だちになりたいと思い話しかけている。3.070.96
教師への
信頼9
質問6.私はこの学校の先生に信頼感を感じる。2.980.88
質問3.私には先生が熱心に指導しているようにみえる。3.280.90
質問1.私はこの学校の先生の言うことが、納得できる。3.220.86
特別活動
への態度
質問37.私は部活動やホームルーム行事に楽しさを感じる。3.441.04
質問32.私は部活動やホームルーム行事を怠けないで真面目にやっている。3.530.99
質問33.私はこの学校の部活動にさそわれれば参加したい。3.371.15
質問21.私には楽しみにしている学校行事がある。3.201.15
教師から
の規則9
質問36.私は先生に説明された授業のマナーを守っている。3.380.83
質問18.私は黒板に書かれた内容をノートにきちんと写している。3.901.02
質問11.私は出された宿題は全部やっている。3.221.20
質問16.私は先生に説明された頭髪や服装等のきまりを守っていける。3.691.01
その他質問4d.私は同じクラスの人のうち声をかける人を意識してえらんでいる。3.040.98
質問5.今までとは全くちがう人間関係をつくれるので楽しみである。3.340.93
質問7.私は新しい友だちと将来のことや夢などについて話をする。3.061.06
質問9d.私は同じクラスの人に話しかけられてもどういう言いかたで答えればよい
か迷うときが多い。
3.501.06
質問10d.私には通学が予想よりも大変に感じている。2.791.26
質問14.先生にいつも、自然にあいさつをすることができる。3.171.01
質問15.私の将来の夢のためにやらなければならないことがはっきりしている。2.991.19
質問17.この学校の先生のうち、顔と名前がわかる先生の数がふえている。3.251.05
質問19.私は新しい友だちと校内のできごとについてよく話をしている。3.570.94
質問22d.私は授業を聞いていても分からないことがよくある。2.260.92
質問23.私は友だちに自分の成績のことを相談できる。3.380.99
質問24d.私は友だちといるよりも一人でいるほうが気持ちが落ち着く。3.291.03
質問25.教室の近くの席の人が私に話しかけてくれる。3.640.90
質問27d.私は無理をして相性の合わない人とは話さない。2.601.02
質問28.私は悪い成績を取れば進級できないことがあることを知っている。4.390.77
質問29.私の新しい友だちと通学経路を話題にしている。2.831.01
質問34.私はこの学校を卒業したらどのような進路の可能性があるか知っている。3.280.98
質問35d.私はこの学校でやっていけるか不安である。3.110.97
質問38d.私は1時間の授業の内容が多くて集中できない。2.710.90
注:dを付した項目は逆転項目である。



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