愛知県総合教育センター研究紀要 第96集
 特別支援教育コーディネーター養成に関する研究

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1 はじめに

 障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援を行うために,特別支援教育コーディネーター(以下,「コーディネーター」という)の果たす役割は極めて大きい。その業務は,校内支援体制の構築や外部機関とのネットワークづくり,教員研修の充実等多岐にわたる。
 本研究では,平成16年度に各教育委員会を通して,コーディネーターに関する調査を行った。そして,「コーディネーターの養成と校内支援体制構築に関するチャート」(当センター相談部特別支援教育相談研究室作成)を基に,その取組に関する研究協力校の実態調査を実施した。3年間の研究成果とともに,小中学校における実践事例を通して,コーディネーターの養成と校内支援体制の構築を効果的に行う方策について報告する。


2 研究の目的

 17年12月,中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」の答申を受け,18年6月,「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立した。この法の改正により,現在の盲・聾・養護学校は特別支援学校として,在籍児童生徒等の教育を行うほか,小中学校等に在籍する障害のある児童生徒の教育についても助言又は支援を行うよう努めることとなった。(特別支援学校のセンター的機能化)
 また,すべての小中学校において「特別支援教育コーディネーターの指名」と「校内支援委員会の設置」等が行われ,特別支援教育体制の確立が図られることとなった。本研究においては,その中心的役割を担うコーディネーターの役割と校内支援体制確立の方策を明確にしていく。


3 研究の方法

 小学校3校と中学校1校の研究協力校の委員と所員によって協議及び調査を行い,各学校の実情を考慮しながら,組織の構築やコーディネーターの働き等について明らかにする。

4 研究の内容

(1) 概要
16年度は所内研究として,コーディネーターに関する小中学校及び市町村教育委員会の意識と校内支援体制の進捗状況を調査した。この時点で,コーディネーターの指名,校内支援委員会の設置状況等,特別支援教育体制の在り方に地域間,学校間で大きな差があることが把握された。
17年度は,4つの研究協力校(小学校3校,中学校1校)が加わり,各学校の特別支援教育の在り方と校内支援体制に関する実態調査を行った。さらに,「コーディネーターの養成と校内支援体制構築に関するチャート」を基に,多岐にわたるコーディネーターの働きの中で,それぞれの学校の進捗状況や次年度に取り組む課題等について検討した。
18年度は,コーディネーターとして,校内支援体制確立に向けて取り組んだ成果を,発達障害があると思われる児童生徒及び周囲の児童生徒の変容,職員及び保護者の意識の変容などから検証すると同時に,より有効なコーディネーターの働きについての課題を明確にした。
(2) 実践事例
【実践1】は「専門家との連携調整役としての働き」,【実践2】は「養護学校との連携を生かした特別支援教育の在り方」,【実践3】は「職員の意識を高める特別支援教育コーディネーターの働き」,【実践4】は「通常の学級の担任として取り組む特別支援教育コーディネーターの役割」について紹介する。【実践1】〜【実践3】は小学校,【実践4】は中学校の実践である。

5 研究のまとめと今後の課題 

 発達障害に関する理解が進み,コーディネーターの指名と校内支援委員会の設置は軌道に乗りつつある。他方,コーディネーターの具体的な働きに関しては,地域によって温度差があり,二極化が進んでいるとも考えられる。
 今後は,特別支援学校のセンター的機能を活用しつつも,校内支援委員会の機能を充実させ,学校内での適切な支援内容と支援体制をつくり上げることが求められている。
 さらに,地域単位でのコーディネーターの連携協力体制を構築し,発達障害児童生徒への総合的な支援を図る必要がある。