(1) 活動1「Toward World Cup」「Amusing Village」(P.81〜87 参照)
ア ねらい
英語Tやオーラル・コミュニケーションTの授業で,「めざせワールドカップ」と「おもしろ村」の英語版エクサ
サイズを用い,英語を使って,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や能力を高めるとともに,互いに協
力する体験をすることで,人間関係や雰囲気をよくする。
イ 活動の内容
@ 問題解決に取り組む中で,英語を使ってコミュニケーションを図ろうとする態度や能力を高めるととも
に,グループで活動している時の他人や自分の動きにも目を向け,チームワークづくりや,コミュニケーショ
ンの過程を学ぶことをねらいとすることを説明する。
A グループでリーダーを決め,グループごとに着席するように指示する。情報紙を1セットずつ配り,一
人に一枚ずつ裏向きに配るように指示する。
B 「グループへの指示書」を配り,読み上げる。 情報は口頭のみで伝えることができ,グループの他のメ
ンバーに手渡したり,見せたりしないことを徹底し,情報紙が全員にわたったことを確認し,開始を告げ
て時間を計る。
C 所定の時間が来たら,グループの作業が途中であっても打ち切る。メンバーの誰もが説明できるかどう
かを確認する。各グループから結果とそれに至った過程を報告してもらう,そのあとで正解を発表する。
D 振り返り用紙を配り,各自記入する。振り返り用紙に各自が記入したことを分かち合いながら,この課
題達成の過程で起こったこと,そこから学んだことをグループごとに話し合う。 |
ウ 参加者の様子
高校1年生の7月という時期でもあり,どちらかといえば英語が苦手な生徒が多い中で,どれだけのことができる
かとても不安であった。生徒たちは,英語を使って行うということで,最初は戸惑いも見られた。まず,辞書を使っ
ても教員に質問してもよいので,できる限り英語を使うように努力すること,それでも,どうしても理解することが
できず,英語で表現することが困難だと思われる場合は,日本語を使用してもかまわないことを伝えた。それにより,
英文の指示書や情報カードを読み取るために辞書で調べたり,生徒同士で教え合ったり,外国人語学講師(NESA)
のアドバイスやヒント等もあり,普段あまり話さない級友との交流も深まり,楽しい雰囲気の中で普段の授業よりも
英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が見られた。以下は振り返りの主な結果である。
あなたはどの程度,自分の言いた
いことが言えましたか? | 1(全く言えなかった) | 2 | 3 | 4(充分言えた) |
20.0% | 26.0% | 28.0% | 26.0% |
あなたはどの程度,人の言うこと
を聴くことができましたか? | 1(全く聴けなかった) | 2 | 3 | 4(充分聴けた) |
10.0% | 16.0% | 38.0% | 36.0% |
グループについて参加している実
感がありましたか? | 1(全くなかった) | 2 | 3 | 4(充分あった) |
10.0% | 20.0% | 38.0% | 32.0% |
この活動は楽しくできましたか?
| 1(つまらない) | 2 | 3 | 4(とても楽しい) |
10.0% | 15.0% | 37.0% | 38.0% |
あなたは,グループ作業の中でどのような行動をとり,どのような役割を果たしたと思いますか?
・リーダーとしてみんなの意見をまとめ,整理して紙に書いた。
・課題達成のためにたくさん意見を言った。情報を組み合わせて答を出した。
・自分の情報カードを全員によく理解させる等,自分のやらなければならないことをやった。
・情報カードを読むとき,途中でつかえないように心掛けて頑張ってカードを読んだ。 |
活動の中で他のメンバーはどのような動きをしていましたか?気付いたことを列挙して下さい。
・生徒Aが,しっかり聞いてまとめ,分かりやすいように助けてくれた。英文の説明をしてくれた。
・生徒Bが,みんなの意見をメモして頑張っていた。
・生徒Cが,リーダーの役割をしっかりと果たしてくれたので,他の人もみんな頑張っていた。
・途中で投げ出して,あまり手伝わなかった人がいた。
・生徒Dが英単語をたくさん知っていて助かった。みんな積極的,全体的にすばらしい。
・生徒Eは自分の意見を押し通していた。生徒Fが英語を教えてくれたので助かった。
・みんな辞書を引いたり,協力しあって問題に取り組んだ。 |
今後チームで仕事をする時に,自分が課題としたいことにはどのようなことがありますか?
・役割を見付けて自分から取り組む。
・リーダーとしてみんなの意見をもっと上手にまとめる。
・何事もグループで協力することが大切。
・もっと相手の意見を聞くことや,もっと意見を言うこと。 |
その他,この活動で感じたことがあれば書いて下さい。
・いろいろなことに積極的に参加する。たくさん意見を出す。
・自分が,こんなに英語ができないとは思わなかった。もっと英語を勉強する。
・指示書や,情報カードをしっかりと訳せるようにする。
・たくさんある情報を整理したり,集中することが大切だと思った。
・単語を並べるだけでも,たくさん話せて,とても楽しかった
・日ごろは,話せない人と話せたし,いつもより楽しく英語を使うことができた。 |
エ 課題
振り返りの結果から,お互いに協力する体験をすることで,クラスの人間関係や雰囲気を良くするというねらいは,
かなり達成できたのではないかと考える。教科活動の面から考えると,英語を使って,積極的にコミュニケーション
を図ろうとする態度や能力を,活動を通してより効果的に高めるのがねらいであったが,全体としてよく取り組んで
いた。
振り返りの中で「あなたはどの程度,自分の言いたいことが言えましたか?」の問いに対して,20%が全く言えな
かったと回答しているのは,グループワークに消極的というよりも,英語力としての問題,つまり英語が思うように
話せなかったからだと考えられる。本校では,どちらかといえば英語が苦手な生徒が多いことや,高校1年生の7月
上旬頃で,語彙(い)数や表現力も不足していることもあり,知っている単語を並べて,グループの中で,なんとかし
て,英語で意見を述べようとしているだけでも,よく頑張っていると評価できる。また,英語力のある生徒でも,英
語をコミュニケーションの手段として,自分の言いたいことを伝える訓練が不足しており,まだそこまでのレベルに
到達していないというのが原因のようである。
生徒の振り返りにもあったように,今回の活動をしたことで,コミュニケーションの手段として英語を使うという
体験をして,自分の言いたいことがうまく相手に伝えられなかったことに対して発奮し,もっと英語を勉強する意欲
をもつようになった生徒もいた。このことは,積極的に英語学習に取り組むためのいい刺激になったと思われる。
しかし,英語が苦手な生徒にとっては,いつも以上に精神的な負担がかかったようである。また,英語力があって
も,グループによっては英語で情報を組み合わせて整理するという作業に飽きて投げ出した生徒も二,三人いたよう
である。
こうしたことから,普段の授業をもっとコミュニケーションを意識したものにするということが,いかに大切かと
いうことを再認識することができた。また,活動前に,授業と同様にヒントを与え,単語や語句の解説をしておくと
ともに,活動の進行がしやすいような段取りをして,英語やコミュニケーションを苦手とする生徒に支援や指導をす
る必要があると感じた。
(2) 活動2 「それって どんな自分?」(P.88〜91 参照)
ア ねらい
ワークシートに沿って職業を選択することで分かってくる自分の個性について考える。職業が自己表現のひとつの
方法であることを学ぶ。生徒自身がどのようなキャリア・アンカー(自分の選ぶ職業の中でどうしても譲れない大事
にしているもの)をもっているのかを探ることで,進路目標の設定や,将来を展望させる。
イ 活動の内容
@ ワークシートTに挙げた職業の中から自分にフィットする職業に○,フィットしない職業に×,どちらで
もない職業に△を付ける。
A 分類した職業を見ながら,自分で感じたことや気付いたことを記入する。
B 八つのグループの説明をした後,ワークシートUに各項目で印しを付けた職業のグラフを書き,色分けを
する。
C ワークシートTとワークシートUのグラフから感じたことを記入する。
D 全部の作業が終わったら,四〜六人のグループで振り返りをする。 |
ウ 参加者の様子
9月上旬のLTの時間を利用して実施した。ウォーミングアップとして,Life Line(人生曲線)の活動を実施した。
黒板に一本の直線を書き,これが誕生から死ぬまでの一生を示す Life Line(人生曲線)として,左端に0を書かせ,右
端には自分の死亡予想年齢を書かせた。仮に80年生きるとしたら,右端には「80」と書かせて現在の位置を線で区切ら
せた。それから,教員が自分の人生での出来事を例として挙げた後,これまでの人生の出来事やこれからの人生に起
こることを2分ほど考えさせた。そして,その2分間で考えたことを,Life Line の下に箇条書きで書かせた後で,
1分程度の振り返りをさせた。大きな夢を描いたり,現実的な未来を考えたりするうちに生徒たちの気持ちがリラッ
クスしてきて,クラス全体が次の活動に取り組むのによい雰囲気になった。
この活動では,時間が実質20分程度しかとれなかったので,グループでの十分な振り返りができなかった。しかし,
これから類型選択の決定をしていく少し前の時期ということもあり,予想以上に真剣に取り組んでいた。
ワークシートT,Uでは,次のような気付きや,振り返りがあった。
・建築などは好きだが,小さな子にかかわることや芸術的なことは苦手だと分かった。
・いろいろな物を作ったり,研究することに関する職業が多い。
・やりたいことはバラバラだけど,特にやりたいものは開発や研究などがやりたい。
・自分のやりたいものがまとまっていない。フィットするものが少ない。
・以前よりもはっきりと決断することができた。福祉系の仕事がやっぱりやりたい。
・人の上に立ったり,組織とかは自分に合っていないと思った。
・物を作ったり,創造的な仕事が向いていると思った。
・プロジェクトを実行する仕事がしたい。
・共通点は,「人とかかわる」ことに気が付いた。人とかかわることがやりたいのかなと思った。
・やりたいこと,やりたくないことがはっきりした。
・卒業後の進路は考えるけれど,その先の人生についてはあまり考えたことがなかった。 |
振り返りからも分かるように,生徒たちはこれまで気付かなかった自分のキャリア・アンカーを知ることができ
た様子である。類型選択に向けて,自分が希望する類型と進路希望とがきちんと結び付いて自信を深める生徒や,
自分のもつキャリア・アンカーから改めて進路や類型を考え直すきっかけができた生徒もいたようである。
エ 課題
これまで,多くの生徒は将来について考えることなく,漠然と毎日を送っている。そのためか,これからの人生で
社会と自分がどうかかわるかを考えたり,職業の種類や内容についての知識・理解がほとんどなかったりする。まし
てや,どんな職業が自分の適性に合っているかをはっきりさせたり,自分にとって本当にやりがいのある仕事は何か
とか,自分が関心をもち理想を描いている仕事が何かということを考えたりすることは全くないといってよいのが現
状である。
そうした中,生徒たちが自分のキャリア・アンカーをある程度知り,これからの類型選択の時期に向けて,単に卒
業後の進路先だけではなく,将来について考えるようになったことは,大きな意義がある。多くの生徒が,あまり自
分の将来を考えていないことを踏まえて,これからの人生で社会とどうかかわるかを考え,卒業後の進路情報の提供
だけではなく,将来的な職業の種類や内容についての理解を深めさせる進路指導を考え,実施していきたい。
(3) 活動3「LAC(生活分析的カウンセリング)法を活用した定期考査対策」(P.92〜99 参照)
ア ねらい
生徒自身にこれまでの自分の生活を振り返らせ,自分の行動目標を具体的に考えさせる。そして,それが実現可能
かどうか,また,その必要性について吟味させる。その作業を通じて,今の自分にとって何が最も重要なのか,何を
優先にすればよいかをはっきりさせて,自分の目標に向かって行動を起こさせることを目的とする。
本校では,2年生から類型に分かれるため,その類型選択の決定に大きく影響する2学期中間考査に向けて,LA
C(生活分析的カウンセリング)法を使い,学習計画を立てさせ,将来の進路希望の達成に向けての学力向上への援
助をする。
イ 活動の内容
(ア) LAC表の作成
@ 付箋(せん)紙を一人20枚程度,「LAC法による定期考査対策」,「LAC表」,「学習計画表」を配
布する。
A 付箋(せん)紙に,定期考査までに各教科でやらなければならないこと,やりたいと思っていることを具
体的に一個ずつ書き入れる。付箋(せん)紙の右側には,各項目のN(必要性),P(可能性),M(平均)
の数値を書き入れる。
B 各教科ごとにM(平均)の高い順にLAC表に付箋(せん)紙をはる。
(イ) 学習計画表の作成
@ 定期考査の時間割,行動予定,部活動予定,その他の予定の欄に必要な事を記入する。
A LAC表の付箋(せん)紙の中で全体を見て最も重要と思われる二つを選び,学習計画にはっておく。その
際,科目名が分からなくならないように記入する。
(ウ) 提出
@ 付箋(せん)紙をはった「学習計画表」を,担任の指定した日時に提出させる。
A 担任は,提出された「学習計画表」をすぐに返却して,生徒は自宅の目に付きやすい所にはっておくよう
に指示する。
B 達成できたものには,赤ペンで○印をつけるように伝える
(エ) 再提出
定期考査の成績順位が出たら,「定期考査の結果と反省」を配布し,振り返りをさせて「学習計画表」とと
もに提出させる。次回の定期考査の計画を立てる時,生徒に返却する。 |
ウ 参加者の様子
今回,初めての試みでもあり,予想したとおりはじめのうちはLAC表,学習計画表作成をするのにかなり面倒に
感じる生徒がほとんどであった。しかし,類型選択にもかかわる定期考査一週間前ということもあり,真剣に取り組
んでいた。作成後は,やるべきことがかなり明確になったようである。以下は生徒の振り返りである。
・とても面倒だったが,LAC法,学習計画表を熱心に作った。
・計画を立てた後は,自分のやるべきことがはっきりした。
・頭の中で考えているだけでなく,目で見て重要なことが何か分かりやすく実行しやすかった。
・やるべきことは,すぐやろうとした。
・達成したものと,まだできていないものがはっきりしたのがよかった。
・自分の能力や,時間に合わせてできるのはよい。
・以前よりは,学習への取り組みが意欲的になったと思う。
・今後も計画を立てて考査に向けて勉強したい。 |
エ 課題
LAC表や学習計画表の作成については,成績上位の生徒は,比較的短時間でLAC表,学習計画表の両方ともL
Tの時間内に作成し,提出することができた。しかし多くの生徒,特に成績下位の生徒にとってはかなり面倒な作業
のようであった。ここでのポイントは,何が重要で,何を優先するべきかが判断できるかどうかである。この点につ
いては,個人面談をしたり,教科担当に勉強のアドバイスをもらいに行かせたりするなどの適切な助言を行うことに
よって,より効果をあげることができると思われる。 |