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4 分析結果の概要
 本年度3月に,新しい高等学校の学習指導要領が告示された。今回の改訂は,約60年ぶりになる教育基本法の改訂を踏まえるとともに,現在の子どもたちの課題への対応の視点から,

  @ 「生きる力」という理念の共有
  A 基礎的・基本的な知識・技能の習得
  B 思考力・判断力・表現力等の育成
  C 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
  D 学習意欲の向上や学習習慣の確立
  E 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

 がポイントになっている。
 その中でBは,多くの国際的な学力調査や平成19年度から実施されている全国学力学習状況調査等をうけて挙げられたもので,思考力・判断力・表現力等を確実にはぐくむためには,基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに,観察・実験やレポートの作成,論述といった知識・技能を活用する学習活動を重視しなければならないとしている。中央教育審議会答申では具体的な学習活動として次のようなことが挙げられている。
 ・見学結果の記述及び報告など,事実を正確に理解し伝達する活動
 ・情報や意見をグラフや図表などから読み取ったり,これらを用いて分かりやすく表現するなど,情報を分析・評価し,論述する活動
よって,数学の授業においても,上記のような活動を意識的に導入し,思考力・判断力・表現力等の育成を目指していく必要がある。

 本年度の調査問題と数学的活動

 今回の調査結果を見ても,基礎・基本的な部分で問題になるところもあるが,やはり,活用の部分でやや不十分なところがあると分析せざるを得ない。そこで,次のような問題において,数学的な活動を意識的に導入して,スパイラル教育をすると生徒の思考力・判断力・表現力等を育成することができると思われる。

 (1) 数学的な表現力を育成する指導

関数の問題において,定義域と値域の関係について出題したが,axbのときの値域をf(a)yf(b)としてしまう誤答が目立った。実際にグラフをかいて,増減を調べて解答するよう指導しているにもかかわらず定着していない生徒が多い。そこで,増加関数の問題や減少関数の問題を数題与え,グループで考えさせてまとめを発表させるとよい。お互いに教えあうことによりグラフを読み取る力も向上するし,発表するにあたり数学的に考察したことを整理し,まとめる力をつけることができる。

(2) 多様な解法を扱い思考力と判断力を育成する指導

粘土玉と竹ひごを使って立方体を作り,水平方向にn個つなぎ合わせたときの竹ひごの総数を答える問題を出題した。この種の問題は,多くの問題集でも取り上げられ,生徒も練習してきているので正答率も56.3%という結果であったが,さらに定着を図るために,最初に立てた式を発表し合って相手がどのように考えたかを話し合うようにするとよい。多様な解法を知ることにより,それらを比較しどちらが有効かという判断力と,他の解法がないか考えることにより思考力を養うことができる。

また,以上のような数学的活動を通して,直接的,あるいは,間接的に,数学的な思考力・判断力・表現力が今後,社会に出た時の問題解決に役立つと実感させることができれば,学習意欲の向上にも繋げることができる。


           目    次
1  調査の趣旨及び処理   5  テストAの結果とその考察
2  調査結果の概要   6  テストBの結果とその考察
3  分析結果の概要   7  テストTの結果とその考察
4  調査問題の妥当性と信頼性     
 平成20年度高等学校数学標準学力検査の結果とその考察(PDF 528KB)