この教材の魅力
永井荷風が「鶉衣」について、「死ぬまでにどうにかして小説は西鶴美文は也有に似たものを一二編なりと書いて見たいと思つてゐたのである。鶉衣に収拾せられた也有の文は・・・・・・日本文の模範となるべきものとなすのである。其の故は何かといふに鶉衣の思想文章ほど複雑にして蘊蓄(うんちく)深く典故によるもの多きはない。其れにも係はらず読過其調(そのしらべ)の清明流暢(りゅうちょう)なる実にわが古今の文学中その類例を見ざるもの。・・・・・・」(「雨瀟々」)と述べているとおり、鶉衣の各文は表現が簡潔で、分かりやすい。また、韻文的なリズムがあり、立体感がある。教養の高い風流人である也有は、その豊富な知識に基づいて、和漢の故事を文章中にちりばめ、雅語・俗語・漢語を自由に操り味わいのある文章を書き上げている。
そして、もっとも俳文らしい特徴である自然や人事の中にユーモラスなものを見いだそうとする態度で書かれている。読み手は也有の奇抜な発想に驚かされ、楽しみながら、連句的な展開によって知らず知らずのうちにその世界に導かれていくことになるだろう。
鶉衣の鑑賞は、俳文という一古典分野の学習という意味にとどまらず、ユーモアをもちながら対象を見ること、またそれを表現することが日常を豊かにし、心の豊かさを生み出すことにつながることを読み手に教えてくれるのではないだろうか。
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作者 横井也有
愛知県とのかかわり
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文学散歩―也有を訪ねて―