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7 テストBの結果とその考察

平成24年度高等学校入学者数学学力テストB の問題・正答率・誤答率・主な誤答

(1) 小数を含む計算を確実に解かせたい
  [1](1)で分数や小数を含む計算について出題した。H20とH23は, 等の違いを理解しているかを確認する問題で,H24は2乗される数を分数にし,H25は小数にして,その結果にどれだけ違いが出るか調査した。分数計算を含めたH24は,H20やH23と比較して,正答率は約7ポイント下がった。小数計算を含めたH25は,H20やH23と比較して,正答率は27ポイント下がり,下位群の正答率は50ポイント近く下がった。
  H25の誤答 は,を1.6と計算したもの,誤答13は,を9としてしまったもので,このように計算してしまう生徒は毎年少なからずおり,小数の計算を苦手とする生徒がいることが分かる。
今後の指導に向けて
   小数や分数の四則計算はスパイラル学習として小学校6年で定着を図っているが,生徒にはなかなか定着できていない。小数と分数が含まれる式を計算する際に,小数を分数に直してから計算することを徹底したい。また,2乗される数の符号を意識させて指導することが大切である。数学の苦手な生徒に対しては,入学当初より中学校までに習う計算を,小テストを実施するなど反復的な指導をし,基礎基本の定着を図りたい。
(2) 求めるものを意識して解かせたい
  本年度入学した生徒は,中学校で新課程の内容を履修してきており,学習領域は,「数と式」「図形」「数量関係」の3領域から,「資料の活用」という領域を新設して「数と式」「図形」「関数」「資料の活用」の4領域になった。[1](8)の標本調査に関する問題は,新設された「資料の活用」から出題したものである。標本調査の結果から母集団を推測する問題で,中学校教科書の例題程度の問題であったが,H25の正答率は53.1%,H24のそれは49.7%と半数程度にとどまった。
  誤答例を見ると,H24の300個(17.9%),H25の1000個(19.8%)のように,白玉と赤玉を合わせた総数を求めている生徒が多い。比の計算の部分は約7割の生徒ができているのに,約2割の生徒が,最後に赤玉の個数を引き忘れている。
今後の指導に向けて

  今回は,抽出された標本と母集団の構成(白玉と赤玉の比率)を同じと捉え,比で答えを求める問題である。比(割合)の問題を苦手とする生徒に対しては,図や表をかき,問題内容をイメージ化すると計算の方針が立てやすくなる。
  今回の問題では,下記のように全体,白玉,赤玉の個数を表のようにかき,何を求めるのかをはっきりとさせると,式が立てやすい。


(3) 動点の位置によって求める関数が異なる問題について理解を深めさせたい
   例年,動点や定点等を結んで図形をつくり,その面積を求める問題を出題している。H22,H23は(1)で具体的な場合の面積を求めさせ,(2)でそれを踏まえて,あるxの範囲でのxとyの関係式を求めさせた。しかし,H25では(1)で正確に立式をできなくても,xの範囲によってグラフが2次関数になるか1次関数になるかが分かれば,xとyの関係を表すグラフを選択できるという問題を出題した。上位群の正答率は80%を超えたが,全体として50%弱に留まった。
  (2)は例年と同じ出題形式であるが,上位群の正答率も全体の正答率もあまり変化はみられなかった。主な誤答例の y=-3x+9と答えたのは,x=3のとき面積9cm2,x=6のとき三角形が存在しないので面積0cm2となるので傾きが-3,さらに右のグラフのように,x=3の位置にy軸をもってきてy切片9として解いたと考察できる。
 【今後の指導に向けて
  H22,H23において,具体的なxの値を与えたときyの値を求めることは60%以上できているので,動点が頂点を通過するとき,関数の式が変化する可能性があることに気付かせたい。また,場合分けするxの値の範囲が問題文の中に最初から指定されていない場合でも,動点が頂点を通過するときに注意すれば,自分で場合分けするヒントになる。この種の問題では,次の手順で考えると分かりやすい。
 ① 通過する頂点に動点があるときのxの値を求める。
 ② 求めたxの値の前と後の図形における面積を考える。
   ③ x秒後の辺の長さをそれぞれ求める。   
   0≦x≦3のとき   AP=2x ,BQ=x 
                    よって求める面積は y=x2   
   3≦x≦6のとき   (A-B-P)=2x ,BQ=x  
           BP=(A-B-P)-AB,PQ=BQ-BP
          BP=2x-6, PQ=x-(2x-6)=-x+6
           よって求める面積は y=-3x+18
※ AからBを通ってPまでの距離AB+BPを以下のように表記した。
    (A-B-P)
(4) 空間図形をいろいろな見方ができるようにしたい
   直方体から三角錐を切り取り,その高さを求める問題を8年ぶりに出題した。(1)の三角錐の体積は正答率が67.0%から51.6%に大きく下がった。(2),(3)は分数計算ということもあり正答率はさらに下がった。空間図形の問題を苦手とする生徒が増えているので今まで以上に丁寧な指導が必要である。
 【今後の指導に向けて
   空間図形の問題を考える場合,必要な図を取り出して考えるのも良い方法である。今回の問題の(2)は,切り口の△PQFを描き,各辺の長さを求めると,二等辺三角形の面積を求めればよいことが分かる。
   また,(1),(3)の四面体の問題でも同様に,四面体を取り出し,条件を書き込んで,状況を把握しやすくして問題に取り組むとよい。また,図形を回転させたり,底面に薄く色を付けたりして,状況を把握しやすくすると,解く方針が立てやすくなる。
   また,1つの図形で別な見方をする習慣を身につけさせるために,いろいろな面を底面と考えて体積Vを計算する練習を取り入れるのも効果的である。具体的には,
   をそれぞれ計算させ,その後△PFQを底面として考えることで,高さBHを求める計算へと誘導したい。

           目    次
1  調査の趣旨及び処理   5  テストAの結果とその考察
2  調査結果の概要   6  テストBの結果とその考察
3  分析結果の概要   7  テストTの結果とその考察
4  調査問題の妥当性と信頼性     
 平成24年度高等学校数学標準学力検査の結果とその考察(PDF 1,055KB)