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SNSのビデオ通話機能を利用したJAXA職員との交流
中学1年 理科・総合的な学習の時間「宇宙に学ぶ〜JAXA職員と語る会〜」の実践
東海市立上野中学校


   本校の1年生は,理科に対する興味・関心が高い生徒が多い。そこで,より深い理科の学習を希望する生徒によるサイエンスマスターチーム(以下,「SMT」)を中心に,他者と交流する学習の機会を設定し,生徒の探求心や洞察力を育み,まとめたり説明したりする力を伸ばしたいと考え,本実践に取り組んだ。
 一つめは,SMTによる他校との理科学習交流会の実践を行った。江南市立西部中学校と連携し理科の共同実験を行い,実験の予測や考察を伝え合うという実践である。伝える対象を意識させることで,課題に対する考察が深まり,その考えを的確に相手に伝えようとする姿が見られた(実践の詳細は,平成27年度江南市立西部中学校の学校間交流のページ参照)。
 二つめは,JAXA職員との交流を通して,宇宙について学ぶ実践を行った。SNSのビデオ通話機能を利用し,SMTの質問にリアルタイムに答えていただくという実践である。理科と総合的な学習の時間を関連させ,学年全体による学習とした。JAXA職員にはキャリア教育の視点からも話をしていただいた。

1 交流の計画

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時 期

内  容

6月下旬 SMTの募集,参加者(20名)決定
オリエンテーション
7月中旬 SMTへの事前指導
交流相手との打ち合わせ3回,通信テスト
8月上旬

理科学習交流会@(実験「2本のろうそく」の予測と考察の意見交換)

8月上旬  理科学習交流会A(実験「鉄球と磁石球」の予測と考察の意見交換)
11月下旬
〜1月下旬 
SMTによる事前調査(宇宙について)
11月下旬
〜2月下旬 
JAXA職員との打ち合わせ5回
 2月上旬 通信テスト
SMTによる運営リハーサル
2月中旬   「宇宙に学ぶ〜JAXAの職員と語る会〜」
2月下旬  振り返り,まとめ

2 交流の対象

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理科学習交流会
・本校1年生SMTメンバー20名
・江南市立西部中学校の希望した生徒13名
宇宙に学ぶ〜JAXA職員と語る会〜
本校1年生生徒143名
JAXA有人宇宙部門きぼうセンター職員1名

3 交流の実際

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(1)事前学習(11月下旬〜)
<SMTの活動>
 @宇宙に関する知識のレディネスチェック
 A小グループを編成し,チームの中で探求するテーマを決定
 Bチームのテーマに沿って,個人で学習を進める(情報収集)
 Cレポートを作成し,学年掲示板に掲示し,情報を学年に伝える
 Dチームで情報交換を行う(情報の集積と整理)
  (理科の授業の中で,SMTの活動や,宇宙・JAXAのことについて扱う)
 E調査しても分からなかったことについて検討し,JAXA職員への質問にまとめる
 FJAXA職員と語る会の運営
SMTの生徒による情報交換 学年掲示板による情報伝達 

(2)JAXA職員との交流(2月)
<使用機器>
 ・通信手段・・・SNSアプリ「Skype」
 ・学 校 側・・・パソコン,プロジェクタ(2台),大型スクリーン,集音マイク,
         ウェブカメラ,スピーカ,アンプ,マイク(2本),ミキサ,iPad,
         AppleTV,Wi-Fiルータ
 ・相 手 側・・・パソコン,ヘッドセット,ウェブカメラ


 交流授業は,学年の生徒全員が入室でき,大型スクリーンで二画面表示が可能な集会室で行った。右の画面には,JAXA職員とSkypeで通信している様子を,左の画面には,事前に送っていただいた補助資料などをiPadからAppleTVを経由して表示した。司会や発表の様子は,マイクスタンドの上部に設置したウェブカメラとスピーカから出る音を集音マイクで拾い相手に伝えた。
<SMTからの質問>
 自分たちが調査してきた内容を話した後,以下の質問をした。
・星は,どのようにしてつくられるのか?
・どうして星があるのか?
・一番最初のロケットのシステムは,どのようになっているのか?
・一番印象に残っているロケットは何か?
・宇宙での活動が,私たちの生活にどのように関わっているのか?
・宇宙飛行士が常に心がけていることは何か?
・宇宙船の名前は,どのように決めているのか?
・宇宙船は最高で何日間,宇宙に滞在できるのか?
・宇宙ステーションは,なぜ時速27,700kmで動くのか?
・どうして宇宙ステーションで実験をしているのか?
<JAXA職員の話>
 ご自分の体験やクイズなども交えながら,以下のような魅力あふれる話をしていただいた。
・恒星は主に水素でできていて,あとは寿命を迎えたちりとかガスとかが集まってでできている。
・衝突して引きつけ合って収縮していくと密度が高くなって星の中心が熱くなり,10万度くらいになると星は輝き始める。更に収縮して温度が高くなり,1,000万度くらいになると核融合が起こり水素が分解し始める。そうなると星としては出来上がり。
ロケットは,糸川先生がペン型のものに火薬をつめて飛ばしたことが最初になる。それでは遠くへ飛ばないので二段式にしたり,横にブースターをつけたりして今の形になった。
一番印象に残っているのは,HUAロケットだ。昨日,30号機が打ち上げられたところだ。このエンジン開発に10年前に携わっていて大変苦労したが印象に残っている。
イプシロンロケットは,iPadでも打ち上げられてしまう簡単なシステムのロケットで,HUBロケットは日本にある一番大きなロケット。10トンくらいのバスも打ち上げることができる。
・宇宙ステーションも実は宇宙船と同じでエンジンがあり,高度400kmが保てるようにしている。1998年から2024年まで,30年くらい使うことになっている。
・火星に行くには,どれくらいかかると思いますか?(ヒント:月はおよそ一週間かからずに行けます)@1か月,A5か月,B1年のどれでしょう。(答え:B)

 大型スクリーンに二画面表示 質問をするSMTの生徒
 集会室の様子  SMTの生徒の質問例
4 交流後の感想

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・自分の考えた質問に答えてもらえてうれしかった。どうして人間が宇宙のことを調べているか分かった。
・宇宙ステーションでどうして実験しているのか,これまでは分からなかったが,今回,実験の意義が分かった。話をしてくださった職員の方は,宇宙ステーション日本棟「きぼう」でのミッションを考えていると聞き本当にすごいと思った。
・宇宙船の名前は,最初JAXAの中では難しい名前が付けられているけど,一般の人から募集して決められていることを初めて知った。自分も応募してみたいと思う。
・宇宙について調べることは大変だった。でも,調べるうちに少しずつ宇宙を知ることができて,不思議に思うことも出てきた。自分で疑問をもって,その答えをJAXAの方から聞くことができて納得できた。
・宇宙旅行が近い将来できることを教えてもらった。今は最低1,000万円はかかるけど,将来は桁が一つ減るかもしれないと聞いたので,自分の将来お金があったら宇宙に旅行してみたいと思った。
・JAXAの方から,この仕事に就いたきっかけが中学校のときの先生の影響であると聞き驚いた。自分には夢はないけど,そういうきっかけに出会えるといいなと思う。
・今の自分にはそういう目標がもてるか分からないが,仕事をしている人にしっかりとした目標があるということを感じた。
5 成果と課題

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<研究の成果>
 今回の実践は,SMTの活動が中心ではあったが,学年全体で共有することによって,多くの生徒に宇宙への興味・関心や探求心をもたせることができた。SMTの生徒にとっては,調査した内容をチームで整理したり,JAXA職員に堂々と質問したりする経験を通して,まとめたり説明したりする力を向上させることができた。また,生徒は振り返りの中で,「宇宙への興味・関心が高まっただけでなく,自分の夢についても考えるきっかけになった」と答えている。魅力ある職業の方との交流を通して自己の将来について考えるよい機会となった。

<今後の課題>
 今年度は,インターネットを利用した交流学習の場を二度提供することができたが,こう
した学習機会を今後どれだけ多く提供できるかということが課題である。また,課題解決の機会を継続的に設定することで,生徒の探求心や洞察力を育み,まとめたり,説明したりする力のさらなる向上を図りたい。

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