野菜と果物に含まれるビタミンCの抽出実験
1 はじめに
 日本人の摂取不足となる栄養素は,カルシウムや鉄分といったミネラルに多くみられる。この中で,高
校生は鉄が不足しがちであり,貧血が起きやすい。ビタミンCは,鉄分の吸収を促進する効果がある。そ
の他にもストレスに対する抵抗力増進,コラーゲンの生成に関与,免疫力を高める,発がん物質を抑える
などの働きがあると言われている。この生命の保持に必要なビタミンCについて実験を通して,理解を深
める。「食育」指導の観点からも,実験・実習を料理教育にとどめずに,栄養学への興味を更にもたせる
ための一手段として指導の充実を図る。
2 実験の目的
 (1) 日頃よく口にする身近な野菜と果物に含まれるビタミンC量を測定し,比色表からそれぞれの食
  品の含有量を判定する。
 (2) 食品中に含まれるビタミンCの加熱による変化をじゃがいもを使って把握する。
3 準備  
実験器具
 電子天びん(クッキングスケール),ビーカー(100ml)
メスシリンダー,ガラス棒,ミキサー,包丁,まな板,ガー
ゼ,おろし金,ろ紙,レモン絞り器,試験紙,標準色比色
(比較)表,実験材料(ほうれんそう,ブロッコリー
(花),ブロッコリー(茎),大根,じゃがいも(生),
じゃがいも(ゆで),きゅうり,トマト,ゴーヤ,オクラ,
キウイ,レモン,桃,りんご,みかん,バナナ,ぶどう,
パイナップル,グレープフルーツ,清涼飲料水)
4 研究の方法
 (1) 下表のとおり,野菜と果物の希釈液を作る。

〔各材料の希釈液の作り方〕

食材 希釈液の作り方


じゃがいもをすりおろしているところ
ブロッコリー(花),じゃがいも(ゆで),ほうれんそう,トマト,きゅうり,オクラ,バナナ 各材料を10g計量し,水90mlを加え、ミキサーでよくかくはんする。(希釈倍率10倍)
ブロッコリー(茎),ゴーヤ,キウイ,りんご (キウイは皮をむいてから)おろし金ですりおろした材料を10g計量し,水90mlを加え,ガラス棒でかくはんする。(希釈倍率10倍)
じゃがいも(生),大根 材料をおろし金ですりおろし,ガーゼでこす。(原液使用)
レモン,グレープフルーツ,みかん レモン搾り器で搾ったレモン果汁10gに,水90mlを加え,ガラス棒でかくはんする。(希釈倍率10倍)
ぶどう,パイナップル,桃 ぶどうの皮をむき,ガーゼに包んで搾る。(原液使用)
清涼飲料水(ビタミンCが添加されているもの) 10ml計量する。
 (2) 100mlビーカーにろ紙をセットして,(1)の液をろ過する。
 (3) 試験紙の先端部分をろ紙に10秒間浸し,引き上げる。
 (4) 30秒後に発色したものと標準色比色(比較)表と照合し,ビタミン
  (Lーアスコルビン酸)の値(ppm)を読み取る。(資料1参照)
 
   資料1 ビタミンC(L−アスコルビン酸)の値を読み取っているところ
 (4)学習プリント(Word)に記録する。
5 実験結果
  下表のような結果になった。じゃがいもは,加熱・非加熱の比較をした結果,加熱によりビタミンCの損失が多いことが
実証された。資料2のように清涼飲料水には商品のラベル表示に見られる通り,ビタミンCが多く含まれていることが明示
された。
食品中に含まれるビタミンC(L−アスコルビン酸)の検出結果
ビタミンC量      食    品    名
  0ppm〜  50ppm きゅうり,トマト,りんご,桃,ぶどう
  50ppm〜 100ppm オクラ,じゃがいも(ゆで),みかん,
バナナ,パイナップル,ほうれんそう
  100ppm〜 200ppm じゃがいも(生),ゴーヤ,グレープフ
ルーツ,ブロッコリー(花),大根,キウイ
 200ppm〜 300ppm ブロッコリー(茎),レモン
 300ppm〜 500ppm     
 500ppm〜 1000ppm 清涼飲料水
       * 実験結果は参考資料として掲載する。正規の数値は必要に応じて他文献で確認していただきたい。
                             
   資料2 レモンとビタミンC含有の清涼飲料水のビタミンC(L−アスコルビン酸)量の比較                                         
6 研究のまとめと今後の課題
 実験を通して,ビタミンCが身近な野菜や果物にどのくらい含まれているか実証することができた。
生徒は予想を立てながら実験を行った。じゃがいもにはビタミンCは入っていないと予測した生徒が
多く,ビタミンCが含まれていることに驚いていた。
 サプリメントに関する学習からビタミンCが添加されている清涼飲料水についても調べてみたとこ
ろ,予想以上にビタミンCが多く含まれていたという結果に生徒は驚いていた。
 身近な食品を使い,ビタミンは生命の保持に重要な働きをしていることから学習意欲を高めるため
の教材として有効であった。実験を行うことは,未知のものと出会う感動を得て,自由発想をもって
知的好奇心を高める段階までもっていくことができると確信した。
 今後の課題として,ビタミンCの鮮度による比較や郷土の野菜(果物)のビタミンC量や,季節に
よるビタミンC量の変化についても実験を行うとよいのではないかと考えられる。
7 参考文献
 ○佐藤典子著 『N.SATOの生活科学実験講座@食と健康』 教育図書 2009年
 ○舛重正一監修 『栄養のキホンがわかる本』 新星出版社 2002年
 ○教科用図書 『フードデザイン』 教育図書
 ○教科用図書 家庭基礎 大修館
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