校内ネットワークへのアクセスポイントの設置とタブレット端末の登録

1 はじめに

 近年,教育におけるタブレット端末の活用が増えています。グラフ(図1)は,平成26年度末に文部科学省が実施した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」における「教育用コンピュータのうちタブレット型コンピュータ台数」です。平成27年の3月には15万台を超えるなど,今後,その数は更に増えると予想されます。タブレット端末を授業で利用するためには無線LANの環境が前提となっており,無線LAN環境の整備は必要不可欠です。そこで,校内ネットワーク環境を無線化することで,タブレット端末の接続を可能にし,誰もがタブレット端末を授業で活用できる環境づくりを目標に研究をしました。今回は,特別教室や普通教室にアクセスポイントを設置し,そのアクセスポイントにタブレット端末が接続できる無線LAN環境を構築し,アクセスポイントのセキュリティ対策や設定,端末の接続方法などについてまとめました。

教育用コンピュータのうちタブレット型コンピュータ台数
図1 教育用コンピュータのうちタブレット型コンピュータ台数 (文部科学省(2015)「平成26年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」より)

2 無線アクセスポイントのセキュリティ対策

 一般に学校で無線アクセスポイントを使用する際には,許可された端末以外のアクセスを制限するため,暗号化やアクセス制限の設定をします。無線アクセスポイントを使用した通信のセキュリティ対策として重要な設定は次の三つです。

 (1) 認証モード・暗号化

  利用するタブレット端末及びアクセスポイント双方が対応している認証モード・暗号化方式のうち,最もセキュリティの高いものを使用します。平成27年度現在,市販されている機器を利用する場合,WPA2-PSK(AES)が推奨されています。

 (2) アクセスポイントのステルス化(非ブロードキャスト化=識別名称の非表示化)

  アクセスポイントを初期状態のまま使用すると,アクセスポイントを識別する名称(SSID,ESSID/ネットワーク名)がタブレット端末の画面上に表示されます。アクセスポイントにステルス化の設定をすることで,タブレット端末に表示させないようにすることができます。校内ネットワーク内で,アクセスポイントにタブレット端末等を接続するためには,利用者がタブレット端末にアクセスポイントを識別する名称(SSID,ESSID/ネットワーク名)とパスワードを直接入力する必要があります。本体に備わっているプログラムを用いるとSSIDとパスワードは,任意に設定することができます。図2は,アクセスポイント本体に記載されているSSIDの例です。

アクセスポイントに記載のSSIDの例
図2 アクセスポイントに記載されたSSIDの例     

 (3) タブレット端末固有の番号(MACアドレス)をアクセスポイントに登録

  タブレット端末には,一台一台,個別の番号が付けられています(図3)。あらかじめこの番号をアクセスポイントに登録しておけば,登録された端末のみが接続できるようになります。

MACアドレスの例
図3 タブレット端末固有の番号(MACアドレス)の例

3 無線アクセスポイントの同時接続台数について

 市販のアクセスポイントは,家庭用と法人用の二種類があります。その主な違いは同時にアクセスできるタブレット端末やパソコンの台数です。家庭用のアクセスポイントは,一般に数台程度の接続を想定していますが,法人用は,数十台のタブレット端末を同時に接続できます。授業の形態など,利用台数に応じて選定してください。家庭用のアクセスポイントを利用して40人分のタブレット端末を利用する場合,動作が遅くなったり,全く接続できないというトラブルが発生したりすることがあります(図4)。

家庭用では40台同時接続は不可能?
図4 家庭用のアクセスポイントでは40台同時接続できない場合がある(イメージ図)。     

4 無線アクセスポイントの設定

 

  アクセスポイント導入時には,校内ネットワークに参加させるための設定が必要です。また,一般にアクセスポイント本体には,設定画面を表示するディスプレイや設定用のスイッチ類がないため,タブレット端末やコンピュータから設定を行います。設定画面は,Internet Explorerなどのブラウザや専用ソフトウェアに表示させることができます。

 (1) アクセスポイントを導入時の設定について

  タブレット端末やコンピュータからアクセスポイントの設定画面を表示させる方法と校内ネットワークに参加させるための設定方法は,次のとおりです。

  ア アクセスポイントの初期アドレスと同じネットワークになるようにタブレット端末のIPアドレスを設定します(図5)。

接続図
図5 アクセスポイントへの接続(イメージ図)

  イ ブラウザからアクセスポイントに接続して設定します。図6のようにブラウザのアドレス欄にアクセスポイントの初期アドレスを入力すると,アクセスポイントの設定画面が開き,設定が可能になります。

ブラウザのアドレス欄への入力
図6 ブラウザのアドレス欄への入力(Safariの画面)

  ウ アクセスポイントの設定が終わったら,アクセスポイントのIPアドレスを変更し,アクセスポイントと情報コンセントを有線接続します。既存の校内ネットワークに参加させるためLAN側(インターネット側)に適切にIPアドレスを設定します(図7)。

※校内でアクセスポイントを利用するためには,固定のIPアドレスをアクセスポイントに設定することが多い。

ブラウザのアドレス欄への入力
図7 校内ネットワークへの接続(イメージ図)

(2) アクセスポイントの設定例

 ここでは,Apple社製アクセスポイントとBuffalo社製アクセスポイントの設定例について紹介します。詳しい設定方法やここに紹介する機種以外のものにつきましては,各社の取扱説明書を参考にしてください。また,今回の設定例はタブレット端末(Apple社のiPad)から行っていますが,有線接続のパソコンからでも設定できます。

  ア Apple社製アクセスポイントの設定

  Apple社の場合はここで紹介する専用の管理ソフトウェアで設定できます。今回は別のネットワークに接続したタブレット端末に専用ソフトウェアをダウンロードしたものを使いました。次のアドレスからソフトウェアをダウンロードすることができます。

AirMacユーティリティのダウンロード先
iOS(iPhone/iPad) https://itunes.apple.com/jp/app/airmacyutiriti/id427276530
Windows https://support.apple.com/kb/DL1547?viewlocale=ja_JP&locale=ja_JP
Mac https://support.apple.com/kb/DL1664?viewlocale=ja_JP&locale=ja_JP

  (ア) 認証モード・暗号化の設定

  専用ソフトウェアの「ネットワーク」画面を開きます。

      (a)「ネットワーク」にアクセスポイントのSSIDを入力します。

      (b)「セキュリティ」は「WPA2」または「WPA」を選択します(図8)。

無線の認証モード・暗号化
図8 無線の認証モード・暗号化

  (イ) SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化(識別名称の非表示化)の設定

  SSID/ネットワーク名のステルス化については,図8に示した画面下部の「非公開ネットワーク」をオンにすることで,ステルス化ができます(図9)。

SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化
図9 SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化(識別名称の非表示化)

  (ウ) MACアドレスよるアクセス制限の設定

  MACアドレスによるアクセス制限は,「詳細」で設定します。

      (a)「アクセス制御」を「時間制限アクセス」に設定します(図10)。

      (b)「詳細」画面(図10)「時間制限アクセス」をタップし,開いた「新規エントリー...」画面より,設定したいタブレット端末のMACアドレスを入力します。MACアドレスとは,情報機器固有の識別番号です。

MACアドレスよるアクセス制限(1)
図10 MACアドレスよるアクセス制限(1)

      (c)「新規エントリー...」画面の「アクセス制限」をタップします(図11)。

MACアドレスよるアクセス制限(2)
図11 MACアドレスよるアクセス制限(2)

      (d)「曜日」は「毎日」,「時間」は「終日」に設定します(図12)。

MACアドレスよるアクセス制限(3)
図12 MACアドレスよるアクセス制限(3)         

      (e)Apple社製アクセスポイントは,端末ごとに細かい設定が可能です。曜日や時間帯,平日の授業時間帯のみアクセス可能にするなど,きめ細かい設定ができます(図13)。

MACアドレスよるアクセス制限(3)
図13 MACアドレスよるアクセス制限(4)

 イ Buffalo社製アクセスポイントの設定

  Buffalo社の場合,専用管理ソフトウェアで設定が可能です。付属のCDまたは次のページからダウンロードします。
専用管理ソフトウェアのダウンロード先(機種ごとに異なります。)
iOS(iPhone/iPad), Mac
Android, Windows
http://buffalo.jp/download/driver/index_wireless.html
  また,ブラウザ上で設定することもできます。今回はブラウザに設定画面を表示させて設定する方法を紹介します。ブラウザに管理画面を表示させるには,アドレス欄にアクセスポイントの初期アドレスを入力します。
※ルータを利用する時と,アクセスポイントとしての利用の時とでは初期アドレスが異なることがあるので,取扱説明書で確認してください。

  (ア) 認証モード・暗号化の設定

      (a)管理画面の「無線設定」の「基本(11*/*/*)」をタップすると「無線基本設定」画面が表示されます(図14)。

無線の認証モード・暗号化
図14 無線の認証モード・暗号化(1)

      (b)無線の認証モード・暗号化は,「無線の認証」,「無線の暗号化」で設定できます。「無線の認証」は「WPA2-PSK」(推奨)または「WPA-PSK」,無線の暗号化は「AES」に設定します(図15)。

 無線の認証モード・暗号化
図15 無線の認証モード・暗号化(2)

  (イ) SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化(識別名称の非表示化)の設定

  SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化は,「無線設定画面」(図16)の「ANY接続」の「許可する」に付いているチェックを外すことで有効になります。
SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化
図16 SSID,ESSID/ネットワーク名のステルス化

  (ウ) MACアドレスによるアクセス制限の設定

      (a)アクセスポイント管理画面の「MACアクセス制限」をタップします。表示された画面(図17)の「無線パソコンの接続」を「制限する」にチェックを付けます。

MACアドレスよるアクセス制限(1)
図17 MACアドレスによるアクセス制限(1)

      (b)アクセスできる端末のMACアドレスの登録方法は次の二つです。