グループ・アプローチ一覧表
ライフスキル | ラボラトリー体験学習 |
構成的グループ・エンカウンター (SGE) |
||
学校グループ・ワーク・トレーニング (GWT) |
||||
目 標 | 1 自分の健康や環境を主体的により よくコントロールして,健康にとっ て良い選択をする機会を増やすこと ができるようにする主体(生活者) を作る。 2 子供たちが,心理社会的変化に対 する適応力を高め,身体的/精神的 健康を増進するための直面する課題 に対処するための方法を習得する。 | 1 個と集団とを統合する体験学習ある いは実存的対話者としての自分の生き 方を探る。 2 グループの中での"今,ここ"での人 間関係に気付きそれを主体的に生きる 体験を通して,人間関係の本質は何か 自己とは,他者とは,人間とは何か, 関わって生きるとはどういうことか, グループや組織とは何か,などの本質 を見極めると同時に,自己理解や自己 受容を深め,他者を共感的に理解し受 容する能力を高め,葛藤や対話的に生 きる態度を養い,グループ内に信頼関 係を形成していく能力を磨く。 | 1 個人の成長・集団の成長・人 間関係能力の向上 2 自分の良さ,他者の良さ,協 力するとはどういうことかに気 付く 3 グループの動きに対する感受 性を高め,把握する。「グルー ププロセス」を見る目を養うこ ともねらいとする 4 自分の姿に気付き,自らの態 度,行動を変容させていく。 | 1 体験的な感情を伴った気付き 【自己発見】による自己の感情 ・思考・行動の変容。究極的に は人間的成長を目的とする。 2 自己開示による感情交流 【ふれあい】 3 学校教育での目的 ・自己防衛しない援助的人間関係 をつくる。 ・あるがままの自己を、友達を受 容する。 ・生きる力、問題を解決する力を 培う心のふれあう人間関係づく り ・感情を豊かに表現させて、毎日 の生活の充実感を高める。 |
方 法 | 1 導入 2 説明(ミニレクチャー) 3 グループワーク 4 フィードバック 5 まとめ | 1 導入 2 実習 3 振り返り 4 分かち合い 5 コメント・小講義 | 【グループ作り】 1 課題とルールの説明 2 グループ活動【観察記録】 3 振り返りシートの記入 4 振り返りの話し合い 5 まとめ【フォローアップ】 *【 】は教師(ファシリテーター)の動き | 1 導入 2 ウォーミングアップ 3 イストラクション 4 エクササイズ 5 シェアリング 6 まとめ |
志 向 性 | スキル学習志向, 態度学習志向 | 態度学習志向(自己成長志向) | 態度学習志向 | 態度学習志向 |
役割関係志向 | 役割関係志向(社会変革志向) | 役割関係志向 | 感情交流志向(+役割関係志向) |
|
内 容 | ●X領域Iスキル T@意志決定スキル A問題解決(目標設定)スキル UB創造的思考スキル C批判的思考スキル VD対人関係スキル E効果的コミュニケーション・ スキル WF自己認識スキル G共感性スキル XH情動抑制スキル Iストレス対処スキル ●各領域前半部は自分自身にかか わるスキルで,後半部は他者と のかかわりに必要なスキル | ●自己概念や価値の明確化,聞くこと 話すことなどのコミュニケーション 過程,非言語活動による気づき,グ ループによる問題解決過程,リーダ ーシップ,葛藤処理過程,コンセン サスを求めての集団決定過程組織行 動など様々な分野にわたっての実習 がある。 ●本来のラボラトリーメッソッドによ る体験学習には4つの構成要素(@ 集中的なグループ体験,A構造化し た実習と振り返り,B小講義,C記 入用紙,チェックリスト)があるが 学校教育に取り入れているものはA BCである。 | 1 協力の仕方を学ぶもの 2 情報の組み立て方を学ぶもの 3 話し合いの仕方を学ぶもの 4 話し方,聴き方を学ぶもの 5 自分の長所や友達の長所に気 付くもの 6 野外で実施するもの | ●自己理解,他者理解,自己受容,自 己主張,信頼体験,感受性の促進 をねらいとして,それぞれ行動の 変容と人間的な成長(感受性訓練, 認知の変容)を促進するさまざま なエササイズ(集団学習体験)があ る。 @本音を知る (自己覚知) A本音を表現する (自己開示) B本音を主張する (自己主張) C他者の本音を受け入れる (他者受容) D他者の行動の一貫性を信じる (信頼体験) E他者とのかかわりをもつ (役割遂行) |
特 色 | ●子供たちの危機的状況を未然 に防ぐために,学校の教育環 境にライフスキル教育を導入 するWHOがまとめたガイドラ インに沿った取組 ●一定の学習(スキルトレーニン グ)をとおしてライフに必要 な社会的心理能力(コンピテン ス)を身に付け,向上させる。 ●問題解決,意志決定,情動対処 やストレス対処などの実践力を 身に付ける。 ●その後の人間形成や対人関係の 在り方・社会現象の理解など, 生きていく上で働くものとする。 ●JKYBはアメリカの健康財団が開 発したKnow Your Bodyプログラ ムをベースにして,日本版を開 発し,健康教育からのアプロー チが多い。@喫煙防止教育,A 性(エイズ)教育,B薬物やア ルコールなどの依存防止教育, C食物栄養教育として,「保健 体育科」,「家庭科」での実践 が紹介されている。 ●JIYD(Japan Initiative for Youth Development)はアメリ カのルーセントテクノロジー財 団が開発したLions-Quest「思 春期のライフスキル教育」プロ グラムを紹介し,一部の中学校 で,「総合的な学習の時間」で 実践されている。 | ●ラボラトリーメッソドによる体験 学習(人間関係トレーニング)は ,当初は企業人を対象にしたもの であったが,医療・福祉関係者, 学校関係者,生涯学習に励む市民 層にまでおよんでいる。 ●本来は,Tグループセッション, 理論セッション,実習セッション ,質問紙などのインスツルメント (道具)を用いたセッション4つ を全体のプログラムの構成要素と して加味するようにして実施され ているが,実習中心のトレーニン グに変形されながら,学校教育の なかに,取り入れられてきた。そ のうちの一つが「学校グループワ ークトレーニング」である。 ●体験からの学びを分析・一般化し ,仮説化・応用する前に,小講義 を設定する場合がある。これは, 自分や他者の行動を理解するため の認知的モデルを提供することに よって研修での気付きを,研修後 の日常生活の中に転移しやすくす る働きをもつ。ただし,価値観の 押しつけにならない配慮が必要で ある。 | ●振り返りをしっかり行う ●プラス面の気付きを重視, プラスのストロークをする ●気づきを文章化する ●GWTで気付いたことを日 常に生かす ●年間で計計画的に行う。 | ●One-ness―We-ness―I-ness という段階を踏んだエクサ サイズをプログラムする。 ●グループの大きさ,時間, ルールをきめて,構成する。 ●背景にある哲学 ・実存主義哲学 courage to be ・プラグマティズム:効率的 で効果的な方法を工夫する ・論理実証主義:論理と事実 を大切にする。 ・背景にあるカウンセリング 理論(折衷主義):現象学 ,論理療法,交流分析,ゲ シュタルト療法,内観療法。 |
参 考 文 献 | WHOライフスキル教育プログラム (川畑徹朗他,大修館書店) 健康教育とライフスキル学習―理 論と方法(JKYB研究会,明治図書) | 人間関係トレーニング (津村俊充他,ナカニシヤ出版) ファシリテーター・トレーニング (津村俊充他,ナカニシヤ出版) Creative Human Relations (津村俊光他,Press Time) | 学校グループワーク・トレー ンニング(横浜学校GWT研 究会・遊戯社) 新グループワーク・トレーニ ング協力すれば何かが変わる (横浜学校GWT研究会・遊戯社) | 「エンカウンターで学級が変わ る」小学校編、中学校編國分康 孝監修 「エンカウンターこんなときど うする」諸富祥彦監修など(以 上図書文化刊) 正・続「構成的グループ・エン カウンター」 國分康孝編 誠信書房 |
日本のピア・サポート・プログラム | 子供のアサーション・スキル教育 | ストレス・マナジメント教育 | ソーシャル・スキル教育 |
|
目 標 | 1 体験的なトレーニングを通して子 供たちの基礎的な社会的スキルを段 階的に育て,それによって子供たち 同士が支え合えるような学校環境を つくる。 2 学校のガイダンスやカウンセリン グサービスの幅を広げる。 | 1 他者の基本的人権をおかすことなく 自己の基本的人権のために立ち上がり 自己表現することを身に付ける。 2 アサーションとは何かを学ぶ。 3 自分の中のアサーションを育む。 4 アサーションを支えるものとして自 己尊重,他者尊重を確認する。 | 1 ストレス概念の理解を深める 2 ストレス反応に対する気付き 3 ストレス対処法の習得 4 ストレス対処法の活用 5 ストレス反応の軽減 6 日常生活の改善 | 1 適切な対人行動についての基本 的な知識を学ぶ。 2 他者の思考と感情の理解の仕方 を体験的に学ぶ。 3 自分の思考と感情に気付き,そ れを伝える方法を体験的に学ぶ。 4 人間関係の問題を解決する方法 を体験的に身に付ける。 |
方 法 | 1 ウォーミングアップ 2 主活動 3 振り返り | 1 ワークの実践(体験する) 2 振り返り(ワークの実践) 3 ワークで体験のまとめ (分析・概念化) 4 今後に向けたプラン作り (プランを立てる) | 1 参加体験型のグループによる 活動園 2 講義と体験的な活動を織り交 ぜる。 | 1 インストラクション 2 リハーサル 3 フィードバック 4 定着化 |
志 向 性 | 【領域1】スキル学習志向 【領域2】態度学習志向 | スキル学習志向 | スキル学習志向 | スキル学習志向 |
役割関係志向 | 役割関係志向 | 役割関係志向 | 役割関係志向 |
|
内 容 | ●【領域1】と【領域2】の活動を 通して「自己有用感」を獲得させ ることで「対人関係能力」の貧困 に由来する生徒指導上の諸問題を 克服する。 【領域1】 @傾聴,問題解決,対立マネジメン トなど他人を支援するのに必要な スキル A学業の手助け,問題解決などのよ うな支援を学校集団全体に提供す る。 B生徒のリーダーシップ,自尊感情 ,対人関係スキルなどを向上させ るもの 【領域2】 @自分よりも低学年の子供を「お世 話する」活動を通して,自己有用 感を育てる。 | ●第一領域: @攻撃的な話し方,A攻撃的な話し方, Bアサーションの三つの話し方につい て学ぶ。 ワークA ●第二領域: 自分の中のアサーションを育む。 ワークB ●第三領域: アサーションを支えるもの(自己尊重・ 他者尊重)を確認する。 ワークC (インタビューゲーム) ワークD (褒め言葉のプレゼント) ワークE (アサーティブな聞き方の実践) ●アサーションの考え方をしっかり理 解するためには ワークA,B,C,D, E を実施するが,アサーション概念 と関連させずに,学級の人間関係づく りや,活性化をねらうなら, ワーク C,D のみで実施することもできる。 (この場合,内容的にはほとんど構 成的グループ・エンカウンターと 同じである)など,さまざまな活 用の仕方がある。 | ●ストレスの概念を知る。 @ストレッサー A認知的評価 Bストレス反応 (心理的・身体的) Cコーピング ●実習 @自分のストレス反応に気付く Aストレス体験を振り返る Bストレスをグループ活動で振 り返る。 Cコーピングの方法を学ぶ ○アサーション ○論理療法 ○リラクセーション ○呼吸法 ○ソーシャルサポート | コミュニケーション・スキル 1 あいさつ 2 自己紹介 3 上手な聴き方 4 質問の仕方 受容・遊び参入スキル 5 仲間の誘い方 6 仲間の入り方 受容・共感スキル 7 暖かい言葉かけ 8 気持ちをわかっての働き かけ方 主張スキル 9 やさしい頼み方 10 上手な断り方 11 自分を大切にした伝え方 問題解決スキル 12 トラブルの解決策を考える。 |
特 色 | ●学校全体で取り組む「予防教育的 生徒指導」のモデル ●学級にとどまらず,学年,学校全 体を範囲に入れた「広がり」のあ るもの ●子供たちが,将来にわたり,どの ような集団に属そうとも好ましい 人間関係をつくり出せるようにと いう「見通し」をもって段階的に 取り組む。 ●【領域1】と【領域2】とからな る。 ●【領域1】は【領域2】の準備段 階としてなされる体験的トレーニ ングの部分。年長の子供を対象に する。【領域2】がうまく行くた めの「下地づくり」としてなされ る。 ●【領域1】だけを見ると,内容的 には構成的グループ・エンカウン ターとほとんど同じである。だか ら,SGEと同じ取り組みと考え るのは総計である。ピア・サポー トというからには【領域2】の学 校全体の取り組みが重視される。 | ●学級担任がキー・パーソンとして全 過程に積極的にかかわる。 (教師自身がアサーションのモデル になる。 @ワークの時間だけではなく, A授業中や, B日常的なやり取りの中で教師がアサ ―ティブな態度を示し, Cアサーションをよしとするクラス文 化を形成する) ●教師と子供が一緒に行う体験学習で ある。 ●子供同士のやり取りを引き出す。ア サーションを支えるもの(自己信頼, 相互信頼,アサーション権,認知,信 念)について理解を深める。 | ●グループ活動のなかでは自然 発生的に感情交流がみられる が,重点はスキル習得にある。 | ●扱う内容によっては感情交流もあ るし,グループ活動の中で自然発 生的に感情交流がみられるが,重 点はスキルの習得にある。 ●心を育てる方法を社会心理学のエ ッセンスを集大成して明らかにし たもの。 ●行動理論に基づく技法。 |
参 考 文 献 | ピア・サポートではじめる学校づく り 小学校編/中学校編/実践導入 編(滝充・金子書房) | 子供のためのアサーション(自己表現) スキルグループワーク (園田雅代他,日本精神技術研究所) アサーショントレーニング (平木典子,同上) | ストレスマネジメント教育 基礎編/展開編(北大路書房) | ソーシャル・スキル教育で子供が変 わる 小学校編 (小林正幸他,図書文化) |
共 通 点 | ●個人の成長、教育、対人関係の改善、組織開発などを目的として、集団の機能、課程、力動を用いるグループ・アプローチである。 ●全参加者が学習の場に積極的に参加して相互に学びあうプロセス(過程)を通してさまざまな気付きや発見をする体験学習の方法である。 ●体験学習の循環過程(@体験【Do やってみる】⇒A指摘【Look 観てみる】⇒B分析【Think 考えてみる】⇒C応用【Plan まとめる。 次を考える】)がある。ただし,学校教育で行う場合,多くの場合,Bまでが授業でできることである。Cの段階は担任が行動を観察して いて,フォローアップするという形になる。 ●体験学習の循環過程のうち,A〜Cが振り返りとかシェアリング,分かち合い,フィードバックなどといわれる過程である。 |