愛知県総合教育センター研究紀要 第95集

  教科以外の教育活動の在り方と評価に関する研究
−マネジメントの理念を生かした取組−

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はじめに

 平成14年4月に小・中・高等学校の設置基準が施行され,各学校の教育活動について自ら点検・評価(いわゆる「学校評価」)を実施し,その結果を公表することが求められている。これは「説明責任」とともに「マネジメント」の考えに基づくものである。いわゆる「なべぶた」と評される教員組織では,管理職が行うトップマネジメントだけで改善を図ることは難しい。そのため,学校内の小グループが積極的に学校運営に携って改善に努めることが重要であり,すべての教職員がマネジメントの発想をもつ必要があることを浸透させる意義は高い。

1 研究の目的

 3年目の本年度は,教科以外の教育活動の内容充実と評価に置いていた軸足を,実践中に生じた困難点の克服を目指して行われた「組織マネジメント」に移すことにした。これまで,意識されていなかった改善の道筋(暗黙知)に焦点を当て,多様な教育活動の改善において応用可能なマネジメントの手法(明示知)として整理することが,幅広い教員の資質向上に寄与すると考えた。

2 研究の方法と内容

 研究協力校8校に対して,以下の三つの視点を考慮した総合的な学習の時間や特別活動の実践を依頼し,その結果に基づき有効性を検証する。

   @ 「目標に準拠した指導と評価」の考え方を教科以外の教育活動に取り入れることの有効性
  A 保護者等による評価を導入することの有効性
  B 組織マネジメントの考え方を意識することの有効性


3 実践事例 

【実践1】 評価シートとKJ法を活用した指導計画の改善
【実践2】 指導と評価・学習と評価の一体化及び組織マネジメントの手法を通して
【実践3】 人と人とのかかわり合いを育てる特別活動と評価
【実践4】 学校行事における目標に準拠した評価の研究
【実践5】 高等学校総合的な学習の時間の在り方と評価
【実践6】 特別活動(学校行事)での自己評価アンケートを活用した学級経営の在り方と評価及びポートフォリオの再開発
【実践7】 学校の特色を生かした総合的な学習の時間の実践・評価とその改善
【実践8】 「総合的な学習の時間」の指導の在り方と望ましい評価等に関する調査研究


4 研究の成果と課題 

(1)  「目標に準拠した評価」の有効性
 各学校の実態に応じた観点や評価規準・基準を設定して指導の成果を評価することで,行事等を継続可能な方法にするための留意点を掘り起こすことができた。
(2)  教師の形成的評価,児童生徒の自己評価の重要性
 指導の過程における形成的な評価が,児童生徒の志気向上に対して効果的であることが確認された。また,児童生徒の自己評価は,振り返りを通じて成長を促すことや,計画や指導の評価をする上で重要な資料となることが確認された。
(3)  保護者等に対する情報発信の有効性
 教科以外の教育活動の実状については,保護者に十分伝わっているとは言えないため,情報発信は好意的に受け止められた。外部評価を含めた学校評価に向け,情報発信や指導の在り方を真剣に考えることが一層必要になっている。
(4)   「組織マネジメント」の理念を生かした実践の有効性
 「組織マネジメント」の手法は,各学校における実践チームの形成に役立った。実践チーム単位で「組織マネジメント」の視点をもつことで,多様な教育活動の「目標に準拠した指導と評価及び改善」が初めて可能になると考えられる。