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ゼブラフィッシュの受精と発生

1 目的
  本実験は脊椎動物のモデル生物の中でも,最も手軽にかつ安価に発生の観察ができると考えられるゼブラフィッシュ胚の発生観察概要を紹介する。

2 ゼブラフィッシュ(=英語名;zebrafish,学名;Danio Rerio)について
  観察材料のゼブラフィッシュは,コイ目 Cypriniformes コイ科 Cyprinidae ラスボラ亜科 Rasborinae ダニオ属 Danio に属し,種名を ゼブラフィッシュ D. rerio という。体長4cmほどの小魚で,インド原産の熱帯魚である。観賞魚(ゼブラ・ダニオ,シマヒメハヤ)としても人気があり,いろいろな形態を持つものがあり,一般的には体軸に沿った白地に青い縞模様がある。成熟するとオスでは金色に輝くものがあり,メスは一般に腹部のふくらみが明瞭になる。ヒレの形状や模様は変異が多く,性別の判定は難しい。胚は透明で,発生が早く,ほぼ全ての器官を一日で形成し,発生過程の観察や,遺伝子変異体の観察に大変適した材料であると言える。

写真1
(上)オスは全体に金色がかり細みがかっている
(下)メスは菱形の体をしており,腹部がふっくらしている
写真2
 左から2匹目のメス(手前の大型個体)を追うオス


3 飼育
  飼育は約28℃,明期14時間,暗期10時間で飼育し,えさはブラインシュリンプや一般的な熱帯魚の餌を与える。腹のふくれたメスは1回の産卵で,直径2mm程度の卵を約10~20個産み,一日で50から100個産卵する。産卵後の2,3週間はほとんど産卵しない。メダカと違って卵はころころしており,水底に落ちていく。親魚が卵を食べてしまわないようにする工夫が必要です。親の飼育では水質について特に神経質になる必要はない。一般的な上面濾過装置を用いた水の循環と冬場にヒーターがあれば構わない。ヒーターで飼育している魚を冷やすと死んでしまうが,ある程度低温に慣らしておけば,冬場でもヒーターなしで飼育できる。

4 採卵
  ゼブラフィッシュのオスは腹部のふくれたメスを追い,腹部をつつくような行動をとる。メスの方はオスの追尾に対して振り切って逃げるような行動をとる。



(1) 生殖行動の観察
  オスとメスが泳ぎながら並行になり放卵,放精をする。卵は産みっぱなしで,底に落ちていく。このとき,親魚が卵を食べてしまうので,食べてしまわないような工夫が必要である。この場合はビー玉を敷き詰めて卵が食べられないように保護している。



(2)採卵
ア 親魚の飼育  
 たくさん採卵したい場合は,10日間ほど雌雄を分けて飼育する。産卵の観察は朝,雌雄核1匹を同じ水槽に入れることで行う。卵をたくさん(100個以上)採集したい時は,2L程度の水槽にメス3匹オス5匹などの組み合わせで前日の夜から同じ水槽に移し,翌朝卵を回収する。親魚が卵を食べてしまわないように,水槽の下にビー玉を3層くらい敷き詰め,潜り込めないようにしておくとよい。ビー玉をきちんと敷き詰めないと,潜り込んで圧死することもあるので注意する。
  

イ 胚飼育用のプレートの作成
 胚飼育用の水に3%,アガロースゲルを加え加熱し溶解する。厚さ5㎜になるようにペトリ皿に広げ固める。ストローで穴を空け,爪楊枝で穴の中身を取り出す。このとき,ペトリ皿の底に寒天が残っているようなら,爪楊枝や綿棒でこすってペトリ皿の底面を拭いておく。また,新しくきれいなペトリ皿を用いることで,きれいな顕微鏡像を見ることが出来る。特にペトリ皿の底(裏面)は机に置くときにこすれて直ぐに傷が付いてしまうので注意する。実体顕微鏡ではペトリ皿の傷まで見えてしまう。プレートの寒天の高さ程度まで胚飼育用の水を注ぎ,穴の中に胚を入れて観察する。



ウ 卵の回収  
 産卵後の卵の回収は,1mmメッシュの網に飼育水を流して行う。糞や餌の残りをくみ置き水でよく洗い流し,清潔な状態で回収し,胚飼育用の水に卵を移す。

エ 安価で簡便な卵回収方法
 安価な台所用品を用いて,映像のような卵回収器具を作った。幅10cm,奥行き7cm,高さ15cm程度の容器に,箸の水切り用のザルをセットしくみ置き水を入れ,雌雄のゼブラフィッシュを入れ,フタをする(空気穴を残すこと)。側面には吸盤が付いていて,飼育水槽に沈め側面に固定する。上面は空気が通るように,水面より高くしておく。



4 観察
  20時間を約1分で再生
ウェブカメラを顕微鏡の接眼レンズに押し当てテープで固定し,パソコンを用いて5分に1回間隔で自動コマ撮り撮影をした。(部分的に再生スピードの修正をしている)


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