研究実践編

【実践報告3】
進路意識を高め,学校生活に前向きに取り組む生徒の育成 − 学習指導カウンセリングとキャリア教育の実践を通して −
1 学級集団の状況(高等学校1年生 男子27人 女子13人)
 全体として,明るく,元気な生徒が多い学級であるが,物事に対する的確な判断力がやや欠けており,視野が狭い 
生徒も少なくない。人間関係づくりを,特に苦手とする生徒も数人いる。また,本校では2年生から文系と理系に分
けた類型別学級編成が行われるため,1年生2学期後半においてどちらの類型に進むか,決定しなければならない。
その選択に備え,教科活動を通しての学級内の対人交流を深める中で,生徒自身の将来への展望・決意を促して,進
路目標の設定や,その実現に向けての具体的な行動計画を立てさせたい。現在の学校生活が,将来につながるものと
いう実感をもたせ,自分の立てた行動計画に基づいて具体的な行動や,より意欲的かつ効率的に目標に取り組めるよ
う促す実践をした。

2 実践
 (1) 活動1「Toward World Cup」「Amusing Village」(P.81〜87 参照) 
   ア ねらい
 英語Tやオーラル・コミュニケーションTの授業で,「めざせワールドカップ」と「おもしろ村」の英語版エクサ
サイズを用い,英語を使って,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や能力を高めるとともに,互いに協
力する体験をすることで,人間関係や雰囲気をよくする。
    イ 活動の内容

@  問題解決に取り組む中で,英語を使ってコミュニケーションを図ろうとする態度や能力を高めるととも
 に,グループで活動している時の他人や自分の動きにも目を向け,チームワークづくりや,コミュニケーショ
 ンの過程を学ぶことをねらいとすることを説明する。
A  グループでリーダーを決め,グループごとに着席するように指示する。情報紙を1セットずつ配り,一
 人に一枚ずつ裏向きに配るように指示する。
B 「グループへの指示書」を配り,読み上げる。 情報は口頭のみで伝えることができ,グループの他のメ
 ンバーに手渡したり,見せたりしないことを徹底し,情報紙が全員にわたったことを確認し,開始を告げ
 て時間を計る。
C  所定の時間が来たら,グループの作業が途中であっても打ち切る。メンバーの誰もが説明できるかどう
 かを確認する。各グループから結果とそれに至った過程を報告してもらう,そのあとで正解を発表する。
D 振り返り用紙を配り,各自記入する。振り返り用紙に各自が記入したことを分かち合いながら,この課
 題達成の過程で起こったこと,そこから学んだことをグループごとに話し合う。
  ウ 参加者の様子  高校1年生の7月という時期でもあり,どちらかといえば英語が苦手な生徒が多い中で,どれだけのことができる かとても不安であった。生徒たちは,英語を使って行うということで,最初は戸惑いも見られた。まず,辞書を使っ ても教員に質問してもよいので,できる限り英語を使うように努力すること,それでも,どうしても理解することが できず,英語で表現することが困難だと思われる場合は,日本語を使用してもかまわないことを伝えた。それにより, 英文の指示書や情報カードを読み取るために辞書で調べたり,生徒同士で教え合ったり,外国人語学講師(NESA) のアドバイスやヒント等もあり,普段あまり話さない級友との交流も深まり,楽しい雰囲気の中で普段の授業よりも 英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が見られた。以下は振り返りの主な結果である。
あなたはどの程度,自分の言いた
いことが言えましたか?
1(全く言えなかった)
4(充分言えた)
20.0%
26.0%
28.0%
26.0%
あなたはどの程度,人の言うこと
を聴くことができましたか?
1(全く聴けなかった)
4(充分聴けた)
10.0%
16.0%
38.0%
36.0%
グループについて参加している実
感がありましたか?
1(全くなかった)
4(充分あった)
10.0%
20.0%
38.0%
32.0%
この活動は楽しくできましたか?
1(つまらない)
4(とても楽しい)
10.0%
15.0%
37.0%
38.0%
あなたは,グループ作業の中でどのような行動をとり,どのような役割を果たしたと思いますか?

・リーダーとしてみんなの意見をまとめ,整理して紙に書いた。
・課題達成のためにたくさん意見を言った。情報を組み合わせて答を出した。 
・自分の情報カードを全員によく理解させる等,自分のやらなければならないことをやった。
・情報カードを読むとき,途中でつかえないように心掛けて頑張ってカードを読んだ。 
活動の中で他のメンバーはどのような動きをしていましたか?気付いたことを列挙して下さい。

・生徒Aが,しっかり聞いてまとめ,分かりやすいように助けてくれた。英文の説明をしてくれた。
・生徒Bが,みんなの意見をメモして頑張っていた。
・生徒Cが,リーダーの役割をしっかりと果たしてくれたので,他の人もみんな頑張っていた。
・途中で投げ出して,あまり手伝わなかった人がいた。
・生徒Dが英単語をたくさん知っていて助かった。みんな積極的,全体的にすばらしい。
・生徒Eは自分の意見を押し通していた。生徒Fが英語を教えてくれたので助かった。
・みんな辞書を引いたり,協力しあって問題に取り組んだ。
今後チームで仕事をする時に,自分が課題としたいことにはどのようなことがありますか?

・役割を見付けて自分から取り組む。
・リーダーとしてみんなの意見をもっと上手にまとめる。
・何事もグループで協力することが大切。
・もっと相手の意見を聞くことや,もっと意見を言うこと。
その他,この活動で感じたことがあれば書いて下さい。

・いろいろなことに積極的に参加する。たくさん意見を出す。
・自分が,こんなに英語ができないとは思わなかった。もっと英語を勉強する。
・指示書や,情報カードをしっかりと訳せるようにする。 
・たくさんある情報を整理したり,集中することが大切だと思った。              
・単語を並べるだけでも,たくさん話せて,とても楽しかった
・日ごろは,話せない人と話せたし,いつもより楽しく英語を使うことができた。
  エ 課題  振り返りの結果から,お互いに協力する体験をすることで,クラスの人間関係や雰囲気を良くするというねらいは, かなり達成できたのではないかと考える。教科活動の面から考えると,英語を使って,積極的にコミュニケーション を図ろうとする態度や能力を,活動を通してより効果的に高めるのがねらいであったが,全体としてよく取り組んで いた。  振り返りの中で「あなたはどの程度,自分の言いたいことが言えましたか?」の問いに対して,20%が全く言えな かったと回答しているのは,グループワークに消極的というよりも,英語力としての問題,つまり英語が思うように 話せなかったからだと考えられる。本校では,どちらかといえば英語が苦手な生徒が多いことや,高校1年生の7月 上旬頃で,語彙(い)数や表現力も不足していることもあり,知っている単語を並べて,グループの中で,なんとかし て,英語で意見を述べようとしているだけでも,よく頑張っていると評価できる。また,英語力のある生徒でも,英 語をコミュニケーションの手段として,自分の言いたいことを伝える訓練が不足しており,まだそこまでのレベルに 到達していないというのが原因のようである。  生徒の振り返りにもあったように,今回の活動をしたことで,コミュニケーションの手段として英語を使うという 体験をして,自分の言いたいことがうまく相手に伝えられなかったことに対して発奮し,もっと英語を勉強する意欲 をもつようになった生徒もいた。このことは,積極的に英語学習に取り組むためのいい刺激になったと思われる。  しかし,英語が苦手な生徒にとっては,いつも以上に精神的な負担がかかったようである。また,英語力があって も,グループによっては英語で情報を組み合わせて整理するという作業に飽きて投げ出した生徒も二,三人いたよう である。             こうしたことから,普段の授業をもっとコミュニケーションを意識したものにするということが,いかに大切かと いうことを再認識することができた。また,活動前に,授業と同様にヒントを与え,単語や語句の解説をしておくと ともに,活動の進行がしやすいような段取りをして,英語やコミュニケーションを苦手とする生徒に支援や指導をす る必要があると感じた。  (2) 活動2 「それって どんな自分?」(P.88〜91 参照)  ア ねらい  ワークシートに沿って職業を選択することで分かってくる自分の個性について考える。職業が自己表現のひとつの 方法であることを学ぶ。生徒自身がどのようなキャリア・アンカー(自分の選ぶ職業の中でどうしても譲れない大事 にしているもの)をもっているのかを探ることで,進路目標の設定や,将来を展望させる。 イ 活動の内容

@  ワークシートTに挙げた職業の中から自分にフィットする職業に○,フィットしない職業に×,どちらで
 もない職業に△を付ける。
A  分類した職業を見ながら,自分で感じたことや気付いたことを記入する。
B  八つのグループの説明をした後,ワークシートUに各項目で印しを付けた職業のグラフを書き,色分けを
 する。
C  ワークシートTとワークシートUのグラフから感じたことを記入する。
D  全部の作業が終わったら,四〜六人のグループで振り返りをする。
  ウ 参加者の様子  9月上旬のLTの時間を利用して実施した。ウォーミングアップとして,Life Line(人生曲線)の活動を実施した。 黒板に一本の直線を書き,これが誕生から死ぬまでの一生を示す Life Line(人生曲線)として,左端に0を書かせ,右 端には自分の死亡予想年齢を書かせた。仮に80年生きるとしたら,右端には「80」と書かせて現在の位置を線で区切ら せた。それから,教員が自分の人生での出来事を例として挙げた後,これまでの人生の出来事やこれからの人生に起 こることを2分ほど考えさせた。そして,その2分間で考えたことを,Life Line の下に箇条書きで書かせた後で, 1分程度の振り返りをさせた。大きな夢を描いたり,現実的な未来を考えたりするうちに生徒たちの気持ちがリラッ クスしてきて,クラス全体が次の活動に取り組むのによい雰囲気になった。  この活動では,時間が実質20分程度しかとれなかったので,グループでの十分な振り返りができなかった。しかし, これから類型選択の決定をしていく少し前の時期ということもあり,予想以上に真剣に取り組んでいた。 ワークシートT,Uでは,次のような気付きや,振り返りがあった。

・建築などは好きだが,小さな子にかかわることや芸術的なことは苦手だと分かった。
・いろいろな物を作ったり,研究することに関する職業が多い。
・やりたいことはバラバラだけど,特にやりたいものは開発や研究などがやりたい。
・自分のやりたいものがまとまっていない。フィットするものが少ない。
・以前よりもはっきりと決断することができた。福祉系の仕事がやっぱりやりたい。
・人の上に立ったり,組織とかは自分に合っていないと思った。
・物を作ったり,創造的な仕事が向いていると思った。
・プロジェクトを実行する仕事がしたい。
・共通点は,「人とかかわる」ことに気が付いた。人とかかわることがやりたいのかなと思った。
・やりたいこと,やりたくないことがはっきりした。
・卒業後の進路は考えるけれど,その先の人生についてはあまり考えたことがなかった。
振り返りからも分かるように,生徒たちはこれまで気付かなかった自分のキャリア・アンカーを知ることができ た様子である。類型選択に向けて,自分が希望する類型と進路希望とがきちんと結び付いて自信を深める生徒や, 自分のもつキャリア・アンカーから改めて進路や類型を考え直すきっかけができた生徒もいたようである。   エ 課題  これまで,多くの生徒は将来について考えることなく,漠然と毎日を送っている。そのためか,これからの人生で 社会と自分がどうかかわるかを考えたり,職業の種類や内容についての知識・理解がほとんどなかったりする。まし てや,どんな職業が自分の適性に合っているかをはっきりさせたり,自分にとって本当にやりがいのある仕事は何か とか,自分が関心をもち理想を描いている仕事が何かということを考えたりすることは全くないといってよいのが現 状である。  そうした中,生徒たちが自分のキャリア・アンカーをある程度知り,これからの類型選択の時期に向けて,単に卒 業後の進路先だけではなく,将来について考えるようになったことは,大きな意義がある。多くの生徒が,あまり自 分の将来を考えていないことを踏まえて,これからの人生で社会とどうかかわるかを考え,卒業後の進路情報の提供 だけではなく,将来的な職業の種類や内容についての理解を深めさせる進路指導を考え,実施していきたい。  (3) 活動3「LAC(生活分析的カウンセリング)法を活用した定期考査対策」(P.92〜99 参照)   ア ねらい 生徒自身にこれまでの自分の生活を振り返らせ,自分の行動目標を具体的に考えさせる。そして,それが実現可能 かどうか,また,その必要性について吟味させる。その作業を通じて,今の自分にとって何が最も重要なのか,何を 優先にすればよいかをはっきりさせて,自分の目標に向かって行動を起こさせることを目的とする。  本校では,2年生から類型に分かれるため,その類型選択の決定に大きく影響する2学期中間考査に向けて,LA C(生活分析的カウンセリング)法を使い,学習計画を立てさせ,将来の進路希望の達成に向けての学力向上への援 助をする。  イ 活動の内容

(ア) LAC表の作成
@ 付箋(せん)紙を一人20枚程度,「LAC法による定期考査対策」,「LAC表」,「学習計画表」を配
 布する。
A 付箋(せん)紙に,定期考査までに各教科でやらなければならないこと,やりたいと思っていることを具
 体的に一個ずつ書き入れる。付箋(せん)紙の右側には,各項目のN(必要性),P(可能性),M(平均)
 の数値を書き入れる。
B 各教科ごとにM(平均)の高い順にLAC表に付箋(せん)紙をはる。
(イ) 学習計画表の作成
@ 定期考査の時間割,行動予定,部活動予定,その他の予定の欄に必要な事を記入する。
A LAC表の付箋(せん)紙の中で全体を見て最も重要と思われる二つを選び,学習計画にはっておく。その
 際,科目名が分からなくならないように記入する。
(ウ) 提出
@ 付箋(せん)紙をはった「学習計画表」を,担任の指定した日時に提出させる。
A 担任は,提出された「学習計画表」をすぐに返却して,生徒は自宅の目に付きやすい所にはっておくよう
 に指示する。
B 達成できたものには,赤ペンで○印をつけるように伝える
(エ) 再提出 
 定期考査の成績順位が出たら,「定期考査の結果と反省」を配布し,振り返りをさせて「学習計画表」とと
 もに提出させる。次回の定期考査の計画を立てる時,生徒に返却する。
  ウ 参加者の様子  今回,初めての試みでもあり,予想したとおりはじめのうちはLAC表,学習計画表作成をするのにかなり面倒に 感じる生徒がほとんどであった。しかし,類型選択にもかかわる定期考査一週間前ということもあり,真剣に取り組 んでいた。作成後は,やるべきことがかなり明確になったようである。以下は生徒の振り返りである。

・とても面倒だったが,LAC法,学習計画表を熱心に作った。
・計画を立てた後は,自分のやるべきことがはっきりした。
・頭の中で考えているだけでなく,目で見て重要なことが何か分かりやすく実行しやすかった。
・やるべきことは,すぐやろうとした。
・達成したものと,まだできていないものがはっきりしたのがよかった。
・自分の能力や,時間に合わせてできるのはよい。
・以前よりは,学習への取り組みが意欲的になったと思う。
・今後も計画を立てて考査に向けて勉強したい。
  エ 課題         LAC表や学習計画表の作成については,成績上位の生徒は,比較的短時間でLAC表,学習計画表の両方ともL Tの時間内に作成し,提出することができた。しかし多くの生徒,特に成績下位の生徒にとってはかなり面倒な作業 のようであった。ここでのポイントは,何が重要で,何を優先するべきかが判断できるかどうかである。この点につ いては,個人面談をしたり,教科担当に勉強のアドバイスをもらいに行かせたりするなどの適切な助言を行うことに よって,より効果をあげることができると思われる。

3 効果と課題
 (1) 効果  
  ア 活動1 「Toward World Cup 2006」,「Amusing Village」
 英語の教科活動の中には,構成的グループ・エンカウンターと共通するような活動もあり,そうした点を活用して,
英語を使って,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や能力を高めるとともに,互いに協力する体験をす
ることで,人間関係や雰囲気をよくするというねらいを達成することができた。これは,ホームルームの時間などが
とりにくい高校現場においては,教科の活動も同時に行うことができ効果的である。
  イ  活動2 「それって どんな自分?」
 この活動だけから,将来の目標がはっきり決定できるようになって,進路目標が明確になったとはいえない。しか
し,自分のキャリア・アンカーが何かに気付いたり,特に将来は何になりたいかは分からないがもっと将来について
考えた方がいいという自覚をもったり,何とかしければならないという気持ちになったりし,自己の進路を考えるた
めの一つのいい機会となった。
    ウ 活動3 「LAC(生活分析的カウンセリング)法を活用した定期考査対策」
  LAC法は,生徒一人一人の生活行動全体をよく考え,分析し,どのようにこれから行動するかを援助・助言する
のがLAC法の基本である。また,現在の生活行動に重点をおいて,生徒自身が主体的に分析することを重視してい
る。そして,生徒自身が,自分の行動を見つめ直して,自分の取るべき行動の必要性と可能性の二方向から検討を加
えて得点化し,数量化することにより,課題が明確化される。これまでは頭の中だけで考え,ただ漠然と行っていた
定期考査対策の勉強を,付箋(せん)紙と表を使い,「やるべきこと」,「重要性」,「優先順位」等を視覚化するこ
とにより,生徒は,今何をやらなくてはいけないのかを明確化できた。その上さらに,目標を達成する成就感も得る
ことができるので,学習に意欲的かつ効率的に取り組むようになった。
 結果としては,1学年6クラス240人で,LAC法を実施したクラスでは,科目数が同じ1学期中間考査の成績結果
の学年順位と今回の2学期中間考査を比較すると,40人中の28人が学年順位を向上させた。そのうち学年順位で40番以
上も成績が向上がった生徒が11人,80番以内の人数は9人から20人に増加した。また,200番以降の人数は7人から4人
に減少した。また,各教科の平均点は,1学期中間考査ではほとんどが学年平均点より下だったが,2学期中間考査で
は,すべての科目において,学年の平均点を上回ることができた。    
 今回のLAC法により,これまで定期考査前には学習計画を立てなかった生徒が,自分で目標を立てて学習計画を作
成し,自分の力でその計画を実行し,その目標を達成できるということを体験したことは,生徒に学力向上の面でプラ
スになっただけでなく,今後の様々な面において活動していく場合においても大きな自信となったと思われる。 
 (2) 課題
  ア 活動1 「Toward World Cup」,「Amusing Village」
 英語という教科の中で自然なコミュニケーションを求めると人間関係が良好になり,これまでよりも「積極的にコミ
ュニケーションを図ろうとする態度や能力を高めることを」をねらいとした活動を考えていきたい。人間関係や雰囲気
をよくするというねらいと同時に,教科活動も充分に展開でき,準備する教員には負担が少なく,英語指導助手も参加
でき,生徒にも取り組みやすいものを工夫し,実践をしていきたい。
  イ  活動2 「それって どんな自分?」
 キャリア・アンカーは,職業経験を積んでいく過程で変化し,最終的に一つに統合されていくので,どのようにその
選択をするのか,教員だけでなく,卒業生,保護者,外部講師などを活用して,生徒に将来の進路や職業を展望させる
のもよいのではないかと考える。また,ワークシートに挙げられている職業についても,その内容をよく知らない生徒
も多いので,具体的な紹介ができるようにしていきたい。
  ウ 活動3 「LAC(生活分析的カウンセリング)法を活用した定期考査対策」
 LAC表,学習計画表の作成に時間がかかり,苦手な教科では何をすべきかがよく分からなかったり,やるべき項目
が多すぎてかえって意欲を喪失したり,作成が面倒であると訴える生徒もいた。こうした面を改善するには,担任が個
人面談や教科担当との協力して助言を行うとともに,LAC表,学習計画表作成の簡素化の工夫も必要である。
 生徒の進路目標を実現する大きな要素の一つは,やはり教科の力である。いかに学力を付けさせるかを念頭に置き,
定期考査対策を中心に,今後はさらに長期的に継続できるLAC法の活用方法を検討し,実践をしていきたい。
 最後に,これまでの活動の全体を通して考察してみたい。これらの活動の目的は,教員として,自分の教えている教
科の教科活動を通して,生徒の「豊かな人間性」や「生きる力」をはぐくむことである。どの活動においても,生徒が,
自分でこれからの生き方を決めて人生を生きていく上で,次々と直面するであろう課題に対して,自らの意志と責任で
主体的に立ち向かい,解決していくことを考えている。生きていくための意欲を喚起するための援助や指導として,こ
れらの活動が,とても有効な手段の一つであると考える。
 主体的に生きる意欲をもつためには,自分のことを知ると同時に,対人関係においてうまくやっていけるという自信
をもつことが第一歩である。これは,良好な友人関係の中で,他者への貢献を感じることや自分が人の役に立つという
自信が,自分で進路を決定しようという意欲の高揚につながることを意味している。


4 まとめ
 今回は,4月当初からの学級づくりがとても大切なことを改めて実感させられた。4月から人間関係の形成能力を高
める活動をじっくり実施していたら,今回のグループ活動もスムーズにいき更に効果的な活動となったであろう。しか
し,高校1年生の4月においては,そのための活動をする時間がなかなかとれないのが現状である。4月に実施される
新入生オリエンテーションの中に,このような学級づくりのための活動のための時間設定が可能となるように,学年や
学校全体で取り組むことも考えていきたい。
 教科の授業については,普段の教科活動の中でグループ形成ができてきたのがよかった。人間関係を形成するために
は,コミュニケーションのスキルを身に付けることが大切である。英語科は,「積極的にコミュニケーションを図る態
度を育てる」ことを目標としているので,人が話すことをよく聴いて理解し,自己の考えを意識化し,上手に自己を他
者へ伝えていくことが,今後の人生を生きる上でも役に立つことであろう。教科内のこのような活動を,一年を通して
実施していくことによって,よりよいクラスができるであろう。
 高校生は,純粋な人間関係づくりのための活動に抵抗を示す者が少なくないが,今回の活動は,普段の教科活動,将
来の職業選択を考えさせる活動,そして,考査対策の学習計画表づくりという活動を通してのグループ活動であるため,
そうした抵抗感がとれたようである。また,人間関係づくりであるということを意識せずにできるので,高校生にはよ
く適合した活動といえる。高校生には友人関係から得られる自己肯定感とともに,学習活動における自己効力感も重要
である。LAC法のような学習指導を通して,さらには,その活動の中で,グループで話し合わせることによって,グ
ループ形成をする方が,高校生としての発達段階にあっていると思われる。教科学習への意欲向上にもつながると考え
る。
 「それって どんな自分?」では,将来の職業選択を考えさせ,生き方を考えさせる活動によって,自分が何を大切
にし,何に価値を置いているか,ということを生徒に気付かせることが大切である。なぜなら,自分がどんな価値観を
大切にして生活しているか,自分のキャリア・アンカーは何であるかを知っていれば,「自分はこういうことを大切に
したいから,その方向へ進みたい」と進路の決断をするための指針を形成することができるからである。
 また,進路決定に関して高校生の抱える悩みとして,「現在,自分が何をしたらよいのか。何を目指したらよいのか。
自分に向いている職業(仕事)は何か。目標を実現するための方法はどのようにしたらよいか」などが挙げられる。こ
うした悩みを解決するためには,社会にはどのような仕事があって,自分にはその中のどれが向いているのか知ること
も大切である。また,社会にどのように参加していくのかということを考え,自分と向き合う過程が必要である。そし
て,生徒に社会とのつながりを考えさせる活動は,高校生という発達段階にある生徒にとっては必須といっても過言では
ない。


<参考文献>『Toward World Cup 2006』http://www.nanzan-u.ac.jp/~tsumura/kyouzaikoukai/kyouzaikoukai.html
柳原 光「おもしろ村」『 Creative O.D.』 第4巻 (プレスタイム 1985)
田島 聡 『エンカウンターで進路指導が変わる』P88(図書文化 2001)
佐藤祐子『開発的カウンセリングを実践する9つの方法』(ほんの森出版 2003) 
松原達哉『生活分析的カウンセリングの理論と技法』 (培風館 2003)