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7 テストBの結果とその考察

平成24年度高等学校入学者数学学力テストB の問題・正答率・誤答率・主な誤答

(1)  食塩水に含まれる食塩の割合について理解を深めさせたい
毎年,連立方程式に関する文章題を出題し,立式する力と解く力について調べている。H20とH22は人数の増加,減少に関する問題を出題したが,本年度は,今回改訂された教科書の発展問題に,食塩水に関する問題が掲載されたことから,食塩水に関する問題を出題した。

  その結果,立式に関する問題の正答率に大きな差が見られた。H20とH22の立式の正答率は,72.3%,84.4%と高かったが,H24の食塩水の問題では,立式できた生徒は59.6%であった。また上位群と下位群について調べたところ,正答率や無答率に大きい差があることも分かった。
  誤答について確認してみると,食塩水の重さに関する立式(正答①)はよくできているが,食塩の重さに関する立式(正答②)ができていないことが分かった。主な誤答は, が全体の13.5%と高く,次いで 3x+8y=6 1.9%であった。また という誤答も0.6%あった。このことから,割合から食塩の量を求める部分に問題があると思われる。

今後の指導に向けて
変数がxyの2つあるから,2つの式を立てるということを意識させ,食塩水の量と食塩水に含まれる食塩の量に注目をさせ立式させたい。食塩水の量に関する立式は結果からも分かるように,容易と思われる。この問題では食塩の量についての立式がポイントとなる。まずは「濃度3%,8%,6%」という表記が,「食塩水の中に食塩がどの程度の割合で含まれているのかを示したもの」という認識を定着させるため,例1のように具体例を用いて,段階的に濃度(割合)を用いた食塩の量の表し方を理解させたい。食塩の量に関する立式については,定着を図るために,例2のように図を描いて,視覚的に確認させるのもよい。食塩水は無色透明で,食塩水の中に溶けている塩の存在が分かりにくいが,可視化した図を描き,食塩の存在を意識させ,混ぜ合わせる前後で量は変化をしていないことを理解させたい。

(2) 関数の式で表すことが苦手である
  小問はともに関数の式を求める問題である。正答率は3割を下回っており,生徒にとって苦手な内容であると分かる。(1)では y30x という誤答が最多で23.7%を占めた。これは,△APQの面積が,出発時(x0)で,秒後△ABCに一致し150となり,時間と面積の関係を一次関数と誤解したために得られた誤答と思われる。
今後の指導に向けて

 辺や面積が変化していく様子を,具体的にxを用いて考えるよう指導していく。


(3) 円周角の定理を図形の問題に応用させたい

(1)では,四角形の内角の和が360°なので,∠BAC=50°を求めることができる。主な誤答例で60°が8.7%であるが,これは∠ACE=∠ABE=90°より△ACE≡△ABEと間違え,∠CAE=30°と考えたため,∠BAC=60°という誤答になったと思われる。
  (2)では,四角形ABECの対角の和が180°より,4点は同一円周上にある。また,∠BAC=∠BDCなので,円周角の定理の逆を利用することで四角形ABCDは同一円周上にある。よって,5点ABCDEは同一円周上にあるから,∠EAC=∠EDCと分かる。誤答例で一番多かったのは,30°で23.5%であった。これは,誤答を書いた生徒の55.7%にもなる。更に調べてみると,(1)は正答であったのに,(2)30°と答えた生徒は全体の18%もいた。これは,△ABC≡△DCBなどから,△ABE≡△DCEと考えて,∠BAE=∠CDEと考えたためと思われる。円周角の定理の逆を利用することが定着していないことが分かる。 

 【今後の指導に向けて

本年度,円周角を利用する問題の正答率が下がったのは,円周角の定理の逆を利用して,図形の中に円を描くことができなかったことが原因と思われる。定理などを学習した直後の演習問題では,その定理を使って問題を解くことができるが,応用問題においては,過去の既習内容のどの定理を利用して解けばよいかを容易に考えることができない場合が多い。問題文の中にある情報や値から,解決の糸口となりそうな定理などを複数思いつく力が必要となる。特に今回のように,四角形の角の問題を解く際には,対角の和が180°になるかとか,円周角に当たる部分が等しくなるかなど,円に内接する四角形の定理を意識して問題を解けるようにしておくことが重要である。

<円を発想させることができる問題例>



           目    次
1  調査の趣旨及び処理   5  テストAの結果とその考察
2  調査結果の概要   6  テストBの結果とその考察
3  分析結果の概要   7  テストTの結果とその考察
4  調査問題の妥当性と信頼性     
 平成23年度高等学校数学標準学力検査の結果とその考察(PDF 625KB)