愛知県総合教育センター研究紀要 第96集

 地理歴史科,公民科における「思考力・判断力」を育成する学習指導と評価の在り方に関する研究

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1 はじめに


  現行学習指導要領において,「生きる力」及びその知的側面である「確かな学力」として表現されている新学力観は,観察力,資料活用能力,思考力,判断力などの「学ぶ力」の育成を求めている。とりわけ,「思考力・判断力」は,他の学習能力すべてと密接にかかわる中核的な能力であり,これをどのように育成するかは,具体的方法及び評価を含めて,まだ大きな課題である。

2 研究の目的

  生徒の学習意欲を喚起し,主体的学習を促し,「確かな学力」を育成するために最適な学習方法である,主題学習及び課題追究学習のより一層の充実は言うまでもないことである。今回は,主題学習及び課題追究学習を取り入れた授業以外の,平素の授業においてこそ,様々な工夫が必要であると考え,平素の授業における「思考力・判断力」の育成方法とその評価の在り方について研究することにした。

3 研究の方法及び内容

(1) 県立高等学校の地理歴史科・公民科の教員を対象にした「授業や評価に関するアンケート」の実施
(2) 育成すべき「思考力・判断力」についての考察
(3) (2)で明らかにした「思考力・判断力」を平素の授業において,生徒に身に付けさせる具体的方法及び評価場面・方法についての考察
(4) 以上の考察の結果を踏まえた授業実践と分析

4 実践事例

(1) ワークシートを見せ合う「思考力・判断力」の育成(世界史)
(2) 「思考力・判断力」を高める発問の工夫(世界史)
(3) 多面的に解釈する資料及びワークシートの活用(日本史)
(4) 発問を工夫して「思考力・判断力」を高める実践と評価方法(日本史)
(5) 統計地図作品の「見せ合い」,「話合い」の活用(地理)
(6) 客観的事実に依拠した思考法を獲得するための工夫(地理)
(7) 資料活用及び意見交換を通して「思考力・判断力」を育成する工夫(倫理)
(8) 表・グラフの読み取りのためのワークシートの工夫(政治・経済)

5 研究のまとめと今後の課題

 平素の授業においても,個人思考と集団思考とを組み合わせたり,多面的・多角的に考察させる場面を設定したり,真偽や価値の判断を迫る場面を設定したりすることで,「思考力・判断力」を育成させることができることが分かった。今後は,@限られた時間の中で,「思考・判断」する場面をいかに多く設定していくか,A生徒が「思考・判断」することに慣れるまで,いかに粘り強く継続的にその手法を学ばせていくか,B基礎的・基本的知識,技能の獲得・定着の場面と,それを活用しての「思考力・判断力」の育成の場面とをいかにバランスよく設定していくか,が課題である。

6 おわりに


 今回の研究成果の発表が契機となり,「思考力・判断力」の育成の指導と評価の工夫が,各学校で一段と活発になされることを期待したい。今後も各学校にとって参考となる具体的実践例を開発することに,積極的に取り組んでいきたい。