本文
(小学館『新編日本古典文学全集 松尾芭蕉集(2)』による)
鳴海にとまりて、
星崎の闇を見よとや啼千鳥
飛鳥井雅章(あすかゐまさあき)公の此宿にとまらせ給ひて、「都も遠くなるみがたはるけき海を中にへだてゝ」と詠じ給ひけるを、自かゝせたまひてたまはりけるよしをかたるに、
京まではまだ半空や雪の雲
三川(みかわ)の国保美(ほび)といふ処に、杜国(とこく)がしのびて有けるをとぶらはむと、まづ越人(ゑつじん)に消息して、鳴海より跡ざまに二十五里尋かへりて、其夜吉田に泊る。
寒けれど二人寐(ぬ)る夜ぞ頼もしき
寒けれど・・・句碑(神明社 豊橋市湊町)
あま津繩手、田の中に細道ありて、海より吹上る風いと寒き所也。
冬の日や馬上に氷る影法師
冬の日や・・・句碑(宝林寺 豊橋市杉山町)
保美村より伊良古崎へ壱里斗も有べし。三河の国の地つゞきにて、伊勢とハ海へだてたる所なれども、いかなる故にか「万葉集」にハ伊勢の名所の内に選入られたり。此州崎にて碁石を拾ふ。世にいらご白といふとかや。骨山(こつやま)と云ハ鷹
を打処なり。南の海のはてにて、鷹のはじめて渡る所といへり。いらご鷹など哥にもよめりけりとおもへば、猶あはれなる折ふし、
鷹一つ見付てうれしいらご崎
鷹一つ・・・句碑(伊良湖岬 田原市伊良湖町、句は横面にある)
熱田御修復
磨(とぎ)なをす鏡も清し雪の花
蓬左(ほうさ)の人々にむかひとられて、しばらく休息する程、
箱根こす人も有るらし今朝の雪
有人の会
ためつけて雪見にまかるかこみ哉
いざ行む雪見にころぶ所まで
ある人興行
香を探る梅に蔵見る軒端哉
此間、美濃大垣・岐阜のすきものとぶらひ来りて、哥仙あるハ一折など度々に及。
師走十日余、名ごやを出て旧里に入んとす。
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作者 松尾芭蕉
愛知県との関わり
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