小酒井不木の作品には、探偵小説というジャンルもあって、血みどろの場面描写や女性の犯罪に対するこだわりなどがしばしば見られる。この点については、不木自身が繰り返した喀血(かっけつ)や、母親という存在に対して抱いた複雑な思いと関連付けて論じられており、不木作品の重要なテーマであり魅力でもあるのだが、児童・生徒を対象とする教材とするには、ややその扱いが難しい。そこでここでは、不木が少年用に書いた作品群から、本作品を選んだ。 驢馬(ろば)、狐、羊といった西洋の寓話ではなじみ深いメンバーが登場し、親の意向に背いた子供が引き起こす悲劇というストーリーにも格段目新しいものがあるわけではないが、その劇中には血の描写や殺人の偽装といったトリックが登場し、探偵小説界の草分け的存在であった不木らしさが、はっきりと浮き出ているからである。 イソップ物語や仏教説話と比較させるのも興味深い試みとなろうし、探偵小説や不木自身に興味・関心を抱かせる導入教材としても、十分使える作品であろう。
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