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授業実践事例

L2スイッチ・ルータを用いた実践的・体験的なネットワーク構築実習

1 はじめに

 専門教科「情報」における情報通信ネットワークの分野では、学習内容が比較的高度であるため、教科書を使用した座学中心の学習だけでは生徒の理解が進まず、なかなか知識・技能が定着しない。また、生徒間による情報技術に対する興味・関心の個人差が大きい中、学習内容を理解させるにはこれまで以上に実践的・体験的な授業実践により主体的に学習に取り組ませることが必要である。このため、3年生の選択科目「ネットワークシステム」の単元「ネットワークの構築」において、実際にL2スイッチ及びルータを用いたネットワーク構築実習を実践し、その学習効果の検証を行った。

2 単元の目標

・ネットワークを構築する上で必要となる基礎的な用語の意味や機器の仕組みを理解する。
・ネットワーク構築実習を通して体系的に技能を身に付ける。
・L2スイッチ、ルータを用いたネットワークについて、その構築、設定、運用及び保守を行うことができる。
・ネットワーク構築の過程においてトラブルが発生した場合、障害の原因を追究し、主体的にトラブルシューティングに努めることができる。

3 指導内容

(1)L2スイッチの基本動作とMACアドレステーブルについての理解
(2)コンソール接続とターミナルソフトウェアの基本設定
(3)コマンドモードの理解とコンフィグレーションファイルの確認
(4)L2スイッチの基本設定と確認
(5)MACアドレステーブルとインタフェースの状態確認
(6)VLANの理解と管理用VLANの設定
(7)VLANの設定とポートマッピング
(8)VLANネットワークの構築と疎通確認
(9)IPアドレスの設定とルーティング
(10)スタティックルーティングとRouter-on-a-stick

▽使用教材
授業プリント

 ・第01回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第02回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第03回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第04回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第05回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第06回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第07回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第08回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第09回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・第10回 授業プリント(Microsoft Word形式)
 ・授業レポート(授業のまとめ)(Microsoft Word形式)
 ・授業振り返りチェックシート(Microsoft Word形式)

ソフトウェア等

 ・ターミナルソフトウェア-TeraTerm Portable版(TeraTerm Project)

ネットワーク機器等(生徒一人あたり)

 ・L2スイッチ 1台‐Catalyst2940 (Cisco Systems)
 ・ルータ 1台‐Cisco1812J (Cisco Systems)
 ・ロールオーバーケーブル(コンソールケーブル) 1本
 ・LANケーブル(ストレートケーブル 4本、クロスケーブル 2本)
 ・ノートパソコン 2台
ネットワーク機器等
図1 生徒が使用するネットワーク機器一式

4 指導の流れ

▽第1回 1、2時限目 L2スイッチの基本動作とMACアドレステーブルについての理解

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>事前アンケート
・ネットワークの知識に関するアンケートに回答する。
 
展開1
(40分)
<講義>L2スイッチの基本動作の理解
・L2スイッチのMACアドレス学習プロセスと基本的なネットワーク設定上必要な用語について確認する。

・これまで学んだネットワークについての知識を思い出させる。
展開2
(40分)
<講義>L2スイッチ、ルータの概要の理解
・L2スイッチ、ルータの概要について理解する。

・家庭にあるようなハブやルータとの違いを意識させる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

【L2スイッチを使った実習】
▽第2回 3、4時限目 コンソール接続とターミナルソフトウェアの基本設定

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<実習>ターミナルソフトウェアの理解と初期設定
・ターミナルソフトウェアについて理解する。

・ターミナルソフトウェア起動後、ローカルコンソール接続のための初期設定を行う。

・ターミナルソフトウェアの役割を認識させる。
展開2
(40分)
<実習>ローカルコンソール接続
・ロールオーバーケーブルを使用し、コンピュータとL2スイッチをローカルコンソール接続する。

・シリアルポートとコンソールポートのインタフェースの違いについて説明する。
<実習>L2スイッチの起動確認
・L2スイッチの起動後、コンピュータのコンソール画面上にメッセージが表示されるか確認する。

・メッセージについては簡単な解説にとどめ、正常に起動できたことを確認させる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

▽第3回 5、6時限目 コマンドモードの理解とコンフィグレーションファイルの確認

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<講義>コマンドモードの理解
・以下のコマンドモードの違いについて理解する。
 ○ユーザモード
 ○特権モード(ENABLEモード)
 ○各コンフィギュレーションモード

・現在どのモードで利用しているのか常に意識させる。
展開2
(40分)
<実習>コンフィグレーションファイルの確認
・showコマンドで以下のコンフィグレーションファイルの確認を行う。
 ○startup-config
 ○running-config

・コンフィグレーションファイルの内容は簡単な解説にとどめ、重要な箇所のみ解説する。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

▽第4回 7、8時限目 L2スイッチの基本設定と確認

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<実習>L2スイッチの基本設定①
・L2スイッチに以下の基本設定を行う。
 ○ホスト名
 ○特権モード用のパスワード(暗号化なし)
 ○特権モード用のパスワード(暗号化あり)

・パスワードの設定を行う際、それぞれ何に対してのパスワードなのか意識させる。また、暗号化しなかった場合どのような問題が発生するのかを考えさせる。
展開2
(40分)
<実習>L2スイッチの基本設定②
・L2スイッチに以下の基本設定を行う。
 ○コンソール用パスワード
 ○telnet用パスワード
 ○デフォルトゲートウェイ
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した操作内容について授業レポートにまとめる。

▽第5回 9、10時限目 MACアドレステーブルとインタフェースの状態確認

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<実習>MACアドレステーブルの管理①
・MACアドレステーブルとMACアドレスのエージングタイムについて理解し、以下の設定・操作を行う。
 ○MACアドレステーブルの表示
 ○エージングタイムの変更

・エージングタイムを長くした場合と、短くした場合に起こりうる問題について考えさせる。
展開2
(40分)
<実習>MACアドレステーブルの管理②
・ダイナミックアドレスとスタティックアドレスの違いについて理解し、以下の設定・操作を行う。
 ○ダイナミックアドレスエントリの追加・削除
 ○スタティックアドレスエントリの追加・削除

・ダイナミックアドレスとスタティックアドレスの利点と欠点を考えさせる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

▽第6回 11、12時限目 VLANの理解と基本設定

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<講義>VLANの概要
・以下の用語を中心にVLANの概要について理解する。
 ○VLANの利点
 ○ブロードキャストドメイン
 ○スタティックVLAN
 ○ダイナミックVLAN

・VLANの利点について、説明する前に各自に考えさせる。
展開2
(40分)
<実習>管理用VLANの設定
・管理用VLANの有効化と管理用IPアドレスの設定を行う。

・L2スイッチにIPアドレスを付与する意味について考えさせる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

▽第7回 13、14時限目 VLANの作成とポートマッピング

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<実習>VLANの基本設定
・VTPとその各モードについて理解し、以下をL2スイッチに設定する。
 ○VTPドメインの設定
 ○VTPモードの指定

・各モードの違いを意識しながら設定するようにさせる。
展開2
(40分)
<実習>VLANの基本設定
・トランクポートとポートマッピングについて理解し、以下をL2スイッチに設定する。
 ○トランクポートの設定
 ○VLANの作成
 ○ポートマッピング

・今何のための設定を行っているのか、目的を意識しながら作業させる。
<実習>VLANの設定内容の確認と保存
・showコマンドでVLANの設定内容を確認し、間違いがなければ保存を行う。

・自分が設定した箇所を意識させる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

▽第8回 15、16時限目 VLANネットワークの構築と疎通確認

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<実習>VLANネットワークの設定
・4人1班となり、それぞれのL2スイッチをトランクリンクで接続する。

・班の中での自分のL2スイッチの役割を意識させる。
展開2
(40分)
<実習>Pingでの疎通確認
・VLANにコンピュータを接続し、それぞれ別のコンピュータにPingで疎通確認を行う。
実習授業の様子
図2 実習授業の様子

・Pingに応答しない場合はその理由を考察させる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

【ルータを使った実習】
▽第9回 17、18時限目 IPアドレスの設定とルーティング

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<講義>ルーティングとルーティングテーブル
・ルータの役割について理解し、ルーティングテーブルの概要や仕組みについて理解する。

・ルータとL2スイッチとの違いを意識させ、混同させないように注意を払う。
展開2
(40分)
<実習>ルータの設定
・各自のコンピュータでipconfigによりネットワーク設定を確認した後、ルータに対して以下の設定を行う。
 ○インタフェースの有効化
 ○IPアドレスの設定
 ○ルーティングテーブルの表示

・コンピュータのIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイなどのネットワーク設定を踏まえた上で、ルータの設定を行うようにさせる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

▽第10回 19、20時限目 スタティックルーティングとRouter-on-a-stick

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
<導入>前時の振り返りと本時の流れの把握  
展開1
(40分)
<講義>ルートの学習方法
・ルートの学習方法として、スタティックルーティングとダイナミックルーティングについて理解する。

・スタティックルーティングとダイナミックルーティングとのメリット、デメリットについて考えさせる。
<実習>スタティックルーティングの設定
・スタティックルーティングの設定を行い、疎通確認を行った後、ルーティングテーブルを確認する。
展開2
(40分)
<実習>Router-on-a-stickの構築
・Router-on-a-stickネットワークを構築し必要な設定をルータに行う。その後疎通確認を行い、ルーティングテーブルを確認する。

・Pingに応答するようになった理由をルーティングテーブルから考察させる。
まとめ
(10分)
<まとめ>本時のまとめ
・本時で学習した内容について授業レポートにまとめ、知識を整理する。

5 評価規準

評価規準

  関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解
単元の
評価規準
・ネットワーク機器の役割に興味・関心を示し、積極的に活用しようとする実践的態度を身に付けようとしている。 ・ネットワークを支える情報技術とその活用について考えて、安定運用するための方法を適切に判断し、表現している。 ・ネットワークを構築及び保守するために必要な基礎的技術を身に付け、その技術を適切に活用している。 ・ネットワークに関する基礎的な知識を身に付け、ネットワークが社会の発展に寄与していることを理解している。
学習活動に
即した
評価規準
①ネットワーク機器(L2スイッチ、ルータ、ケーブル等)や動作・仕組みに興味・関心をもち、自ら進んで探求しようとしている。 ①適切なコマンドを用いて問題となる個所を発見するなど、情報を適切に判断し表現している。 ①ネットワークの構築をするための基礎的な技術を身に付けている。
②ネットワークを構築するために必要な情報の収集や処理、分析、表現などの技術を身に付けている。
①ネットワークを構築するために必要な用語やコマンドを正しく理解している。
②ネットワークを構築するために必要な設定の方法を理解している。
③ネットワークの適切な活用方法を理解している。

指導と評価の計画

時間 学習内容及び活動
(指導上の留意点)
観点別評価内容 評価規準との関連 評価の方法
関心

意欲

態度
思考

判断

表現
技能 知識

理解
発表内容 提出物の内容 授業態度
第1回
1、2
時限目
・L2スイッチの基本動作の理解 ・L2スイッチのMACアドレス学習プロセスについて理解している。          
・L2スイッチの概要の理解 ・L2スイッチの構造及び機能について理解している。          
第2回
3、4
時限目
・ターミナルソフトウェアの理解と初期設定 ・ターミナルソフトウェアについて理解している。          
・ローカルコンソール接続 ・ロールオーバーケーブルを使用し、コンピュータとL2スイッチをローカルコンソール接続できる。        
・L2スイッチの起動確認 ・L2スイッチの起動し、コンピュータのコンソール画面上にメッセージを表示させることができる。          
第3回
5、6
時限目
・コマンドモードの理解 ・それぞれのコマンドモードの違いについて理解し、設定できている。      
・コンフィグレーションファイルの確認 ・showコマンドからコンフィグレーションファイルの確認ができる。          
第4回
7、8
時限目
・L2スイッチの基本設定 ・L2スイッチに、ホスト名や各種パスワードなどの基本設定を行うことができる。          
第5回
9、10
時限目
・MACアドレステーブルの管理 ・ダイナミックアドレスとスタティックアドレスの違いについて理解している。        
・MACアドレステーブルの設定・操作を行うことができる。        
第6回
11、12
時限目
・VLANの概要 ・VLANの概要について理解している。        
・管理用VLANの設定 ・管理用VLANの有効化と管理用IPアドレスの設定を行うことができる。        
第7回
13、14
時限目
・VLANの基本設定 ・VLANネットワークを構築するための設定を行うことができる。        
・VLANの設定内容の確認と保存 ・showコマンドを使用してVLANの設定内容の確認・保存を行うことができる。          
第8回
15、16
時限目
・VLANネットワークの設定 ・4人1班となり、それぞれのL2スイッチをトランクリンクで接続することができる。      
・Pingでの疎通確認 ・VLANにコンピュータを接続し、相互に通信できるように設定することができる。          
第9回
17、18
時限目
・ルーティングとルーティングテーブル ・ルータの役割について理解し、ルーティングテーブルの概要や仕組みについて理解している。        
・ルータの設定 ・コンピュータのipconfigコマンドでネットワーク設定を確認し、適切にルータを設定することができる。          
第10回
19、20
時限目
・スタティックルーティングの設定 ・スタティックルーティングの設定と疎通確認を行い、ルーティングテーブルを確認することができる。      
・VLAN間ルーティングの設定 ・Router-on-a-stickネットワークを構築し必要な設定をルータに行い、疎通とルーティングテーブルを確認することができる。        

6 実践結果の考察

○授業レポート(授業のまとめ)
 今回の実習において、まとめの10分間で「授業レポート」を作成・提出させるようにした。2時間連続の授業で学んだ内容について自分なりに整理してまとめたり、その過程で理解できていなかった部分を見つけて再度学習したりすることにより、学習内容の理解を定着させることを目的とした。
 ネットワーク構成図は大きく論理構成図と物理構成図に分かれる。この実習では使用する機材が少ないため物理構成は把握しやすい。しかし、論理的な構成もしくは設定(IPアドレスやトランク設定等)については把握しづらいため、ネットワーク構築の上で論理構成図は必須となる。生徒は授業プリントだけでは補うことができない論理構成部分について、この授業レポート上にメモ書きしながら実習を進めていた。
 また、授業レポートを作成しながら自分の理解が不十分な点について質問する生徒もいたため、自己の理解度を計るためにも授業レポートを提出させる意味はあったと感じている。

○授業振り返りチェックシート
 授業ごとに自己評価シートとして「授業振り返りチェックシート」に記入させ、以下の5つの項目についてそれぞれ10段階で自己評価をさせた。
 ①今回の授業内容の理解度
 ②前回までの授業で学んだ内容を、今回の授業に生かすことができたか
 ③今回の実習を終えて、これまで座学で学んだ内容をより深めることができたか
 ④ネットワーク構築の知識に関しての自己評価
 ⑤ネットワーク構築の技能に関しての自己評価
これらの自己評価の数値を、平均してグラフ化したものが下図(図3)である。

授業振り返りチェックシートの集計結果の推移(平均数値)
図3 授業振り返りチェックシートの集計結果の推移(平均数値)

 グラフより、どの項目に関しても初回から第5回目までは授業を重ねるごとに数値が上昇する傾向が見られる。第6回目で数値が極端に落ち込んでいるのは、ここでVLANの学習項目が入ったことによるものと思われる。L2スイッチに複数の仮想ネットワークを作成するという概念が理解しづらかったようである。また、どの項目に関しても似たようなグラフ傾向になっており大きな差は表れていない。生徒にとって項目ごとの自己評価の違いが明白でなかったことが要因として考えられるため、評価項目の改善が今後必要であることを感じた。
 続いて、下図(図4)は図3における授業ごとの自己評価の平均値(折れ線グラフ)と、実習で入力したコマンドの回数(棒グラフ)との関係を表したグラフである。

入力したコマンドの回数と自己評価の平均値との関係
図4 入力したコマンドの回数と自己評価の平均値との関係

 入力したコマンドの回数(実機での演習回数)が多いほど、生徒の自己評価は高まり、結果として授業の理解を深めることができたと言えるだろう。

 また、欠席して前回の授業を受けていない生徒に対して、周りの生徒が丁寧に前回の授業で行った内容を教えるという場面が見られた。この授業は2時間続きであるため、1回でも休んでしまうと次回の授業に大きく影響が出る。特に今回のような実習授業ではなおさらなのだが、生徒同士で教え合うことで、休んだ生徒もしっかり授業に参加することができた。休んだ生徒に対してだけではなく、設定どおり動作しない、あるいは設定方法が分からないという生徒に対しても、生徒がお互いに教え合うという姿が見受けられた。実際に自分が機器に対して設定を行い、その設定どおりにネットワーク全体が動作することで自信をもち、他の生徒に教えることができたと考えられる。

7 おわりに

 全10回(20時間)という短い期間ではあったが、最終的にはルーティングやRouter-on-a-stickについて理解できるまで知識は高まり、L2スイッチを使って一人でVLANを作成し、マッピングから疎通確認を行うことができるまでの技能が身に付いた。教科書だけで学ぶよりも、ネットワークについての理解が深まったことは間違いないだろう。今回の研究を通して、実際に実機を用いてコマンドを入力するという実習を行うことが生徒の興味・関心を高め、結果として授業の理解を深めることが分かった。また、生徒がお互いに学び合うという姿が見られ、この授業が有意義なものであったと感じている。
 今回はこのように生徒それぞれに実機を用意して授業実践を行ったが、今後はシミュレーションソフトなどのツールを用いて、実機と同様の学習効果が認められるような授業実践も研究し計画・実施していきたい。

参考文献

 [1] 三上信男 Cisco L2スイッチ管理者リファレンス130の技(2005年)
 [2] 三上信男 Cisco ルータ管理者リファレンス130の技(2006年)
 [3] 三上信男 Cisco CatalystL2スイッチコマンドリファレンス(2007年)
 [4] David Hucaby シスコ技術者認定公式ガイド CCNP SWITCH(2010年)
 [5] Wendell Odom シスコ技術者認定公式ガイド CCNP ROUTE(2011年)